第53話 もう少し先の楽しみ
ログが部屋に戻って数分後、テーブルにあったお菓子をほとんど食べ終え、ご機嫌になったフランが残り少なくなった紅茶をティーカップに注ぐ。マオの分もカップに注ぎ差し出した時、マオがボーッと窓から外を見ていた
「マオさん、どうしましたか?」
「明日、順調に勝てれば、決勝でミオと戦うのかなって思ってさ。今からちょっと緊張してきたなって」
エヘヘと笑いながらそうフランに言うと、ふぅ。と一息吹いて紅茶を一口飲む。フランもふぅ。と一息吹いて紅茶を冷ましながら一口飲んだ
「私達が決勝までいけばきっと盛り上がりますし、マオさんの言うと学園ランク一位も近づきますよ」
「うん、そうだね。でもミオの学園の人達も強かったから」
「大丈夫です。私がついていますから」
マオに返事をしながらニコリと微笑むフラン。それを見てマオもうんと一つ頷き微笑む
「なので、もっと魔力をつけないといけませんね」
フランがそう言うと、テーブルにまた大量のお菓子が現れ、一番手前にあったお菓子を取り美味しそうに頬張った
「帰ってこないな」
その頃一人自室で本を読んでいたログは開けていた窓を見て、困ったように呟いていた。本を机に置き、窓の方に近づいてきて空を見上げ、はぁ。とため息をついた
「あの人の所で休んでいるのか。困ったな」
いつもより少し強い風がログの髪を揺らす。ふと、ログを横切って部屋に入った風を追いかけるように部屋の中を見渡す
「フラン」
ログが小声で呟くと、お菓子を食べていた途中だったフランが口を少しモグモグとさせて現れた
「私やご主人様とは違う、知らない魔術ですね」
「今日の大会で似たような気配は?」
「いえ、無かったと思います」
二人とも険しい表情で窓から外を見る。フランが窓から外に出て家のぐるりと周辺を見渡し変化がないか確認して戻ってきた
「今のところ特に変化はありませんね。今のうちにマオさんをお家に帰しましょうか?」
「そんな時間はないな。一緒に居ておくように」
「分かりました」
ログに返事をして、リビングに一人でいるマオの元に行くためすぐ姿を消したフラン。ログも開けた窓を閉め、はぁ。と一つため息をつき腰かけていた椅子に座り直し読んでいた本を再び開いた
「この家もまたすぐに移動か。面倒だな」
そう一人呟くと、開いた本を再び読みはじめた
「残念、あの鳥に逃げられちゃった」
フランが再びマオがいるリビングに戻った頃、ログの家から残り数歩の場所でマリヤが少し困りつつも楽しそうに微笑み呟いていた。辺りを適当に見渡し、ふわりと空に浮かんで白い鳥と来たであろう方角に少し進んで振り返り、またフフッと笑った
「まあいいや。明日も大会もあるし、楽しそうな時間はまた後でだね」
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