苦戦からの覚醒勝利に憧れて綿密な計算の元演出するも美少女にバレて弱みを握られてる~ドエム美少女がお仕置きを貰うために俺を追い詰めてくるんですけど~
ぐうのすけ
第1話
昔からヒーローが好きだった。
ヒーローと言っても苦戦もせず圧勝するヒーローに魅力は感じない。
最初は敵に打ちのめされ、負けそうになった所で力が覚醒し敵を打ち倒す、その展開が好きだ。
ゲームでも、漫画でも、アニメでも、何ならロボットアニメでもいい。
俺は昔から、苦戦からの逆転勝利に憧れていた。
パソコンの動画を眺める。
鉄仮面を付けた主人公がトカゲの着ぐるみを来た敵に打ちのめされる。
そして吹き飛ばされた。
『ぐはあああああああ! くう、まだ、まだあ!』
『くっくっく、鉄仮面ライドよ、もうあきらめろ。お前には無理だ、貴様はあのお方どころかこの俺の足元にも及ばないではないか』
主人公がふらふらと立ち上がる。
『どうした? 震えているなあ! 怖いのだろう? 恐ろしいのだろう? 貴様はただの臆病者だ! 貴様のような臆病者にこの俺を倒せるわけが無い』
『く! 俺はあ!』
『貴様は気持ちで負けている。戦う前から負けているのだ』
俺はピーンときた。
数々の作品を見続けてきた俺の勘が囁いてくる。
前回失敗した2段階目の変身が始まる。
ゾクゾクゾクゾク!
負けそうになってからの覚醒勝利、最高の展開だ。
鉄仮面ライドは分かっている。
これこれ、この展開だよ。
伝統の2段階変身をここに持って来る!
お膳立ては整っている。
ここでやる、必ず!
『そうだよ、俺は弱いよ。もう一度変身して強くならないと勝てないって分かってる。でも二重に変身するのが怖いんだ』
過去に主人公は2段階目の変身に2回失敗して負傷した。
だが、来る。
これ絶対くる展開!
『貴様のような臆病者は怯えながら死んでいくがいい』
『ああ、臆病者だ、どうしようもなく弱い。だからこそ俺はあ! 今より強くならなきゃいけないんだあああああああ!!』
キュイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!
効果音と共に変身シーンが入り、主人公は更なる変身を遂げた。
きたきたきたきたあああああああああああああああ!!
『ば、ばかな! あの方と同じ力を、そんなはずはない! うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお』
トカゲの着ぐるみが全力で殴り掛かるが主人公はまるで子供を相手にするように腕でパンチの軌道をずらし、反対側の腕でワンインチパンチを叩きこんだ。
『ぐぼおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!』
トカゲが大げさに後ろに下がる。
トカゲが諦めず飛び掛かるが主人公は何度も攻撃を躱し、そして軌道をずらして最小限の動きで攻撃を叩きこむ。
主人公の連続パンチの後大振りの右ストレートが決まった。
『ぐはああああああああああああああああああああああ!』
『はあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!』
主人公がポーズを取るとオーラのようなエフェクトが現れ剣が現れる。
最初から武器を使えよとかそういう事を突っ込みを入れてはいけない。
今ここは最高のシチュエーションなのだ。
『鉄仮面、ブレイド!!』
バシュン!
『ぐああああああああああああああああああああああああああああ!』
チュドーン!
トカゲが謎の爆発と共に消えた。
「はあ、はあ、はあ、はあ、出来た、俺は、出来たんだ!!」
間が長すぎる。
俺はまたピンときた。
ガキョンガキョンガキョンガキョン!
このメカっぽい足音は、奴が来る。
足音だけでライバルが来る事が分かった。
銀色のタイツと銀色の鉄仮面を付けたライバルが現れた。
「ヒサシブリダナ」
「お、おまえはああ!」
ギュインギュインギィインギュイイイイイイイイイイイイン!
盛り上がるギターの音と共にエンディングが始まった。
今回も最高だった。
子供向けとはいえ侮れない面白さだ。
苦戦してから勝つ、これこそが最高に盛り上がる。
そして勝ったと思えばさらに強い敵との対峙、多分次の話では数分戦ってお互い撤退の流れだとは思う。
それが見えていても最高だ。
動画を堪能した俺は母さんに頼まれていたお使いに向かう。
買い物を終えると俺に向かってトラックが突っ込んできた。
それを華麗に回避した。
ラノベならここでトラックにひかれて転生するが現実なら死んで終わりだ。
ラノベではなんでみんなトラックにひかれて転生するんだろうな?
俺は体を鍛えている。
いつどこに逆転からの勝利チャンスがあるか分からない。
逆転勝利を演出するには強くなくてはいけない。
不良が出てきたら苦戦するフリをして体力を温存する必要がある。
苦戦するためにはプロレスと同じで避けずに攻撃を受ける必要があるのだ。
現実は厳しい。
逆転勝利を演出するには圧倒的な強さで演出しなければならない。
あ、卵が割れてしまった。
命が助かっただけでもラッキーだと思うべきだろう。
トラックの人は大丈夫かな?
俺は横転したトラックに視線を送った。
……あれ? トラックが浮いている?
なんで浮いてるんだ?
おかしいぞ?
ボカーン!
トラックが爆発すると中からクマが出てきた。
そしてクマの体が大きくなっていく。
左右の瞳が赤と青に光っている。
「な、なん、だ? なん、なんだ?」
逃げようとした瞬間にクマが雄たけびをあげた。
「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
「く、来るなあああああああ!」
走って逃げる。
だがクマは俺に向かって走ってくる!
俺は、クマにひかれた。
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