あなたの姿
影山 みはつ
第1話 遠くに
少し歩いて行くと、渡良瀬橋が姿を見せた。
小さな川に何羽もカモメが集っていた。
道沿いに北川商店があり、すいとんや雑煮を食べる人でごった返していた。
川は綺麗で夕日に照らされるたびに、キラキラと光っていた。
その先を歩いて行くと、雑貨屋さんのウサギ食堂と、魚屋さんが見えた。
雑貨屋は、ウサギの看板でOPENと書かれていて、ガラス張りで綺麗な店内であった。
そのウサギ食堂の店員さんが「いらっしゃいませ。ごゆっくりご覧くださいませ」と丁寧にお辞儀をして出迎えてくれた。
有加が「あぁ、これ綺麗。このヘアピンを下さい」と目を輝かせて見ていた。
店員が来て「これですね?かしこまりました。三百五十円です」と有加に声を掛けた。
有加が楽しそうに走って行く中、店員さんが「ありがとうございました。またのお越しをお待ちしています」とお辞儀をしていた。
有加はご機嫌よく「こうえんばし」と書かれた橋を渡って行った。
直樹が「おい。この遊具は俺が先に捕ったんだぞ。お前は俺が遊び終わってから遊べよな」と忠告をした。
有加は「ちぇ、何であいつに横取りされなきゃならないの?どうして私も遊んじゃいけないの?」と直接、直樹に楯突いた。
直樹は、有加の悔しそうな顔を見ては喜んで居た。
直樹につるんでいる友浩が「へ、全くお前みたいなのがうろちょろして居ると一番ウザイ」と睨んでいた。
有加は「分かったわよ。じゃ、帰る」とつまらなそうな顔をして帰って行った。
夕暮れの川の隅をやっと一人で歩くくらいの道を歩いて行った。
反対側の道には、有加と同じくらいの小さな子が歩いて居た。
川は船があって、客で混んでいた昼間より夕方になると、客層は減って来ていた。
有加が「ただいま。帰ったよ」と家の玄関を開けると、アカリが「あら、お帰り。今日は公園から帰るのが早かったのね」と有加を見ていた。
有加は「だって、隣の家の直樹君が、遊具を貸してくれないんだもん」と嫌な顔をした。
アカリが「そう、仕方ないわね。遊具は一個しかないしね?」と食器を片付けながら話を聞いていた。
有加は「何でお母さんは、そんなに普通で居られるの?もっと心配してくれるものだと思って居たのに」と大きな声で反抗した。
有加は一人、自分の部屋のベッドへと移動した。
父親のタカヒロが来て、「ただいま。今家に帰って来たけど、もう有加は寝たのか?」とアカリに尋ねた。
アカリが「そうみたいね?は~、疲れたわ。有加は公園の遊具で遊びたかったみたいで、直樹君に遊具を捕られて怒って居たみたいなの。私はもう大人だし、有加の気持ちが良く分からないから困っちゃった」とタカヒロに話をした。
タカヒロが「そうだな?有加もちょっと大きくなって自我が芽生えて居るから、本当に大変なのはこれからさ」とアカリを励ました。
アカリが「そうね?ありがとう。タカヒロさん」とタカヒロにお礼を言って束の間の夜の晩酌をタカヒロと楽しんでいた。
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