雑学・『狐の口封討ね』

 これは、中国ならではの妖狐の伝承である。


 ご存知の通り中国では古来より「動物が長年の修練を経て妖怪に、最終的に妖仙に至る」と言った伝承がある。

 その中で狐に纏わる伝承の一つとして有名なのは『狐の口封討こうふうたずね』。

 曰く、次の段階へ進むために、修練を一段落した狐は、荒野で一人出歩く人間の前に現れ、できるだけ人間のような振る舞いをしながら『ワタシハヒトニミエマスカ私は人に見えますか』という決まりの問いをする。

 「人に見える」という返答が得られたら晴れて人間に変身する資格を得て次の段階に進めるが、否定的な返答だったら今までの修練は全部水の泡となり、最初からやり直すハメになる。

 その『人間に変身する資格の承認』こそが『口封こうふう』という概念だが、本来それは天庭の権限で行われることなので、狐だと気付かずもしくは狐助けのつもりで迂闊に肯定してしまうと越権行為とみなし、寿命が縮む恐れがある。かといって下手に否定すると今度狐からの報復を受ける恐れもあるので、断るのも怖い。

 よって、『狐の口封討ね』に出くわしたら運が悪いしか言いようがない。


 ちなみに、サブカル色に染めた現代の中華ネット民の中には、「人に見えると答えたら人に変身できるということは、返答次第変身後の状態はカスタマイズができるのでは?」という謎の考察に基づいて、こういう風に予め返答を用意した。


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