第43話 信じた私がバカでした

「ルージュ、今日は久しぶりに4人でお昼を食べましょう」


急にそんな事を言いだしたのは、セレーナだ。


「でも、ヴァイオレット様は?」


ヴァイオレットの方を見ると、なぜか気まずそうな顔をして、その場を去って行ったのだ。一体どうしたのだろう。


「ねえ、ヴァイオレット様と何かあったの?」


「いいえ、別に何もないわ…」


そう濁されてしまった。もしかしたら、3人に元気がなかった件に、ヴァイオレットが関係しているのかしら?そういえばセレーナが私に話しかけてきた時“ヴァイオレット様の事なんだけれど”と言っていた気がした。


やっぱり3人とヴァイオレットの間で、何かあったのだろう。でも、なんだか聞きにくい空気だし…


もしかしたらミシェルが何か知っているかしら?でも、ミシェルに聞くのもねぇ…


う~ん…


なんだかモヤモヤした気持ちのまま、家に帰って来た。あの子たちの間に、一体何があったのだろう。気になって仕方がない。そもそもヴァイオレットは、1度目の生の時、私を殺した女だ。もしかしたら3人にも、何か酷い事をしたのかもしれない。


明日3人にそれとなく聞いてみようかしら?でも、あの子たちから話してくれるのを待つべき?


う~ん…


「ルージュ、難しい顔をしてどうしたのだい?」


「グレイソン様、今日はもう騎士団から帰って来たのですか?」


「もうって…今はもう午後7時だよ。そろそろ晩御飯の時間だから、呼びに来たのだよ」


「まあ、そんな時間なのですね。食堂に参りましょう」


私ったら、時間が経つのも忘れて、ずっと考え事をしていたのね。本当に何をやっているのだか…


「ルージュ、もしかしてセレーナ嬢達の事で悩んでいるのかい?それとも、ヴァイオレット嬢の事かい?」


「その両方共です。今日、なぜかセレーナが4人で昼食を食べたいと言い出して。ヴァイオレット様も、気まずそうにどこかに行ってしまわれましたし。一体何が起こったのかと…」


「そうだね、まあ、ちょっと色々とあったみたいだよ。ただ僕が1つ言える事は、ヴァイオレット嬢にはもう関わらない方がいいと思う。詳しくは明日にでも、4人に聞いてみたらいいよ」


4人?

もしかして、ミシェルも入っているのかしら?でも、ミシェルは特に様子がおかしかったところなんてなかったわ。


それにしてもグレイソン様、何かを知っている素振りだったわね。ここで考えていても仕方がない。明日皆に聞いてみよう。


そして翌日


いつもの様にグレイソン様と一緒に、学院へと向かった。教室に入ると、なぜかヴァイオレットが泣いていた。そしてその周りに、沢山の人が集まっている。その瞬間、なんだか嫌な予感がしたのだ。


固まる私に対し、グレイソン様はすぐにヴィオレットの元に駆け寄っていく。


「一体何の騒ぎだい?」


「それが、ヴァイオレット嬢の教科書やノートが酷い事になっていて…」


そう言って令息がヴァイオレットの教科書とノートを、グレイソン様に見せている。その教科書とノートはナイフの様な物で切り刻まれているうえ“消えろ。うざい”などと言った文字が書かれていた。


「酷い…一体誰がこんな事を。すぐに先生を呼んで…」


「一体何の騒ぎですか?」


ちょうどそのタイミングで、先生がやって来たのだ。どうやら誰かが呼びに行っていた様だ。その瞬間、ヴァイオレットと目が合った。そしてニヤリと笑ったのだ。


その笑みを見た瞬間、一気に体が凍り付くのを感じる。あの顔…1度目の生の時に、いつも私に見せていた顔だわ…やっぱりあの女は、何も変わっていなかったのだ。


「先生、見て下さい。私の教科書とノートが…」


ポロポロと涙を流すあの女。きっと私のせいにされる!そう思ったのだが…


「一体誰がこんな酷い事を?」


「私にもわかりませんわ。私はずっと、皆と仲良くしたいと必死に振舞っていたのに…」


そう言ってポロポロと涙を流しているのだ。あれ?私のせいにされないの?そう思った時だった。


「先生、昨日の放課後、ルージュ嬢の専属メイドが、教室からすごい勢いで出ていくのを見ました」


「それなら、僕も見ました」


なぜか2人の令息が、そんな事を言いだしたのだ。


この人たち、何を言っているの?


「ちょっと、何の騒ぎなのですか?」


「一体何が起こったのだい?」


セレーナ達4人とクリストファー殿下がやって来たのだ。4人が私の元に駆け寄ってきてくれた。


「実はヴァイオレット嬢の教科書やノートが破られ、落書きされるという事件が起きたのだよ。それで、目撃情報として、ルージュ嬢の専属メイドが昨日、教室から出ていく姿を見たという者が数名現れてね」


「そんな、ルージュが犯人だと言いたいの?いい加減にして!あなた、ルージュの事を嫌っていたわよね。だからルージュを犯人に仕立て上げようとしたのでしょう?」


怖い顔で、セレーナがヴァイオレットに言い寄っている。後ろでは3人が、同じく怖い顔で睨んでいた。


「待って下さい。私はルージュ様が犯人だなんて考えておりませんわ。ただ…目撃情報がありまして…」


ヴァイオレットが令息たちを見つけた。

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