親指の先からあなたへ

日比谷野あやめ

気使い

嫌いを好きだと言うことが

気をつかうことだと思ってた


愚痴や悪口お手のもの

裏と表と二枚舌


大して興味のないものを

無理やり惰性で追いかけて

私もそれが好きなのと

言っても心は上の空


見抜かれないとでも思ってた?

見抜かれないと思ってた。


好きを嫌いだと言うことが

気をつかうことだと思ってた


枕に出来る分厚い本は

ベッドの下の

小さな本棚にしまいましょ


時計やポットや赤い薔薇

子供部屋の

小さなおもちゃ箱にしまいましょ


これでいい?

これでいい。


泣きたくても笑いなさい

馬鹿にされても笑いなさい

空はいつでも日本晴れ

地べたに膝を屈する人々の群れ


頭では分かっても

身体はちぐはぐ動かない


意識をしようとしてるのに

身体の内へ萎んでく


指先から腕

腕から肩

肩から胸へと


子供部屋に残されたのは

糸のなくなったお人形

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