展示臺

小さな箒を持つて、硝子の外れた展示臺に上る。

──なるほど、見世物は此のやうに。

仄かなる電燈のもと、絡繰のやうに臺を掃くのだ。

慎ましく、くるふわりと、飾られてゐるが如く、しおらしく掃くのだ。


小さな箒を持つて、高みの見物を氣取つた風で見下ろす。

──なるほど、客人はのやうに。

ぼうと霞む暗がりの中、生氣の無い史料たちが見てゐる。

奇妙な形で、嘲るやうに、人よりも人らしく此方を見てゐる。


小さな箒を置いて、ぽつかりとした展示臺から降りる。

──其れでは、ご機嫌麗しう。

仄かなる電燈を背に、絡繰のやうに史料を持つのだ。

しめやかに、敬々しく、神のアトリビウトと思ひて淡々と持つのだ。

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