02_1匹の蟻

 最近の話題と言えば政治家の汚職だろう。毎日のようにニュースで取り上げられ、批判の的となっている。「記憶にございません。」、もうそれはフリのようなもので私は怒りよりもその阿呆らしさに安堵する。

 国を動かす政治家でさえ阿呆だと感じられると、ちっぽけで何の取り柄もない私の失敗、戯言なんて足下の蟻と同じ、裏を返せば成功しても、多くの人に尊敬されても、私は1匹の蟻でしかないということだ。1匹の蟻が死んだとしても社会は機能し、そこにいたという存在さえ忘れられていく。

 一人暮らしをしていると無駄に内面について思案することが多くなる。ふとした瞬間にコールタールのような、抜け出せない深い闇へと沈んでいってしまう。私は蟻ですらないのだ。

 だが、孤独を紛らわせる私なりの巣がある、SNSだ。写真や絵を投稿し、配信者にお金を投げ、顔も知らない人と会話をする。私の父世代ではスナック、ディスコだった人との交流の場が、人肌に触れずとも無償で交流が出来るデジタルへと変わった。

 ただ、その依存性と、また孤独感を拭うことはできない。一時の余暇であり、終わってしまえばその後、交流することもない。蟻の巣よりも複雑にからみあうネットワークは人同士の交流を増やしているが、浅く薄い関係で終わってしまう。

 なんと私は幸せで呪われた時代に生まれてきたのだろう。こんな不安を待つ毎日はいつまで続くのか。これからが見えない。

 私は布団にくるまりながらスマホをとりだした。

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