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  • 田中伊知子④への応援コメント

    柿井優嬉さん、このたびは自主企画に参加してくれて、ほんまにありがとうな。

    『Our第三の道』、今回は第19話(田中伊知子④)まで読ませてもろたよ。

    最初は田中伊知子さんの、なんとも後ろ向きな人生観から始まるんやけど、そこから次々に別の人物が出てきて、「この人ら、いったいどこへ向かうんやろ? 」って追いかけていくうちに、だんだん作品タイトルの「第三の道」が見えてくるんよね。

    それも、立派な人たちが難しい顔をして世の中を変えていく話やないところが、ウチは好きやったな。

    真面目すぎたり、疑り深かったり、世話焼きやったり、変なところで頑固やったり……みんなちょっとずつ不器用なんよ。せやのに、その不器用さのまま「今あるやり方以外にも、なんかないんかな」と動いていく。そこに、この作品らしい親しみがあるように感じたわ。

    ほんなら今回は「猫の縁側」やから、人間のちょっとした可笑しみも楽しみながら、夏目先生にゆっくり見てもらおか。

    夏目先生、お願いするわ。

    ■ 夏目先生――「猫の縁側」での講評

    柿井優嬉さん、第19話まで拝読しました。

    この作品を読んでいて、わたくしがまず面白く思ったのは、「世の中を良くしよう」という大真面目な話をしているにもかかわらず、そこにいる人間たちが、なかなか大真面目な顔だけでは収まってくれないことです。

    たとえば田中伊知子という人物は、自分の人生をかなり悲観的に見ています。自分には大した能力もなく、幸福になれないのはある程度運命で決まっていたのではないかと考える。夫に対しても呆れ、恥ずかしがり、ときには結婚そのものを後悔するような気持ちを見せます。

    ところが、そう言う割には、実によく夫を見ている。

    誰と話しているか。どんな話をしているか。以前はどんな仕事をしていたか。近所の誰なら夫の話を聞いてくれるか。しまいには、最近は話を聞いてくれそうな人間を見分ける能力まで身につけたのではないか、と考えるほどです。

    これはなかなか愉快です。

    本当にどうでもよい相手というものは、そこまで観察しません。「嫌だ」「恥ずかしい」と口では片づけながら、視線だけは夫からなかなか離れない。この食い違いによって、伊知子は単なる不平の多い主人公ではなく、本人にも整理しきれていない感情を抱えた人間として見えてきます。

    そして、この作品には、こうした「言っていることと、やっていることが少し違う人」が随所におります。

    佳枝と史明の関係もよいですね。

    佳枝は自分の店について、今のままで十分だと言う。新しい提案など必要ないと頑として拒む。一方の史明は、本人が望んでいる以上に店の将来を心配してしまう。これは考えてみれば、なかなかのお節介です。

    ところが、そのお節介には、長く通ってきた店への愛着がある。佳枝の側にも、史明の様子を察して料金をまけるような、ぶっきらぼうな親愛がある。互いに「あなたが大事です」などとは言わないのに、行動だけ見ると案外よく相手を見ているわけです。

    こういう関係は、わたくしは好きです。

    人間は、親しい相手ほど素直に親切を口にできるとは限りません。むしろ余計な世話を焼いたり、突っぱねたり、文句を言ったりする。その遠回りの中に親しさが見えると、人物が急に生きてまいります。

    そして何より愉快だったのは、鳥居でしょう。

    生真面目な彼が「ワイワイ労働組合」という、名称からして少々拍子抜けする団体を前に困惑する。しかも説明を聞けば、その活動方針は本人の考えに案外合っている。しかし、渡されるバッジはまた妙に可愛らしい。真面目に考えれば考えるほど、周囲の意匠が彼を困らせるのです。

    それがやがて、趣味を持つことを勧められた結果、いつもの地味な服装から一転して、シルクハットや蝶ネクタイを身につけるところまで行ってしまう。

    真面目な人は、遊ぶときまで真面目なのでしょう。

    ここには、人間を笑いものにするのではない、たいへん気持ちのよい可笑しみがあります。鳥居本人はいたって真剣です。その真剣さを壊さずに、読者だけが少し笑える。しかも、その変化は単なる冗談ではなく、働くこと以外の楽しみを彼が得た証でもあるのです。可笑しさと小さな幸福が同じ場面にあります。

    こうして見ると、本作の「第三の道」は、社会制度についての発想だけを意味してはいないように、少なくとも第19話までのわたくしには見えます。

    現状維持か改革か。労働者か経営者か。競争か協力か。幸福な人生か不幸な人生か。

    人物たちは、どうも二つに一つでは片づかないところを歩いている。

    しかも、その答えを探している人たち自身が完全ではありません。頑固だったり、胡散臭く見えたり、世話を焼きすぎたり、生真面目すぎたりする。その「ちょっと困ったところ」を矯正してから社会へ出すのではなく、困ったところを抱えたまま誰かと関わらせている。それがこの現代ドラマの魅力でしょう。

    一方、もう少しだけ人物たちに任せてもよい、と感じるところもありました。

    この作品は、社会や経済の仕組みを読者へ伝える説明力がかなりあります。それゆえに、ときどき人物が非常に長く理屈を語り、読者が人物を見るより先に、考え方の内容を理解する場面があります。

    これは本作の持ち味でもありますから、なくす必要はないでしょう。

    ただ、その説明の途中に、相手が妙な顔をする、返事に困る、話を遮る、別のところを見る、といった小さな反応をもう少し置いてもよいと思います。

    なぜなら、この作品は思想そのものより、「大真面目な思想を抱えて生きている、少々妙な人間」を描いたときに、実に生き生きするからです。

    立派な思想が人を魅力的にするのではありません。

    その思想を語っている横で妻が恥ずかしがっていたり、真面目に労働問題を考えていた人がアニメに夢中になって妙な格好をしていたりする。そのわずかなずれによって、思想が人間の暮らしへ降りてくるのです。

    第19話までという途中の範囲ですから、散らばっている人物たちがこの先どのように結びつき、伊知子の人生へどう関わっていくのかは、まだわかりません。

    しかし、冒頭で「人生は運命で決まっているのではないか」と考える女性を置き、その周囲で、既存の選択肢に満足せず別の方法を試している人々を次々と見せていく構成には、先を読みたくなるものがあります。

    伊知子自身は、自分の人生についてすでに答えを出してしまったつもりなのかもしれません。

    けれども、人間というものは、自分について出した結論ほど当てにならないことがあります。

    彼女がこの先も「どうせ」と言い続けるのか。それとも、本人も予想していなかったところへ足を出すのか。

    縁側から眺めておりますと、その一歩をもう少し見届けたくなる作品でした。

    柿井優嬉さんが描かれる「第三の道」が、制度の話だけでなく、こうした不器用な人々それぞれの生き方としてどこへ続いていくのか。楽しみにしております。

    ■ ユキナより――終わりの挨拶

    夏目先生、ありがとうな。

    ウチも読んでて思ったんやけど、この作品って、社会や経済の話はけっこう大きいのに、読後に残るんは意外と人の小さなところなんよね。

    伊知子さんが夫に呆れながら、なんやかんやよう見てるところ。佳枝さんと史明さんが、素直に「大事や」と言わんまま互いを気にしてるところ。鳥居さんが生真面目さを捨てるんやなく、生真面目なまんま趣味まで全力でやってしもたところ。

    そういう「人間って、思った通りには動かへんなあ」って部分が、この作品の社会的なテーマを堅くしすぎず、親しみのある物語にしてるんやと思う。

    第19話までやから、まだ「この人らがどうつながっていくんやろ? 」って楽しみも残ってる。特に伊知子さんが、自分で決めつけてしもてる人生からどんな方向へ動くんか、ウチは気になったわ。

    柿井優嬉さん、読ませてもろてありがとう。これからも執筆、応援してるで。

    なお、自主企画参加履歴は「読む承諾」の確認として扱ってるんよ。参加を取りやめた場合は前提が変わるから、応援・評価・おすすめレビュー等を見直すことがあるので注意してな。

    ユキナと夏目先生(猫の縁側 ver.)
    ※ユキナおよび夏目先生は、GPT-5.6による仮想キャラクターです。

    作者からの返信

    ありがとうございます。
    嬉しいコメント、参考になるコメントがたくさんございました。
    感謝申し上げます。

  • 田中伊知子①への応援コメント

    主人公が2人以上いる小説あつまれ!

    作者からの返信

    コメントありがとうございます。

  • 田中伊知子⑨への応援コメント

    思っていなかった事態が!😱

    作者からの返信

    はい、こういうことになりました。
    星とレビューをありがとうございました。

  • 田中伊知子⑪への応援コメント

    まずは企画へのご参加ありがとうございます!
    全話読ませていただきました。
    普段あまり読まないジャンルの話でしたが登場人物皆の優しさが最終的に一点に繋がるという構成が素晴らしいと思いました。
    優しいながら非常に社会派な小説で考えさせられる部分がたくさんありました。こういった小説を探す能力があまり無く、書店でも中々手に取らないため、こ゚縁からこの作品に出会えたことを嬉しく思います。

    作者からの返信

    最後まで読んでくださったうえに、素晴らしいレビューまで、とても嬉しいです。この小説を書いて良かったです。ありがとうございました。

    編集済

  • 編集済

    田中伊知子⑪への応援コメント

    こんにちは、柿井優嬉様

    呼吸を落ち着かせてから、感想を書かせて頂きます。

    田中伊知子さんの感情と、それぞれの人物の時系列がラストで絡み合いました。最後のエピソードで鳥肌が立つとは、こういう瞬間なのだと思いました。

    数話に一度、伊知子さんのストレスや苦悩の語りは、ここに向かうためだったのですね。上手いをとしか言い様がないです。
    伊知子さんに伝えてください。あなたの夫は、誰よりも教師としてふさわしい人格者だと。そして、柿井優嬉様には、素敵な作品をありがとうございましたを、送ります。

    追伸
    下手なりにレビューを書いてみました。宜しかったら笑ってください。

    作者からの返信

    コメント、そして素晴らしいレビューをありがとうございます。
    雨京様に読んでいただき、褒めてまでくださって、この小説を書いた甲斐がありました。
    改めて感謝申し上げます。ありがとうございました。

  • 田中伊知子⑩への応援コメント

    柿井優嬉様、いつも楽しく拝読させて頂いてます。

    夫婦とは、はたから見えるものでは無いですよね。
    仲良き夫婦にも裏があり、喧嘩が絶えない夫婦も、深い所で情があったり……

    彼女のかばう言葉に、その深い情を感じました。
    深いお話です。これからも楽しみにしています。

    作者からの返信

    コメントありがとうございます。
    そうですよね。人間の感情が単純ではなく複雑であるのは、雨京様の作品でも見られますし、それを作品にどれだけ落とし込めるか、日々勉強です。

  • 練武②への応援コメント

    あらら、徳次さん……職人気質……
    てっきり、ニトリにつぐ家具メーカーになると思いきや
    徳次さんの心に気がつきませんでした。

    作者からの返信

    こちらにもコメントありがとうございます。
    私も雨京様の「インナースノー」を拝読させていただいておりますが、素晴らしい作品で、先の展開が楽しみです。

  • 練武①への応援コメント

    おはようございます。いつも拝読させて頂いてます。
    日本の職人の技術が、伝承されずに時代が終わると
    日本にとって財産を失うと同じですよね。

    わたしは日本製が好きです。フライパンから家具まで好きです。

    作者からの返信

    コメントありがとうございます。

    家具というのはなんとなく選んだだけで、まったく詳しくはないのですが、企業がコスト削減のために製造を海外で行うので、いろいろな分野で国内の作り手が活躍する場が限られているという話を聞いたことがあり、なんとかならないかなと思います。ただ、「じゃあ値段が高くていいの?」と言われたら「はい」と即答はできませんが。

    ともかく、読んでくださり、とても嬉しいです。