リベレーター・呪われた元生贄と偽りの希望
モッフン
希絶の反転編
第1話・始まりの事件、送り主不明の依頼書
「今回も不発に終わったかハハ……」
漁港の街ピオスに構える便利屋の事務所内で私ノエル・イルセリアはある手がかりを探すも成果はなく、今日も同僚であり親友のエイミーの前で机に突っ伏していた。
「そんな落ちこまないで、記憶と家族の件を解決する方法という実体のないものを探してるんだから簡単じゃないことは百も承知でしょ?」
「わかってる。 わかってはいるけどさ、さすがに手がかり探し始めて5年だよ? 焦るよ」
「そうねぇ、本当に覚えてないの? 生贄に出された日のこと」
生贄の塔の前に立っていた日から記憶を辿ってみる。
いつものように友達と遊んでてその後父さんと母さんそろって夕飯食べて次の日……なにがあったっけ?。
「やっぱり外にいたとこからの記憶しかないや」
7年前、私は生贄に出されたことに加え呪いにかかった。
けどその記憶はない……というのも気がついた時には生贄の塔の近くにいてそれに関する記憶は一切ない。
加えてなぜか私が近寄ると父さんと母さんが衰弱するのだけどこれについてもなぜかわからないしなんなのこれ?。
ただ、50年に一度20歳未満の若者が村から選別されるということは村の学び舎で聞いたから当事者の私も知ってはいた。
「確かめるために階段登っても入り口に戻っちゃうんでしょ? そりゃ確かに呪いね」
「ほんともうどうしろと……」
うんざりしながら溜め息と共にネガティブオーラを放出するもエイミーのポジティブで見事なまでに相殺された。
「それを解決するために便利屋を食いぶちに選んだんでしょ?」
故郷のオブリヴからこの街に移住して2年間職を探してみたけど普通の仕事じゃ私の望みは叶わないと思い5年前にこの便利屋、ハート・ユナイティスで依頼を受けつつ記憶と呪いを解くための手がかりを探すことにした。
諦めたくない、あの日の記憶を取り戻して家族のとこに帰ることを。
エイミーの言葉に私はニカって笑いながらいつものノリで返した。
「まぁねっ」
「それだけ元気あるんなら、次行けるわよね?」
キョトンとする私を余所に聞こえる距離にいる店長にエイミーが大声で呼びかける。
「てーんちょー、ギルバート店長聞こえるー?」
「あのだねエイミー君、聖都の騎士団の訓練場より狭いこの事務所で聞こえないと思うかい? 今度はどうしたのかね?」
「今度はって、毎回あたしが変な言動してるみたいじゃないの。
次の依頼ある? 手掛かりなくてノエルがね」
あ、ありがとエイミー、持つべきはやっぱりマブダチだよ。
親友の背に隠れて潤んだ眼を拭っていると「そうだなぁ」と店長が引き出しを漁る。
「今ある依頼だと……どれも街のお手伝いに留まるか」
「マジかぁ……って店長いつも思うけどすごいデスクの散らかり様ね」
「店長としての忙しさという奴さ」
「忙しいのは尻拭いしてるルーシーでしょうっが」
「違いないな、ハッハッハ」
おぉエイミーいつもながらキレッキレなツッコみ……なんて呆気に取られてると外からノックのような音が響いた。
「うわ、ビックリした。 なんだってのよ」
「いや、私にも……とにかく見に行こ」
外に出て周りを見渡したけど特に変わった様子はない。 イタズラだったのかな?
踵を返し事務所に戻ろうとするとなにかに気付いたのか、エイミーから声がかかり思わず振り向く
「待って」
「どしたの、というよりその包みなに?」
「そこに落ちてた。 手紙かな……見てもらいましょ」
事務所に戻り封書を開くなり店長はいつになく真剣な顔つきで首を傾げていた。
どうしたのか尋ねると私達の前で手にした紙面を広げた。
「結論から言うがこれは依頼書だ。 それも結構厄介な」
「えっと、ロカム村民衰弱……店長これどういうことですか?」
依頼書にはただ箇条書きで『ロカム村、農地が痩せ、村民謎の衰弱 解決を求む』とだけ記されていた。
どういうことかと頭を巡らそうとするも新たな問題が見つかる。
「依頼内容もだけどこれも見てよ。 これ、誰が出したの?」
差出人の項目を見ると無記載、やっぱりイタズラ?
その懸念は店長も持ってたのか依頼書をたたもうとする。
「受けていいものなのだろうか、明らかに怪しいぞ」
「愉快犯のようにも思えるけど、ここ数日ロカム産の作物が入ってないのも事実よね」
「そうかもしれんが、過去にウソの依頼で損失出かけたことをエイミー君も忘れたわけじゃないだろう?」
こういう仕事をしてるとイタズラや愉快犯により依頼書の場所に行っても人がいない、それだけならまだマシで違法な物品を担がれそうになったことが過去にあったらしい。 それが原因か、お人好しの店長でさえ依頼を受けるか渋っていた。
店長の気持ちもわかる。 物品を運んだり討伐なら下手したら法に触れる。
けど人命救助ならウソだとしても私達が損をするだけ、それにもしこれが本当だったのなら……。
「店長、行かせてください。 もしこれが事実だとしてロカムのみんなになにかあったら、助けられなかったらきっと後悔すると思うんです」
「あたしもこれに関しては賛成よ。 仮にウソだったとしてもみんな無事で済むならそれに越したことはないわ」
「君たちがそこまでそういうのなら……わかった、今一度信じてみようと思う。
だが気をつけなさい。 何があるかもしれないから一応ルーシー君にも連絡は入れておく」
「了解。 ノエル、いつものあれ頼むわね」
「任せてっ」
呼びかけに応え、意識を集中するとペンダントから霊素がエイミーに流れ込む。
店長はその横で不思議と言わんばかりの表情を浮かべていた。
「しかし不思議だな、霊素は他人に分配できないものだろう?」
「身体が拒絶反応起こすから血液と同じ感じね。
おまけに弓の速度も上がる気がするけど、ペンダントのおかげとか?」
「どうなんだろ、息をするようにやってる感じだからよくわかんないや」
霊素を分け準備を終えると急いで街の門を出る。
ロカムまで街道を南東に進むなら馬車でも6時間、村の人達が本当に衰弱してしまってるのなら日没までには辿り着きたい。
間に合うかどうかの焦燥を抱え走っていると分かれ道の街道側から馬車が引き返してくるのが見え私は思わず商人の男性に声をかける。
「あの、どうされました?」
「いやぁ、それがこの先で落石が起こってね、今日はどうにもならないからピオスで一晩明かしてから聖都へ帰ることになったんだよ」
一礼お礼を言って馬車を見送り終えて私はどうすべきかエイミーに提案する。
村のみんなが苦しんでるのにウダウダしていられない。
「どうにか落盤歩いて進むの、無理かな?」
「無謀過ぎるわ。 崩れた足場を走って進むなんてそれだけでもバランスを崩してケガする危険性があるってのにもし魔物まで現れたら」
「けどそれじゃ村のみんなが……」
どうにかしたい、その気持ちは同じみたいでエイミーは苦肉の策と言わんばかりに唇を噛みしめながら分かれ道の反対側を指さした。
「気は進まないけど、ここを通りましょ」
「フォレジアの、森……」
魔物が棲みつき今や聖都指定危険区域に認定されてる危険な森、そこに踏み入ることは死を意味する。 たとえそうだとしても……。
「下手したらあたしもノエルも今日が命日かもだけどそれでも、進む?」
「聞く必要ある? 助けられる可能性があるならそこに賭けるだけ」
「決まりね。 それじゃ行きましょ」
私達は覚悟を決め鬱蒼とした茂みの奥へ足を進めた。
国の兵はもちろん、騎士団も避けると言われるほどの危険が潜む森に。
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