第52話 ザップ冒険者ギルド
ザップ村自警団はランベルトが相談役。
アレッサンドロ30歳が隊長。
そして、他に9人の専属がいる。
朝と夕方に2時間ずつの稽古をする。
その間は見回りするぐらいで彼らはけっこう暇だ。
だから、冒険者ギルドを兼任してもらった。
うちの領地は珍しい薬草が採れるので、案外冒険者に人気がある。毎日、数名の冒険者が村に滞在しているのだ。彼らの管理をするために、名前と冒険者のクラスぐらいは把握しておく。
何かあっても彼らの自己責任ではあるけど、目覚めもわるいし、ある程度の情報は与えておきたい。
冒険者がこの村に来るには2つのルートがある。
川から来るか、森を通ってくるかだ。旅人と同じであるけど。
川から来たのなら船着き場で、森を通るのなら関所で、腕輪をしてもらう。これがないと、村の結界を突破できない。それと、位置を把握するためだ。行方不明なんかのときに役立つのと、スパイを警戒しているのだ。
また、森の中には妖精ピクシーや蜘蛛軍団が跋扈している。この腕輪がないと、ひどい目にあう。最悪、命を落とすことになる。
「こんにちは。村に行きたいんですが」
ある冒険者が領地の関所にやってきた。
「ああ、ここに名前を書いて。それと、この腕輪していって」
「入場料は?」
「無料だよ。この腕輪をしてもらうのは、この森がおっかないところだからさ」
「腕輪がないとどうなるの?」
「村に入れないし、この森には妖精とか大蜘蛛とかいて、迷わせたり食べられたりする。ほら、こっちを見てご覧よ」
警備員が指し示す方には、頭以外を糸でぐるぐる巻きにされている男がいた。
「あれは森にこっそり入り込もうとした奴さ。運良く我々に見つけられたが、そうじゃなければ食べられてたよな」
「なんでこっそり入ろうとするの」
「この領地には特産品がたくさんあってね。その秘密を知りたい人がたくさんいるんだよ」
「ああ、バイシュで聞いた。ザップには美味しい食事やスィーツなんかがあるってね」
「糸にぐるぐる巻されている男はどうなるの」
「この糸がやっかいでね。専門の道具を使わないとほどけない。その後は、いろいろ調べられてそれなりの罰を与えられることになるな」
「村へはどういけばいい?」
「この道は村への一本道だ。村へ行って、冒険者ギルドによるといいよ。いろいろ教えてくれる。それまでは森の中に入らないほうがいいよ。村人でも森の奥深くへは行かないようにしてるし」
「ありがとう。じゃあ行くよ」
彼は、村まで3時間ほど歩く。
「おお、なんてキレイな村なんだ。ていうか、これ村か?周囲をでっかい壁で覆っているし、中は整理整頓された区割りにやけにキレイな建物。首都なんざ目じゃないな」
「これが噂のザップの飯か。パンからしてなんて質が高いんだ。白くてフワフワで滑らか。味も濃い」
「バターがこれまた新鮮でくどさのない味だな。牛乳も搾りたてのような素直な味だ。街ではなかなかこのレベルの牛乳はないな」
「素晴らしく美味なスィーツだ。これはパン以上に衝撃的だな。バイシュで噂を聞いたときはどうせ田舎レベルだろうと思っていたが、これも首都でも味わえないぞ」
「しばらく、この村に滞在してみるか」
「確かに、珍しい薬草が見つかるな。ギルドがピンポイントで繁殖場所を教えてくれるから、便利だ。全部取らないように、というギルドの注意は常識だが、そんな注意が意味のないぐらい広範囲に繁殖しているぞ」
「ギルドでも言っていたが、この村は移住者を募集中らしいな。住居は無料。あのキレイな建物をもらえるのか。豪気だな。職種は、農業、自警団、その他技術職か。ちょっと考えてみるか」
このようにして、冒険者の多くがこの村に移住してきた。バイシュ出身者、飢餓の発生した村、生活の立ち行かなくなった人たち、いろんな人がバイシュにやってきた。
村の人口は当初300人程度であったが、半年後には千人を越えた。1年後には3千人にまで膨れ上がるのであった。
―――――――――――――――――――――――
ブックマーク、ポイント大変ありがとうございます。
励みになりますm(_ _)m
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます