龍神

 ある村の話。

 その村には龍神が祀られていた。

 池には青銅製の龍が安置されており、村人たちは毎日、その像に水をかけた。

 水をかけるのは、ただの水瓶ではなかった。古に神より授かったとされる神聖なものであった。

 夏場など、池の水かさが減ると、村人たちは近くの水場から水を汲んで、龍神の怒りを招かないようにした。

 龍神をおろそかにすると罰が当たり、大雨もしくは日照りに悩まされると、村人たちは信じていた。


 月日が流れると、その村も近代化の波に襲われ、「迷信」を信じる者は減った。

 水瓶は盗まれ、ある好事家の手に渡った。

 結果、その村は雨期は大雨に、乾季は日照りに悩まされるようになり、廃れた。


 そして、現代。

 過疎化の一途をたどっていた村は、村おこしのために、業者を誘致して、大規模な太陽光発電施設をつくった。森林は伐採され、黒い板がどこまでも、どこまでも並んだ。

 その結末は哀れなもので、施設が完成した直後に、記録を超える大雨が降り、施設は完全に破壊され、洪水で村も甚大な被害を受けた。

 そのため、村人は全員、村を去った。

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