第12話 金樹の女王
里長の元へと向かう二人組の足取りが重い。まぁ、仕方ないことだろう。自分を助けてくれた人物が規模的には実質小さな国の長の娘だったのだから。
優花に対して小さな村に暮らす娘程度の認識だった二人はここまでの道中で王国の事情に関してかなりの機密を話してしまっている。王妃の件や、それに伴って起きている王宮内、というか貴族たちの派閥のごたつき。
万が一里長が帝国の目をそらすために王国の情報を帝国や他の国に売ったりした場合、非常にまずい自体になりかねない。
優花の立場的にも実力的にも、何らかの手段で口止め、ということも不可能だろう。この閉鎖空間ではお金の意味もなく、そもそも持ち合わせもない。
言葉や武器での脅しも立場的にも実力的にも圧倒的強者と思われる優花には効果は薄い。できても話すなよ!絶対話すなよ!と念押しするだけである。自分たちでまいた種なのだが、なかなか頭の痛い話であった。あと、先の年増扱いも今後の関係に地味に影響しそうで怖いのだ。
場所がここでなければ頭を抱えてそうな気難しい顔をする二人に、内心を察したのか優花が苦笑いをしながら話し出す。
「大丈夫ですよ。あなた達から聞いた情報は悪用しません。なんなら、制約魔法をかけていただいても構いません。命の危機がある場合を除き、喋れなくなるとか。」
「いいのか、、、いや、いいのですか?」
「私に対しては口調ももとのままで構いませんよ。言葉遣いで不敬だなんだと騒ぐようならここの兵士たちは今この場にいません。」
そう言って兵士たちを見渡す優花。釣られて二人も見渡すと、二人に向かって兵士たちからいい笑顔とサムズアップが飛んできた。随分とアットホームな職場のようだ。
そんなこんなしていたら、巨大な樹の門の前までたどり着いた。門前にいる兵たちは優花たちの顔を確認すると、門を開けだす。重厚な見た目の門だが、その重さは見た目ほどではないらしい。
あっさりと開けられると、そこは広い空洞になっていた。どうも巨大な樹のうろになっているようだ。意外にも明るいドームの中に、巨大な半円の机。天井には根か枝に包まれた光を発する水晶が吊り下げられている。
そんな空間の中央には、二人のダークエルフが居た。一人はまだ幼さを残す顔立ちで、釣り目の女の子だ。輝くばかりの金髪のショートヘアーに、眼鏡をかけている。
もう一人の女性は、金髪の長髪な女性だ。見る人を惹きつける不敵な笑みを浮かべ、こちらを見ている。髪の長さや目元に違いこそあれ、とても似通った顔立ちをしている。おそらく親子だろう。
優花に促された一行が椅子の前までたどり着くと、立ちっぱなしだった長髪の女性がようやく口を開いた。
「ようこそ、金樹の里へ。私は里を取りまとめているアイリスだ。こっちはメリア。ついでにそこのユーカと、メリアの母親でもある。よろしくたのむ。」
「メリアです。」
堂々とした口調のアイリスと、不愛想な感じのメリア。続いてそれぞれが自己紹介を済ませる。侍従が持ってきた水を口に含むとアイリスはいきなり今回の核心について話し出した。
「ユーカからの伝令である程度は聞いている。なんでも、そっちの王妃の病を治せば帝国に働きかけてくれるとか?ずいぶんとありがたい話だ。互いの報酬と、ユーカの学園の話も含めてこの場で取り決めてもいいか?とりあえず、すでに王妃に使う薬草は準備をさせている。」
「感謝いたします。是非、この場での話し合いでお願いしたく。…しかし、本当によろしいのですかな?ユーカ様はこの里でも重要な人物のはず。1年も見知らぬものに預けるというのは。それに、、、こういっては何ですが、すでに絶滅したと思われていた、しかもこれだけ美しい方が表舞台に現れた時、我ら人族の中で礼を失する行いに出るものがいないと到底思えませぬ。」
「問題ない。ユーカは里の中で最上位の戦士だ。直接的な手出しは自衛できるさ。貴族たちの手出しに関しては、貴方たちがどうにかしてくれるだろう?」
「無論、そちらに関しては任せていただきたい。全力でお守りいたします。」
「よろしく頼む。こちらでできることは特にないし、こちらよりそちらの方で手続きがいるだろう。少し早くなるがユーカは王妃の薬草と一緒にそちらへ行ってもらう形でいいか?ユーカ。」
「!!ありがとう、お母さん。」
なぜか急にお礼を言う優花に不思議なものを見る目が向けられるが、特に理由が明かされることなく話が戻って進んでゆく。
王国勢とのすり合わせが終わったころ、ずっと難しい顔をしていたメリアが口を開いた。
「ねぇ。やっぱり里長になる気はないの?私より、アンタの方がずっと向いてるわ。戦闘も、カリスマも、これからのこの里にはあんたが必要。だから出ていかないで、この里で「よせ。それは以前の会合で決まっただろう。」、、、はい。すみません。」
「悪いな。お前の考えもわかるが、そろそろ変えねばならんのだ。」
「…はい。」
「娘が申し訳ない。里の運営体制を変えている最中でな。なかなかうまくいっていない部分が多く、この子も難儀しているのだ。」
メリアの話を遮ったアイリスは、優花と二人組に向かってそう説明する。
「さて、そろそろここで話せることもないかな。二人とも、薬草とユーカ、それからその周りの準備が終わるまでゆっくりしていってくれ。今、里の民たちにあなたたちと優花の事を通達させる。宿は無いからユーカの家の隣にある空き家を至急整えよう。そこを好きに使ってくれ。では、また会おう。」
アメリアはそういうと、メリアを伴ってさっさと出て行ってしまった。
残された三人は入れ違いでやってきた侍従につられて宮殿を後にするのだった。
※
すみません。体調が悪すぎて1本しか終わりませんでした。
来週こそ、遅れた分を戻しますのでお待ちください。
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