まだ知らない君へ

こたこゆ

二年前

 二年前、自分は彼女や彼のことを知らなかった。

 綺麗に晴れた春空を見て、変わっていく日常にやっと涙した。そんな自分を、ノロマだと笑うだけだった。

 翌日の入学式に、新しい学校に、不安と期待を寄せていた。


 あの時の自分は、まだ知らない。


 親友の様に行動を共にする彼女のことを。

 彼女と一緒に冬祭りへ行くことを。


 上手く勇気を出せずに出遅れた部活のことも。

 想像と違うが楽しいそれからの活動も。


 優しくしてくれる先輩がいること。

 同じ趣味の彼のこと。

 新しく見つけた作家のこと。

 お気に入りになるパン屋のこと。



 二年前の自分は何も知らない。

 不安がるあの子に言ってあげたい。



 あなたのこの一年は、ちゃんと楽しく笑えるよって。



 一年生がやがて去年になって、一昨年になって。

 そして今年がやってきた。

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