第34話 平和な日々に感謝です

王宮主催のお茶会に参加した翌日。すっかり元気になった私は、朝からしっかりと朝食を頂いた。


「ルージュ、すっかり元気になった様ね。でも、朝から食べすぎは良くないわよ」


「ええ、分かっておりますわ。ただ、ご飯が美味しくて」


この1ヶ月、食欲もなく辛い時間を過ごしていたのだ。でも、お茶会も終わり、思ったよりも何とかなりそうだと思ったのだ。


「ルージュ、元気になってよかったね。僕のお肉もあげるよ。なんだかルージュ、やつれてしまったから、ずっと心配していたのだよ」


「グレイソン様は、今日も騎士団で稽古を行うのでしょう?お腹が空いては、力も出ませんわ。どうか沢山食べて下さい。私はお替りをしますから」


頼めばいくらでもお料理を出してくれるのだ。ただ…


「ルージュ、食べすぎよ。いい加減にしなさい」


お母様に怒られてしまった。食後グレイソン様とお父様を見送った後、ソファに横になる。どうやら本当に食べ過ぎた様だ。お腹が苦しくて動く気がしない。


でも、こうやって好きなだけ食事をして、昼間から横になれるだんて、本当に幸せね。1度目の生の時は、今頃私は殿下の婚約者に内定していた。立派な王妃になって、殿下を支えたいという思いから、見た目も意識し、あまりお菓子も食べない様にしていたのよね。


寝る間も惜しんで勉強をして…本当に私、頑張り屋だったわ。それなのにあの仕打ち!思い出しただけで、腹が立つ。ただ、腹を立てても仕方がない。今ある幸せを存分に楽しまないと。


「お嬢様、セレーナ様、メアリー様、マリーヌ様、ミシェル様がお見えになっておりますわ」


「まあ、4人が来てくれたの?すぐに行くわ」


きっと昨日の件を心配して、様子を見に来てくれたのだろう。


重たいお腹を抱えながら、客間へと向かった。


「皆、来てくれたの?嬉しいわ」


「ルージュ、よかった。元気そうね。昨日のお茶会で、なんだか気になって様子を見に来たの。でも、不要な心配だったみたいで安心したわ」


「昨日は色々と、見苦しい姿を見せてしまってごめんね。せっかく来てくれたのだから、ゆっくりしていって。すぐにお茶を準備するわね。と言っても私、朝ご飯を食べすぎて、お腹がパンパンなのだけれどね」


「もう、ルージュは何をやっているのよ。でもあなた、以前会った時よりも随分痩せていたから心配していたのよ。グレイソン様もかなり心配していたと、アルフレッド様が言っていたし」


「確かにルージュは痩せたわよね。ねえ、クリストファーに何かされた?もしそうなら、私がクリストファーに文句を言ってあげるわよ」


「ありがとう、セレーナ。特に何かをされたわけではないのだけれど、何というかちょっと苦手なタイプだなって思っただけよ」


「確かにあいつ、何を考えているか分からないところあるものね。もし何かあったら、私に言って」


「ええ、頼りにしているわ。さあ、お茶にしましょう。お菓子も沢山あるわよ。それよりもセレーナ、カラッソ王国のバレル殿下とはどうなの?あなた達、遠距離恋愛でしょう?大丈夫?」


「ええ、ルージュが私のお誕生日にくれたテレビ電話のお陰で、毎日バレル様と連絡を取り合っているわ。まさか顔を見て話が出来る機械があるだなんて」


「たまたまお父様が、他国に貿易に行った時に買ってきただけよ。でも、あなた達の役に立てて本当によかったわ」


「マリーヌもアルフレッド様と婚約を結んだし。私も素敵な殿方が現れないかしら?」


「あら、メアリーはセレーナの弟君のセロス様といい感じと聞いたわよ。メアリーは可愛いのだから、積極的にアプローチしないと」


「ルージュの言う通りよ。セロスもメアリーの事を気にしているみたいだし。それにしても、ルージュは本当によく見ているわよね。まさかメアリーが、セロスに興味があるだなんて気が付かなかったわ」


「本当よね、私、誰にも言っていなかったのに…でも、ルージュが色々と動いてくれたお陰で、今度セロス様と街にお出掛けに行く事になったの」


「ちょっと、そんな話、姉の私は知らないわよ。セロスったら、何も言わないのですもの」


「そりゃそうよ、姉に自分の恋愛を知られたくないものなのよ」


「もしかして、2人がデートできるように裏で手を回したのも、ルージュなの?あなたって子は本当に!」


「ちょっと、人聞きの悪い事を言わないでよ。私はただ、いつものお節介の癖が出ただけよ」


そう、私はとてもお節介なのだ。友人たちが困っていたり悩んでいたりしたら、じっとなんてしていられない。時に迷惑かもしれないと考える事もあるが、つい体が動いてしまうのだ。


「あら、私はルージュのお節介のお陰で、あなた達と友達になれたのよ。ほら、私の家はかつてスパイの家と呼ばれ、皆から一線を置かれていたでしょう?そんな私にお笑顔で話しかけてきてくれたのが、ルージュだったの。ルージュのお陰で、セレーナ、メアリー、マリーヌとも仲良くなれたのだもの」


「言われてみれば、ルージュのお節介のお陰で、私たちも助けたことも多々あるものね。ルージュ、これからもお節介でいてね」


そう言って皆が笑っている。ただ…


「もう、お節介でいてねと言われると、なんだか複雑じゃない。ただ、これからもこんな私と、お友達でいてくれるかしら?」


「もちろんよ。貴族学院に入ってからも、ずっと一緒にいましょうね。もちろん、大人になってからも。ずっとずっと私たちは親友よ」


ずっとずっと親友か…


1度目の生の時は、貴族学院在院中に命を落とした。きっと彼女たちは、物凄く悲しんでくれたのだろう。そう考えると、胸が痛む。


今度の生では、絶対に私も皆と一緒に幸せになりたい。皆と一緒に学院を卒院し、その後も同じ貴族として支え合って生きていきたい。


その為にも、これから始まる貴族学院での生活を、何とか乗り切らないと!

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