chapter9: Isn't it obvious?
私はひたすらにヒストリッカーを撃ち抜きながら監視室へと戻っていた。次々とあの生物は私に向かって襲いかかるもすでにある程度予測と分析によって行動パターンは完全に把握している。
天井から?もうその手は効かない。
飛び乗る?脇から撃ち抜くだけ。
次第に数を減らしていくヒストリッカー達は監視室前に来た時には撤退していた。
そうして監視室に戻ってきた私はキーボードを叩き熱源のある場所の監視カメラの映像を確認する。内一つはやはり巣だった。通路にいた何倍もの数で埋め尽くされている。
もう一つの熱源を確認すると、そこには逃げ延びていた人が数人いた。私と同じような子供、女の子もいる。食糧は映像を見る限りだと見当たらない。やはり入り口付近に落ちてあったのが全てだったのだろう。
そして最後のもう一つ。これは、何かのエネルギーだ。分子構造などを調べればきっとわかるはずだ。そう思い調べるとパスワードを求められる。どうやら権限者しか開けられないような機密事項のようだ。
これを開くにはもう少し時間が必要だと知った私は監視室に置かれている書類なども確認していくが特にこれといった手がかりは見つからない。仕方なく私は自分に搭載されている機能を使用する。
「unlock blinding」
主にこういった機密事項や重要なデータを強制的に開けるために使用する。そうしてパスワードの強制解除をして中身を見る。すると驚くべきものを発見した。
核融合炉だ。
この施設は電力やエネルギーを核で賄っていたのだ。人類が生み出した負の遺産。だが正しく使えば正に太陽を生み出したと言っても過言じゃない。そうと分かれば迂闊に銃はもうぶっ放せない。
そう振り返ったときだった。なんと1匹のヒストリッカーが部屋に紛れ込んでいた。私は足をくじき、銃を落としてしまった。そして足で蹴飛ばされてしまいもう銃を取れない。
軽度の損傷しかないものの、状況は最悪。
戦う術を無くしてしまった。私はおそらくここで壊されてしまうのだろう。そういえば人間は窮地に陥ったときには叫ぶという。私もそれにならい。
「うわーー!」
棒読みになったが叫んで誰かに助けを求めたが確か通路の先でみなさんは待っている。
だから誰も助けてはこないと理解した。もう最悪あれを使うしかないかと考えたが今ここで爆発すればそのエネルギーに誘発されて最悪施設ごと核に飲まれてしまう。
仕方ない、もう抵抗はしない。そう考えた時、ヒストリッカーは縦に真っ二つに切られた。その向こうにはカスミ様が剣を振り下ろしていた。
「ホープ!大丈夫か!?」
「カスミ様、なぜこちらに?」
「決まってんじゃん!あんた1人にするわけにはいかないって思ったからよ!」
カスミ様は私を心配して来てくれたようだ。
まずは感謝を伝えるため言葉にしていく。
「ありがとうございます。カスミ様のおかげで助かりました。」
「ほんとによかったよー...。」
そう言うと力が抜けたようにカスミ様は座り込んだ。その顔はとても安堵に満ちていた。
「ホープ、どうして1人で行ってしまったの?」
「みなさまが1人で行けとおっしゃっておりましたので...」
「はぁ、ホープは頭が硬すぎだよ。」
「私の頭は機械でできてますので硬いですよ。」
「そうじゃないよ、ホープにだって考えだったり思いだったりあるでしょ?なのに命令されたからってその通りにする必要はないんだよ。大事なのは相手との対話なんだよ。」
カスミ様は熱を込めながら語っていく。
私には知らない感情や思いというものが豊富な方だと改めて知る。
「ホープだって危険な行為だって思ったでしょ?」
いろいろと聞かれて頭の中のデータや知識が飛びそうになる。まるで私の頭の中に何か異常が発生したかのように。
「私は...」
そう言った瞬間に頭の中に何かが芽生えたような感覚に陥った。カスミ様にはまるで頭痛が襲ってきたように見えてるようだ。この暖かさは一体...。何かが私の中に入り込んだ錯覚をした私は頭を抑えている。
「ホープ、ホープ!大丈夫かい?」
「はい、大丈夫です...」
いつのまにかカスミ様は私を支えてくれていた。手の温度が暖かい...。私はこの温もりに毒され始めたのだと知った。
ーーーーーー
私はカスミ様に先ほどの話を伝えた。B3エリアにて逃げ遅れた人たちがいること。この建物では銃を迂闊に撃てないことを。
「そうなのか、この施設どうも胡散臭いと思っていたけどまさか核があるなんて...。こうしちゃいられない、急いでまずはB3エリアの開拓者たちを救出しよう。そしてホープ、これをやる。使い方は一回見たから覚えたか!」
「はい、ある程度はですが。」
渡されたのは小さな小刀。いつ作られたかわからないくらいの代物だとか。切れ味は抜群でヒストリッカーの体を一振りで切り落とせれる。
「ありがとうございます。これなら安心して戦えます。」
「だね。お、さっそく何匹か来たな。
使ってみてくれ。」
私は短刀を構え、喉元をかっ切った。大量の血を吹き出して倒れていく。
「そのいきだ!ならこれはできるかな?」
カスミ様は息を整えて深呼吸をした。そして一瞬のうちに高速で移動していくと、たちまちヒストリッカーはバラバラに切られていった。人間が到達する境地はおそらく、神の領域。まさに神業。
「名付けて『黄泉送り』ネーミングセンスはあれだけど、この技は私が傭兵として生きている覚悟そのものさ。」
まさに敵を一瞬で切っていく技。敵は自分が死んでいることに気が付かずにしばらく死を偽装し続ける。やがて自分がすでに死んでいることに気づいた時にはもう黄泉に送られていると言っていた。カスミ様の故郷に伝わる伝承からもじったそう。
「じゃあやってみな!」
「わかりました。
一度試してみたが高速で動くのが難しい。機械の私が演算してできないとなると、カスミ様はこの技の習得にどのくらいかかったのだろうと考えた。
「あははは!さすがにキツかったか。まぁホープもそのうちできるようになるよ。」
そう言いながら歩くとようやくロックされたところまで戻ってきていた。私はロックを解除して中へ入っていく。
「ホープ!戻ってきたんだね!」
アラタ様が迎えに来てくれた。だがカスミ様は腕で私を進ませないようにしている。
「カスミ様?」
「ホープだめだ。あいつは君を見捨てようとしたんだよ。」
私を、アラタ様が...?
「ちょっと待ってくださいカスミさん僕は...」
私はカスミ様に腕を引っ張られてツトム様とマコト様の元へと連れてこられた。
「2人とも、帰ってきたよ。さっきは怒鳴ってしまって申し訳なかった。冷静さを欠いていたよ。」
2人にお辞儀をして謝罪をしたカスミ様。ツトム様もパニック状態から回復していた。
「いや、あんたの言う通りだったよ。おれも落ち着けてなくてすみません、ホープもさっきはほんとにごめん!」
「いえ、大丈夫ですよ。」
私たちは監視室で確認したことを伝えた。熱源の正体とこの施設に核が利用されていることも。
「そうだったのか。ご苦労だったホープ。核がいまだに使われているとは思わなかったがそれがわかれば対処法は見つかる。少しはできるようだな。」
「何が少しはできるだよ、ホープは本当にすっごいやつなんだぞ。もう少し言い方ってもんがあるだろ?」
「あいにく私はあまり褒めないもんでね。そんなことよりこれからどうする?B3エリアに行き救助をしてさっさとこの施設を出るのが先決になるが。」
「けどよ、確かB3エリアの近くにまた巣が
あるんだろ?ただでさえもうあまり銃は使えない状況でどうやって向かうんだよ?」
「ホープはどう考えてるの?」
カスミ様が私に聞いてきた。私も提案できるとしたら2つしかない。
「B3エリアに行くには選択肢は2つです。
1つはここからエレベーターで直接降りたすぐのところにある下水道を通って手前までいくか。
もう1つは一度外に出てもう一つの棟から侵入していくかですね。お互いにリスクはありますがこの2つなら、銃をそこまで使用しなくても戦えますし。」
「下水道ならきっと襲ってくる数もそんなには多くないはず。それに下水道から直接外に出れるからね、私は1つ目に賛成かな。」
「おれも3人が守ってくれるならこのまま下水道からがいいかもな!」
「なら満場一致だな。アラタくんはどうする?」
「...」
「黙ってちゃわからないんだが?」
「すみません...。僕はみなさんに着いていきます。」
「よし、なら下水道から救助だ。各々準備ができたら下へ降りるぞ。」
私たちは荷物の点検や武器の手入れをしてから下へ降りて救助へ向かうことになる。
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