神々の戯れ 66話

「ヘルメスのおっさんのやらかしと、嬢ちゃんに……カンパーイ」


 儂はバッカスの奴に呼び出され、一緒に酒を飲む羽目になった。


「それにしても最高だったな。あの教会でのやらかしは」

「ふん、お前が聖詠を口ずさんだ少女がいたと言うから、気になって調べていたのではないか。お前がきちんと覚えていさえすれば、あんなことはせんかった」


「そうかい? おっさんだったら結局やらかしたと思うがな」

「おっさん言うな」


 儂はグラスの酒をグビッと飲み干した。確かにあの聖詠を聞いたら、やっていたかもしれんな。


「ほら、つまみだ。あの娘が開発した米玉。どうやら差別化するために『にぎり飯』という名にするそうじゃ。お前の所には酒しか上がらんのじゃろ。食うてみ」

「おっこれか! おっさん、気が利くな。…………んっ! 何だこれは!!! うまい! うまいぞ〜〜〜〜!!!」


 案の定、にぎり飯のうまさに我を忘れよった。


「じゃろう。おかげであの騒ぎじゃ。仕方なかろう」


「こいつは……俺もあの嬢ちゃんに祝福やるうかな。聖詠は唱える。うまい飯は作る。最高じゃねえか。なあ、おっさんよ」

「だから、おっさん言うな」


 楽しいのう。今日はいい酒がのめそうじゃ。


「あんたらね〜! うちの子に手、出さないでくれる〜!」


 なぜか、呼んでもいないのにアクアが来た。勝手にグラスを取ると、ボトルから銘酒をドボドボ注ぎ、一気にあおってから言った。


「く〜〜〜、はあ、効くねぇ。……あんたらね、教会でうちの子に祝福ぶっかけたんだって! やめてよね、そういうの!」


 と言うと、また酒を注いだ。


「うちの子とは?」

「レイシアよ、レイシア。あたしが育てたんだからさ。勘弁してよ。取らないで!」

「お前が育てたわけじゃないだろ! 単に領地にいただけなんだろ!」


 バッカスが言うと、アクアはまた酒を飲み干し、突っかかって来た。


「あの子は私が育てたの! 毎日教会で掃除とお祈り欠かさないのよ。だから来るたび、ちょっとずつ、ばれないように祝福かけ続けていたのよ。だから、私が育てたのも同然よ!」


 なんと! そんなことをしていたのか! 毎日祝福とは!


「なんだって! ヘルメスのおっさんの祝福とアクアのねーさんが毎日祝福? ずっるいなぁ。俺も祝福してやろう!」

「「やめろ〜!!」」


「なんでだよ。ずっこいな。仲間外れかよ。俺も気にいってんだぜ、あの嬢ちゃん。……えいっ!」

「あぁぁぁぁぁぁ〜〜〜」


 バッカスが勝手に祝福を飛ばすと、アクアが叫んだ。


「私の水の加護が……」

「儂のは風だな」

「俺のは火だ。燃えるようなスピリッツは火に例えられるからな」


「火! 水と相性悪すぎじゃない! こうなったら、エイッ」

「「何をした⁉」」


「私の持つ補助の祝福、光の祝福を与えたわ! 光は癒やし。水は命を癒やすものよ」


「2つもか! なら俺も! えいっ! 酒は闇を好む、眠りと毒の祝福を」

「やめて〜 また打ち消し合うじゃないの!!!」


 楽しいのう。では儂もやるか。えいっ!


「おっさんまで。何を送った?」


「おお、儂は土。風は海、土は陸じゃ」

「おっさんの自分で打ち消しあってるじゃん!」

「忘れておった。はっはっはっ」


 おかしいのう。楽しいのう。一晩中3人で騒いだ。




 翌朝、冷静になった我々は、「やっちまった」と、青ざめることとなるのだが、それはまた別のお話。

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