第69話 再会
リズ姉と話し合いに来たという旅の僧侶。セラという女性に案内されてたどり着いたダンジョン最奥部。
そこでいつぞや話されたダンジョンマスターに会ったボクだけど。
「どうしたの?」
ボクの顔を見るなりポカン、としている。本来ならビックリしてる、なんて笑ってるとこだけど、何か違うよね、この反応。
と、いうか、何かこっちを疑ってる? なんで?
そんな反応のダンジョンマスターくんだったけど、ぎぎぎ、なんて音が聞こえそうな動きでリズ姉を見ると話しかけた。
「えぇと……。リーゼロッテ、さん……?」
「どうしたの、ヒデヨシ」
「いや、本当か……? その、
「…………! えぇ、そうよ。形式上は」
眉をぴくり、と動かしてリズ姉は肯定した。って、それよりも――!
「ちょ、ちょっと! 何言ってるのさ!」
まずい、まずい! きっと彼はボクが女だってこと確信してる! じゃないと、リズ姉に彼女、だなんて言わないよ! なんとか誤魔化さないと!
でも、意味あるのかなぁ……。
何か、アレク皇子と名乗った彼女が焦っているが……。まさか、あれで男装できてるつもりだったんだろうか?
いくらなんでも中性的な顔立ちに、なだらかに膨らんでいる胸。肉付きこそ薄いけど女性的な丸みを帯びているラインなどと男である、なんて主張をするのが難しいと思えるんだが……。
ま、まぁ……。あえてフォローするなら、こちら。日本にいた頃のサブカルで男の娘だの、男装の麗人だのなんてのはありふれていたから、気付きやすかった。というのはきっと、うん……。たぶんあったんだろう。率いていた兵士たちは疑問に思ってなかったようだし……。気を遣って目をそらしていた、なんて可能性も否定できないけど。
そ、それはともかくとして。リーゼロッテはアレク皇子。いや、皇女か? 呼び方はどうでも良いが、彼女が同姓だっていうことは気付いてる、というより知ってるんだよな?
問いかけた時、ぴくり、と反応してたし。
というかアレク皇子。やっぱり、男だなんてうそぶくには無理がある。アワアワしてる様子はどう見ても女の子のそれだし。
いや、まぁ、この頃の忙しい。頭のいたくなる日々からすると彼女のハムスターみたいな動きは一種の清涼剤。心が浄化されるように感じて気持ち良いのだけど。
「ま、まぁ、何はともあれ。リーゼロッテ、あなたの無事な帰還。心から安堵するとともに歓迎しよう」
リーゼロッテに声をかけたが、顔が引きつってないことを信じたい。
「え、えぇ。ありがとう」
……無理だろうなぁ。当のリーゼロッテ本人の顔が引きつってるんだから。
どちらにせよ、気持ちを切り替えていかないと。
「……そ、それにしても驚いたわ」
「む……?」
「この開拓村よ。いつの間にか大きくなって、ルディア、なんて名前までついてるんだもの」
「あぁ、なるほど」
そういえば彼女が旅立った頃はまだ本当に開拓村だったからな。ここまで発展したのは最近の話だし。
「それは各地の避難民がここへ来たこともそうだし、何より――」
本当、エルザ・クラン女男爵のおかげだよなぁ。
いま、ダンジョンマスター殿は重要な会談中、という話だったが。
「まぁ、こちらも火急の用だから仕方なし、だよな……」
ここで立ち止まっていても、聞き耳を立てるくらいしかないわけだし。
あたしは通信用のホログラム発生器を起動する。本来はあちらからの受諾がないと映像が繋がらないんだけど――。
「繋がった……?」
ほぼ、タイムラグなしで繋がってしまった。即時に受諾した? いや、でもいつもはどうしても反応の関係でもう少し遅く――。
ちょっとした異常事態に考え込んでいたけど、映像に映し出された光景を見て、あたしの考えはすべて吹っ飛んだ。そして同時に納得した。それはそうだ、あの方との会談なら重要だとも。
「姫さま!」
「その声……。エルザ。大丈夫だとは思ってたけど、ちゃんと無事だったのね」
そこには以前、ダンジョンマスターから帝国へと旅立ったと聞かされたあたしたち騎士団の団長。アルデン公国の姫君。畏れ多くも、あたしと幼馴染みの関係になるリーゼロッテ・アルデンの姿があった。
呆然としてたあたしだけど、そこへダンジョンマスターの声が聞こえてくる。
「リーゼロッテ、彼女がここまで開拓村を、ルディアを発展させてくれたんだ」
「そうなの? ……いえ、エルザならそれくらいのこと出来そうね」
「あの、姫さま……?」
そこで納得した、みたいな声あげるのやめて貰えます?
なぜか知らないけど、姫さま。昔からあたしに対して変に高評価、というか過剰に評価してくるんだけど本当にやめてほしい……。
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