第54話 ダンジョン発見2

「じゃあ、僕とランベルト、アレッサンドロ、グストフ、バジーリオ。それからマリアで偵察しようか」


「なんで私が」


「回復魔法使えるからだよ。このパーティの要じゃないか。頼りにしてるよ」


「当たり前やん。まかせとき」


 マリアは褒め言葉に弱い。


「じゃあ、グストフとバジーリオ前衛。ランベルトとアレッサンドロが中衛。僕とマリアが後衛でいこうか」


「「「オーケー」」」



 グストフとバジーリオは盾+剣でタンクの練習。ランベルトとアレッサンドロはそれぞれ剣と弓。僕は攻撃魔法、マリアは回復魔法を担当とする。


 僕とランベルトだけでもいけるだろうけど、それでは訓練にならない。この訓練は他の人達にも習熟してもらう必要がある。つまり、このパーティをモデルケースにしたいのだ。


 ポイントはいくつかあるけど、タンクの場合はいかにヘイトを稼げるか。攻撃はいかにヘイトを向けさせずに攻撃できるか。この連携だけでもかなりの経験が必要だ。


 ゴブリンクラスなら連携が崩れても問題は無いかもしれないけど、個々の力を上回る魔物とかと対決するときには、パーティの総合力が試される。



 では、ダンジョン入場だ。まずは、ダンジョンの周囲を壁で囲う。スタンピードなど、魔物がダンジョンから出てくるのを防ぐためだ。合わせて、入り口を広げる。


 僕は探査魔法を放ちダンジョンを調査してみる。かなり広いダンジョンだ。

 横2km、奥行き3kmといったところか。


 ただ、僕の探査魔法ではおぼろげな広さはわかるのだが、詳細な情報となるといきなり範囲が狭まる。だいたい半径50mぐらいだろうか。洞窟で見通しが悪いせいだ。


 試しに、探査魔法を伝えながらと、伝えることなしの二通りでダンジョンを捜索してみた。


「坊ちゃまの探査魔法なしだと、一気に緊張感が増しますな」


「魔物とかもそうですが、罠にも気をつけなきゃね」


 探査魔法・スキルが如何に有効か、理解してもらえたようだ。


 もっとも、このパーティはみんな優秀だ。ランベルトやマリアの探査魔法は僕より強力だ。他の二人もそれなりの探査スキルをもっているので次々と罠を見つけていく。


「罠の多いダンジョンですな。大将、こんなもんですかね」


「いや、多いと思うよ。ちょっとやっかいなダンジョンだね」


 ランベルトはいつの間にか皆から“大将”と呼ばれるようになった。貫禄あるからね。僕は相変わらず“坊ちゃま”なのはそろそろどうにかしてほしい。



「静かに。前方から足音がする。50mぐらい先」


 グストフが自慢の耳を披露する。各自、岩陰に隠れて敵の現れるのを待つ。それからは手信号でコミュニケーションをとる。


「(ゴブリン3体)」


 まずは、ランベルトとアレッサンドロの弓矢で先制攻撃だ。見事額を貫く。

 残りの1体が怒り狂ってこちらに突っ込んできた。

 魔物は基本的に引かない。

 怒りにまかせて攻撃してくる。


 ゴブリンはヘイトを稼ぐ間もなく、グストフに一刀両断される。倒されたゴブリンは白い光とともに消えてなくなった。


「うーん、若いやつを連れてきたほうがよかったですかね」


 確かにそうだ。このパーティメンバーでは強すぎる。彼らは少なくとも冒険者Bクラスの実力がある。パーティ全体ではSクラスの実力といってもいい。ゴブリン3体程度だと、ソロで殲滅できる。



 ダンジョンに入ってから2時間後、地下2階の階段にたどり着く。


「これ、改めて地図を作る必要があるね。今回は探査魔法があるから階段まですんなり来たけど、けっこう複雑そうな構造してるね」


「そうですな。探査魔法なしですと、ここまで来るのに10時間以上かかるかもしれませんね。」


「じゃあ、地下2階におりようか」


 地下2階の印象も地下1階と同じだ。

 普通の岩の洞窟である。


 ただ、ゴブリンの数が明らかに多くなった。ホブゴブリンと思われる大きな個体も出現するようになった。


「これはそばにゴブリン村かなにかがありそうですな」


 ランベルトの予想通り、僕の探査魔法にも敵の密集エリアが引っかかった。慎重に歩を進め、岩陰に隠れながらゴブリンの集団を観察する。


「やはり、村ですな。どうしましょうか」


「ここは僕の魔法で一気に殲滅するよ」


 僕は得意の風魔法を繰り出した。

 トルネードである。


 殲滅するには火魔法が最も手っ取り早いのだが、洞窟では大規模な火魔法は使えない。酸欠を起こしてしまうからだ。


「ゴゴゴー!!!」


 僕が魔法を発動すると、空気が激しく回転し始めあっという間に大きな竜巻となってゴブリンの集団を巻き込んだ。


 哀れゴブリンは原型をとどめないほどの損傷を受けて壊滅した。眩しい光とともに、ゴブリンたちは次々と消滅していく。


「やっぱり、坊ちゃまはおっかねえ」

「まったくだ」

「敵に同情するぜ」


 言いたい放題だ。



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