第四部 まとめ

第四章 サポーター限定SS 法衣子女、初めての観劇 503話辺り

 寮の中で黒猫歌劇団という劇団のチケットが売られています。どうやら先輩のどなたかが劇団に就職なさられたみたいですね。


 聞いたことがない劇団だなと思ったら、もともと大人気の、王国少女歌劇団が劇団名を変えたという話ではありませんか!


 噂で聞いていた王国少女歌劇団のチケットが手に入るのですか⁈


 私は『子猫たちのおやつ』のメンバー分のチケットを何とか手に入れました。


 手に入れたのはよかったのですが……。割り当てのノルマだったらしく、日程がバラバラです。


 私は一人で初日の公演を見に行くことになりました。他の方は2~3人で楽しそうに計画しているといいますのに。


 ボッチで観劇です。



 実は初めて劇場に行きます。実家のある領地には劇場などございませんでしたし、王都に来て二年目では中々チャンスもなかったのです。だから一人で行きたくなかったのに。


 劇場は下町にあるのですが教会の近くなので安心です。教会は平民も貴族も祈れるように貴族街と平民街を分ける所にあります。それなので緩衝地帯といいますか、平民でも民度の高い裕福層が集まる街並みにあるのです。


 もともと歌や踊りは神に捧げる神事から発生しておりますから。今でも教会の近くに劇場を建てるのです。


 それにここでしたら、平民も我々法衣貴族も入ることができますから集客にもいいみたいですね。高貴な貴族の皆様の劇場は、私達では近づきがたい高級な地域にありますから。


 どのようなお洋服でいくのがいいのでしょうか? ドレスですと目立ちそうですが。


 先輩たちに聞いてみたところ、「初めていくなら制服が無難だよ」と教えてもらいました。


 制服は学園内では不評なので普段着て通っている人はほとんどいないのですが、下町に行くときは便利なそうです。


 貴族ということが一目で分かりますし、高貴な方々も下町にお忍びでいくときは制服でいかれることが多いそうです。


 ドレス着用が標準の高位貴族の皆様は、私達が着るようなワンピースなど着用なさりませんし、動きやすく身分差の分からない制服が身分を隠すのに最適なようなのです。


 ですから、制服を着ていると危険なことに巻き込まれにくいようです。万一高貴な子息やご令嬢に手を出したら命がいくつあっても足りないと考えてくれるそうです。


 初めてですし、制服が良さそうですね。


 髪型やメイクで精一杯オシャレをすればいいでしょう。


 公演日は寮が閉まってからです。年が明けるまで仲間たちと王都のアパートを借りてその後実家に帰るつもりです。


 せっかくの王都、楽しまなくては!


 実家は……。家族は好きですが、刺激がないんですよね。



 なんですの! この熱気は! まだ開場も始まっていませんよね!


 遅れてはいけないと開場時間の1時間前には到着したのですが、すでに人であふれ返っています!


 物販コーナー? 何でございましょう?


 黒猫のイラストが印刷されている品物が様々売られておりますわ。なるほど。黒猫歌劇団のオリジナルな商品なのですね。


 どうやら扇が応援で使用するみたいで一番売れているみたいです。ですが高いですわ。普通に買うより倍以上するではありませんか!


 それでもなにか記念に欲しいです。安いものは……、あ、レターセットがあります! 文学サークルに在籍している身としてはこれが最適ではないでしょうか!


 台本も売っています! 高いです! みんなで相談して一冊だけでもお金を出しあって買うように相談しましょう。


 よい買い物ができました。それにしても皆さますごく買っておられますわね。平民の方が多そうですのに。


 良い席を取ろうともう並んでいるのですか? え? 買い物しているのは? なるほど、数人で並んで代わるがわる買い物に来ていると。そうなのですか! 私も早く並ばないといけませんね。


 本を持ってきてよかったです。一人で待っていても時間が気になりませんわ。


 それにしても分からないルールが多そうです。帰ったら教えてあげないといけませんわね。



 かなり後ろの席になりましたが、真ん中付近の席に座ることができました。前の方ではメイド服を着た団体が固まって座っています。なにか意味があるのでしょうか?


 いよいよ幕が開きます。もうドキドキしています。


 音楽が鳴り、ダンスシーンから始まります。学園でのダンスの練習を思い出してもなかなかのものですね。役者は平民が多いと聞いていましたが、なんて素敵なダンスなのでしょう。


 主役でしょうか? カッコイイ男の人? いえ、女性ですね! 国を憂い学園の未来に悩む王子。素敵です! ダンスをしていた人たちがいなくなりヒロインが登場してきました。


 紙切れがはらはらと降ってきます。どうしているのでしょうか。ってこれは!


 私が入学式の時に見たあの王子と聖女のシーンそのままではありませんか!


 制服少女シリーズの屈指の名シーン、桜の下の出会い! まさかここで見ることができるなんて!


 感動です! 素敵です! 引き込まれてしまいます!!!



 お芝居は名シーンだけを繋ぎ合わせたような感じでしたが、歌も踊りも迫力しかなくむしろ説明を省いた分サクサクと進行していきます。


 って、あれってレイシア様⁈ なんでレイシア様が舞台に? しかもあんなならず者の格好で⁈


「痛ってえ~。 ああああ~、何するんだよてめえ。人にぶつかって謝りもしねえのか!」


 えっ? なに? この迫力って何ですか! めちゃくちゃ怖いのですが!


「おう、よう見たら綺麗な顔してるのう。ちょいと付き合えや」

「や、やめて下さい!」


 悪役! 本物の悪役そのもの! あの大人しく気品のある、素晴らしいお茶会の主催者のご令嬢レイシア様が、ガラの悪い悪役! 悪役のご令嬢? 悪役令嬢? あれ? 悪役令嬢ってそういう意味でしたでしたか?


 客席が凍り付いています! レイシア様が舞台の中心になっています!

 王子さま頑張れ! 負けてしまいそうな王子様をみんなが応援しています。

 レイシア様、その迫力はどこから……? 演技ってすごい。


 レイシア様が倒され、舞台と客席に平和が戻りました。それにしてもあれだけの短いシーンで強烈な印象を残したレイシア様には驚きしかございませんわ。



 二部は歌と踊りと寸劇なのですね。

 あ、黒猫甘味堂のお話です! そうそう、こういうお店でした。また行きたいです。どうすれば場所がわかるのでしょうか。

 前列のメイド服の少女たちの反応が凄いです。関係者でしょうか。


 今度は執事喫茶⁈ 新しくできるという喫茶店ですか! ああ、こんな方たちが本当にいるのでしょうか? まさかこの方たちが執事喫茶で働くわけではないですよね。


 って、お店に来てください? これは宣伝だったのですか⁈ このままのお店が開店するのですか! 行きたいです! 行ってみたいです!! これは、お金をためないといけませんね! 三年生になったらアルバイトの許可が取れるので申し込まなくては!


 楽しい時間も終わりを迎えます。フィナーレの歌が歌われます。


 あれ? 皆さん扇を振っています。このためだったのですね! 楽しそう。羨ましいです。


 あ、ハンカチを振っている人がいます。にゃんタンという黒猫が描かれているのでさっき買ったものでしょうか。


 こうなったら私もいいかな? レターセットを掲げて左右に振りました。


 私だけ浮いてませんよね。仕方ないではないですか。これしかありませんもの。


 後から来るみんなに教えなくては。扇は買った方がいいって!


 舞台は大成功のようです。いつまでも拍手が止みません。

 やはり王都は素晴らしいですね。こんな楽しい事が行われているのですから。


 学園にいる間は、いろんな経験をしたいです。地元に戻るのが少し憂鬱になりそうです。


 舞台最高でした。今日は早く帰ってみんなに報告しなければ!


 文芸サークルの仲間と語り合いたい! そんな興奮のまま私はみんながいる短期契約のアパートに帰りました。




…………………………


この回は、同じ内容が続くためボツにしたのですが、サポーター限定で書いてみたものです。


書いたら出来が良かったので、どこかで出したいと思っていたのですが、まあ、ここならいいかなと思い差し込みました。


本編には今更入らないので、サポーターの皆様に感謝して下さい。


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