ざまあ無双、アラカン親爺、母親を助けたくてダンジョンに潜るが、聖女系人気配信者を助けて現世で人生やり直し。

克全

第1話:裏切られた聖女系配信者を助ける:アラキヤストモ視点

20XX年4月1日:伏見神社ダンジョン42階:荒木保知55歳視点


「キャアアアアア!」


 絹を裂くような女性の悲鳴が聞こえて来た。

 いや、表現が悪いな、天上の調べのような美しい音が耳についた。

 ダンジョンで聞く悲鳴は、もっと汚い音ばかりなので、妙に気になった。


「バカ野郎、それでも聖女か、もっとしっかりバリアを張りやがれ!」


 できるだけ早く、『瞬足』で天上の調べと悪魔の怒声が聞こえた所まで行く。

 その気になれば一瞬で1kmは移動できる。

 12人の冒険者がはぐれビッグオークと戦っている。


「深雪さん、言葉は悪いが、武蔵の言う事は間違っていない」


 心の汚さを隠せていない笑顔を浮かべて、見た目だけは良い若者が言っている。

 配信しているから本性を隠そうと笑顔を浮かべているのだろうが、醜い。

 見ているだけだった心の醜い若者が、仲間が弱らせたビッグオークに止めを刺す。


「そうよ、聖女の貴女がバリアに手を抜いたら、みんなが迷惑するのよ」


 また見た目だけは良い女が、邪悪な目つきで笑顔を浮かべながら言う。

 言葉つきは優しく言い聞かせるようにしているが、性格の悪さが声色に出ている。


「この階層のモンスターが相手ではバリアが通用しないと言いました!」


 言い負かされる、かよわい女の子と思ったが違うようだ。

 毅然とした態度と声色から、心の強さと清らかさが分かる。


「じゃかましいわ、グタグタ言わずに受け取った金の分働け!

 このダンジョンアタックで、リョウくんが最深記録を塗り替えるんだよ」


 見た目だけ厳つい、ぜんぜんオーラのない大男がおかしなことを言う。

 ああ、そうか、俺が伏見神社ダンジョン事務所に行っていないから非公認なんだ。

 公式では42階層が伏見ダンジョンの最深記録なんだ。


「そうよ、貴女もその為に集められたのは分かっていますよね?」


 クソ女がていねいな話し方をしているが、心の邪悪さが声色に滲み出ている。

 目つきも、レッドキングアナコンダのように冷酷だ。


「そうだ、リョウくんの事務所から大金を受けとったんだ、その分働けや!」


 偉そうな態度で女の子を威嚇しているが、大したオーラじゃない。

 こいつよりも、黙っている連中の方が強いオーラを放っている。

 とは言っても、とても42階を生きて帰れるオーラじゃない。


「お金は受け取りましたが、命の危険のない階層までの契約です!」


 なるほど、名誉が欲しい芸能人が、事務所の金で人を集めたのか。

 だが、41階と42階ではモンスターの強さが信じられないくらい違う。

 5や10のきりの良い階でもないのに、とんでもなく強くなっている。


「「「「「ブッモォー!」」」」」


「悠長に話している場合じゃないぞ!」


 金で雇われたであろう、12人のサポーターの中でも1番強い奴が言う。

 確かに、このメンバーでは3頭でも厳しい所に、21頭のビッグオークだ。

 まず間違いなく皆殺しにされるだろう。


 顔だけが良い若者が、心の清らかな女の子以外に目で合図をした。

 嫌な予感がしたが、その通りだった。


 グッワッシャーン!


 見掛け倒しの大男が、心の清らかな女の子のドローンを破壊する。

 ダンジョン内で犯罪が起こらないように、1人1台以上のドローンを同行させる事が義務付けられている。


 顔だけが良い若者、リョウくんと呼ばれた男が、自分達のドローンを壊さないという事は、記録を隠蔽する権力があるのだな。


「キャッ!」


 見掛け倒しの大男が、心の清らから女の子の膝裏を棍棒で砕きやがった!

 それだけじゃなく、女の子の周囲に首を斬った呪鶏を大量に放り出した。

 女の子と呪鶏を囮にして逃げる気だ!


「「「「「ブッモォー!」」」」」


 大好物の呪鶏と人間の女を前にして、ビッグオークが激しく興奮している。

 このままでは正視に耐えない事になってしまう。

 人と関わるのは嫌だが、見殺しにすると不完全な良心が痛む。


 瞬足や剛力のスキルを使うまでもない。

 身体に魔力やオーラを流して身体強化する必要もない。

 素の状態でも瞬く間に斬り殺せる!


 首を刎ねた21頭のビッグオークが、噴水のように鮮血をまき散らしている。

 だが、倒れる方向に気を付けたから、女の子には1滴の血もかからない。

 女の子には悪いが、この斃し方が1番ドロップ確率が高い。


「大丈夫かい?」


 ★★★★★★


 139:なんちゃって賢者

 あ、ドローンを壊しやがった!


 141:シッタカ

 げっ、女の子の膝を叩きつぶしやがった!


 141:銀仮面

 あの糞野郎ども、女の子を囮にして逃げやがった!


 142:お天道様

 さらせ、この動画をさらせ、今直ぐ拡散してさらすんだ!


 143:ザマア好き

 知り合いに警察の偉い人がいるから、今直ぐ連絡するわ!


 144:シッタカ

 あいつら、どこかで見た顔だぞ。


 145:なんちゃって賢者

 親が元事務次官のアイドルだよ。


 146:銀仮面

 親と事務所の権力でもみ消すんじゃないか?


 147:お天道様

 そんな事は絶対に許されん!


 148:ザマア好き

 復讐よ、みんなで動画をさらしてもみ消せないようにするのよ!


 149:シッタカ

 だけどよ、自分の命がかかっているから、緊急避難じゃね?


 150:お天道様

 緊急避難であろうと、誰かを囮にして自分達だけ助かろうとするのは許せん!


 151:ザマア好き

 そうよ、絶対に許されないわ、復讐するのよ!


 152:銀仮面

 なあ、知り合いの警察官、元事務次官や巨大芸能事務所を相手にできるのか?


 153:ザマア好き

 分からないわ、でも、絶対に復讐すべきよ!


 154:なんちゃって賢者

 とりあえず通報だけはしておいて、何か復讐できる方法を考えないか?


 155:お天道様

 さらすんだ、全ての知り合いを使って、あいつらの悪行を広めるんだ!


 156:ザマア好き

 そうよ、復讐よ、目には目を歯には歯をよ!


 157:シッタカ

 目には目を歯には歯をなら、モンスターをけしかけるべき?


 158:ザマア好き

 そうよ、それよ、あいつらにもビッグオークをけしかけるのよ、復讐よ!


 159:なんちゃって賢者

 ダメだ、ああいう連中は、自分のやった事はもみ消して訴えてくるぞ!


 158:ザマア好き

 そんな事分かっているわよ、でも許せないの、復讐よ!


★★★★★★


もしよければフォローなどお願いします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る