イヴとミルクの物語① 『にじのぼうけん』

第1話 旅に出でる １．５

「天（てん）にはたくさんの種類（しゅるい）のしょく人（にん）がいてね。

かれらはにじを、かける空（そら）にできるだけ合（あ）うようにして作（つく）るんだ。

けれど全（まった）くもってぴったりのサイズには、どうしてもできないらしい。

だからにじをかけるために天（てん）からつかわされたにじしょく人（にん）は、空（そら）ににじをかけた時（とき）、もしそれが短（みじか）すぎればのばすし、大（おお）きすぎたらおのやのこぎりで切（き）ったり、やすりでけずったりする。

そうして、それぞれの空（そら）にぴったりの形（かたち）になるよう、にじを調節（ちょうせつ）して空（そら）にかけるんだよ。

ほら、たまに色（いろ）がうすかったり、みょうに細（ほそ）いにじを見（み）たことがあるだろう？　あれはにじの長（なが）さが足（た）りなくて、にじしょく人（にん）が地上（ちじょう）でのばした物（もの）なんだよ」

　リリスはたまごのサンドウィッチをかた手（て）に、コーヒーをむちゅうで飲（の）みながら言（い）いました。

そして(帰（かえ）ったら、すぐにねむらなくちゃ。ママ達が起きだす前に。

でも、こんなにコーヒーを飲（の）んだら、きっともうねむれっこないだろうな)と、わくわくと思（おも）いました。

リリスは話（はなし）を続（つづ）けます。

「そして今朝（けさ）、そのにじしょく人（にん）が森（もり）のおくでにじをかけた。

でもそのにじが大（おお）きすぎたから、少（すこ）しはしっこをけずったんだ。

そしてその粉（こな）を、運（うん）よくシャロルが手（て）に入（い）れて、自分（じぶん）のほうせき店（てん）で午後（ごご）から売（う）り出（だ）した。

それを、パーティ帰（がえ）りで昼（ひる）まで出歩（である）いていたお母（かあ）さんが、少（すこ）し買（か）ったんだよ。

大人（おとな）の魔女（まじょ）だけ昼間（ひるま）も出歩（である）いていいなんて、ぜったいに不公平（ふこうへい）だよ」

　リリスはふくれっ面（つら）になりました。

「お母（かあ）さんが家（うち）に帰（かえ）って来（き）た時（とき）、わたしはベッドの中（なか）で目（め）が覚（さ）めてね。

お母（かあ）さんがお父（とう）さんにその話（はなし）をしているのを聞（き）いたんだ。

そして二人（ふたり）がねむるのを待（ま）って、ビンをこっそりここへ持（も）って来（き）たってわけ」

　ところが話（はなし）のとちゅうでシャロルの名前（なまえ）が出（で）て来（き）たとたんに、ミルクは鼻（はな）にしわをよせて、あからさまにいやな顔（かお）をしました。

シャロルとは美（うつく）しいシャムネコで、森（もり）の反対側（はんたいがわ）にミルクと同（おな）じような、こう水（すい）やジュエリーを売（う）る大変大（たいへんおお）きな店（みせ）を持（も）っていました。

がんらいネコと言（い）うものはみんなそうですが、シャロルは特（とく）にわがままでした。

その上（うえ）うぬぼれが強（つよ）くて、ミルクの小（ちい）さな店（みせ）をライバルししていました。

だから何（なに）かと、ミルクやイヴにいじわるをしてくるのです。

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次回の掲載は２０２４年５月２日です。

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