学園最強、手懐けてみたwwwwww
えすかー
1話 最強少女
桜がすべて散り、段々と熱くなってきた五月の頭。私は、旧校舎裏にあるウサギ小屋の近くで、とある人を待っていた。
(はぁ……なんでこんな目に……今日は早く帰って、今期楽しみにしてたアニメを見たかったのに。これも全部、あいつらのせいだ。何もしてないのに、難癖付けやがって……)
そんなことを考えていたら、後ろの方からジャリ、ジャリと足音が聞こえた。その足音は段々と近くなり、私の近くで止まった。そして、その足音の主が私の肩を力強く掴み、引っ張ってきた。
「痛っ……」
「おい、何の用だ。こんな所に呼び出して」
少しざらついた中性的な声が後ろから聞こえてくる。その声の主を見るために、引っ張られる力に身を任せて、後ろを振り返った。
振り返った先には腰まで伸びた金色の髪を揺らしながら、不機嫌そうに私を睨む女の子が立っていた。傷一つもない白い肌に、フランス人の母親から遺伝した緑色の目。175センチの長身を持っていて、まるでモデルの人みたいだった。
丈が短くなっているスカートから見える足はしっかりと引き締まっていて、長距離選手のような細い脚だった。
目の前にいる綺麗な女の子に一瞬見惚れたが、彼女の噂を思い出して気が一気に引き締まった。本当に注意して接しないと、生きて帰れるかわからない。
「はははっ……どっ、どうもぉ……」
私は愛想笑いを浮かべながら、待ち合わせをしていた金髪女、楠ライカに挨拶をした。
ライカは、私の様子が気に食わなかったのか顔をさらに顰めて、鋭い目つきで睨みつけてきた。
「ひっ!」
「誰だ、お前? また逆恨みしたやつが呼んだのかと思ったが。お前みたいなやつ、見たことがない」
「う、恨みなんかぁ……ない、ですよぉ……」
棘のある言い方と、鋭い目つきで攻撃されて膝の震えが止まらなかった。
(というか、この子本当に同い年なのか? 威圧感強すぎでしょ……)
「まぁ、何でもいい。早く、用件を言え」
左足の踵を上下に動かして、私のことを急かしてくる。しかも、私の肩に触れているライカの手に力が入る。それから、追い打ちをかけるかのように大きな舌打ちが聞こえてきた。
(こんな場所から早く逃げ出したい。でも、ここで逃げたらあいつらに煽られて、また面倒ごとに巻き込まれてしまう……いや今も充分、面倒ごとに巻き込まれてはいるけど……)
「チッ」
「痛っ!」
大きな舌打ちがまた聞こえた後、肩に激痛が走った。その痛みと音で考えていた脳みそが、現実に戻される。目の前にいるライカはさっきよりも激しく貧乏ゆすりをして、自分の機嫌の悪さを表現していた。
(まずいっ、このままだと、キレたライカに殴られる!)
「あ、あのっ!」
「あ?」
(怖すぎるって! 般若みたいに顔を顰めて、私のこと睨んでこないでっ!)
「そっ、その……わっ、私と!」
睨みがさっきよりも鋭くなった。でも、ここで怖気づいてしまったらまた機嫌を悪くして、今度こそ本当に殴られてしまうかもしれない。
私はなけなしの勇気と声を振り絞って、目の前にいるライカさんに思いをぶつけることにした。
「とっ、友だちになってくれ、ませんかっ!?!?」
思っていたよりも、10倍くらい大きな声が出た。
ライカは聞いた瞬間、肩から手を放し貧乏ゆすりを辞めた。それから、目を見開いて私のことを見てきた。
「え、えと、ダメ、ですか……?」
「………………」
声をかけてみても、ピクリとも反応しない。私は、そんなライカにどう対応したらいいかわからなくて、じっと見つめることにした。
数秒間見つめていると、ライカはぱちぱちと何度か瞬きをしてから「は?」と間の抜けた声を出した。
「おい、今なんて言った?」
「え、えと、その、友だちに、なりませんか?」
改めて言うと、すごい恥ずかしい。体中が熱くなって、背中に汗が湧き出てくる感覚がした。
私の言葉を聞いたライカさんはまた数秒固まってから、また私のことを睨みつけてきた。でも、さっきまでの威圧感が無くなっていて、あまり怖さは感じなかった。
「だっ、騙されなぞっ!!」
さっきまでの威圧感が抜けた、少し震えた声で叫んだ。そして、くるんと身を翻して走って逃げて行ってしまった。
「あっ、ちょっ! まっ、待って!!」
私も叫んでみたが、一言も帰ってこず。ライカはだんっ、だんっと健康的で細い足で地面を踏みしめ、校門のほうまで逃げて行った。
(ええ……ど、どうしたらいいのこれ……返事も聞けなかったし、それに)
逃げ出す時にちらっと見えたライカの表情を思い出して、少しだけもやっとする。何故かライカは、少しだけ目を潤ませて寂しそうな表情を浮かべていた。顔がいいだけあって、中身を知らない人ならすぐに惚れさせることが出来そうなほど可愛かった。
(凶暴だって噂で聞いていたけど、あんなにも可愛い顔出来たんだ……それに、何であんな表情していたんだろう? 友達になるのそんなに嫌だったのかな……)
あの時ライカは、いったいどんなことを思っていたのだろう。気になったけど、本人は逃げてしまったから聞くに聞けなかった。
(ライカさん帰っちゃったし、私も今日は帰るかぁ。また明日も会えるだろうし、その時にまた友だちになってくださいってお願いしよう)
そう思って私も、ライカさんの後を追うように校門まで歩を進めた。
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