「えっちなことをしてほしい」と英雄になった獣人幼馴染に呼び出されました

笹塔五郎

第1話 幼馴染で

 ――リッティア・ベルロードには幼馴染がいる。

 その幼馴染の名はフェイン・ケルフェン――今は、『エルテイラ王国』で六人しかいないという、選ばれし『聖騎士』の一人だ。

 元々、小さな村の同じ孤児院で育った二人はずっと仲良しで、いつも一緒にいた。

 リッティアには魔法の才能があって、獣人だったフェインはその身体能力の高さも相まって、剣士として優れた才能があり、二人でよく一緒に稽古をしていた――だが、才能と言っても人それぞれだ。

 リッティアよりも、フェインの方が圧倒的な実力があって、すぐに二人には大きな差ができてしまう。

 そんな実力を認められてか――フェインは王国の騎士団の訓練生に選ばれた。

 それの日が最後だろう――リッティアがフェインと顔を合わせたのは。

 いつも一緒にいたからこそ、やはり寂しい気持ちは大きかったし、泣いてしまう日もあった。

 それから、五年ほど経っただろうか――今では英雄と呼ばれるほどにまでフェインは成長を遂げたらしい。

 長い白髪が特徴的で、今では『白剣姫』と呼ばれているとか。

 幼馴染としては、正直誇り高い気持ちでいっぱいだった。

 王国の騎士として、色んな人の役に立っている――リッティアは小さな村の魔法商店で手伝いをする程度で、地位という意味でも、随分と差ができてしまった。

 ひょっとしたら、フェインはもうリッティアのことを覚えていないかもしれない――なんて、考えてしまうほどだ。

 けれど、それでも構わなかった――のだが、


「リッティア、お願い」


 そう懇願するように口を開いたのは、フェインだ。

 今は彼女の自室で、ベッドの上にいる彼女は目に涙を浮かべて、頬を朱色に染めている。

 白髪から生えるのは猫のような耳に、お尻の辺りからも同じ色の尻尾が生えている。

 その尻尾は、くるりと丸まるようにして――自身の大事なところ隠すように動いていた。

 思わず、息を飲む――前に会った時よりも成長しているが、それでも一目で分かった。

 そして、もう一つ分かることがある――幼馴染は今、発情しているのだ。

 これは何かの例えだとか、比喩ではない。

 フェインは獣人であり、その特徴の一つとして、発情期がやってくることは知識としても知っていた。

 基本的に、それが大きな問題になることはない。

 発情期は全ての獣人に訪れるものであり、自身で解消できるはずのもの。

 ――だが、ごく稀に高い依存性を発揮してしまう者がいるらしい。

 それが、まさか幼馴染のフェインに起こることになるとは、想像もしていなかった。

 リッティアは、フェインの発情を解消するために呼び出されたのだから。


(……どうして、こんなことに……?)


 ただ困惑するしかないリッティアであったが――覚悟を決める必要がある。

 これから行う行為は、フェインにとって必要であり、この国にとっても重要なこと。

 ――発情を解消しなければ、獣人は最大限のパフォーマンスを発揮できない。

 つまり、今のフェインは英雄と呼ばれるには程遠い。

 英雄を元に戻すために、リッティアはフェインの性欲を解消しなければならない、ということだ。

 ベッドに上がって、リッティアはフェインと見つめ合う。

 幼馴染の身体は記憶にあるものよりずっと成長していて――そのまま、リッティアは口づけを交わす。


「ん……」


 少し艶のある声が漏れて、いよいよその時が迫ってくる。


「わたしに、えっちなこと、して……?」


 潤んだ瞳で、フェインはそう口にした。

 幼馴染で、同性同士で――久しぶりに再会したばかりだというのに、今から二人で、だ。

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