第15話 久しぶりに友人に会いました
グレイソン様の手を握り馬車を降りようとしたのだが、なぜか座ったまま動こうとしない。
「グレイソン様?」
「ごめん、僕、やっぱり…」
小刻みに震えるグレイソン様をギュッと抱きしめた。
「大丈夫ですわ、きっと大丈夫。私がずっとずっと傍にいますから。でも、どうしても無理なら、このまま帰りましょうか?」
優しく語り掛ける。すると…
「僕、お茶会に参加するよ。いつまでも逃げていてはいけないから」
まだ不安そうな顔をしているが、それでもイスから立ち上がり馬車から降りたのだ。彼にとってはかなりの勇気がいっただろう。勇気を振り絞り馬車から降り、会場へと向かおうとしているグレイソン様を、私が支えたい。
もしどうしても無理そうなら、早々に切り上げよう。そう決め、会場へと向かった。
「グレイソン様、今日の会場は、私の友人、マリーヌの家のお茶会ですから、もし万が一帰りたくなったらすぐに教えてくださいね。無理をする必要はありませんから」
そう、今日のお茶会は、私の親友の1人、ファリアン侯爵家主催のお茶会なのだ。ちなみにマリーヌのお父様は騎士団長で、婚約者は公爵令息のアルフレッド様だ…て、まだ2人は婚約していないのか…
「今日の会場は、ルージュのお友達の家が主催しているのだね。ありがとう、ルージュ。もしどうしても無理だったら、その時はその…」
「分かっておりますわ。無理ならすぐに帰りましょうね」
そう伝え、中庭へと向かった。懐かしいわ、マリーヌの家は森をイメージした中庭なのよね。上手く木々を取り入れた、自然豊かな中庭なのだ。
「「「「ルージュ!」」」」
この声は!
「マリーヌ、それにセレーナ、メアリー、ミシェル。会いたかったわ。本当に久しぶりね。皆元気そうでよかったわ。でも、やっぱり皆、幼いわね」
彼女たちは私の幼い時からの大親友なのだ。大好きな友人たちに会った喜びから、つい彼女たちに抱き着いてしまった。
「ルージュ、一体どうしたの?確かに最近会っていなかったけれど、そんなに熱烈に歓迎されるだなんて」
「本当ね、変なルージュ」
そう言って友人たちが笑っている。私ったらつい興奮してしまったわ。でも、皆元気そうでよかった。
「ごめんね、何でもないのよ。それよりも、私の大切な家族を紹介するわね。私のお義兄様のグレイソン様よ」
「あなたがグレイソン様ね。あなたの事は知っていますわ。ご両親がお亡くなりになって叔父様のお家に引き取られたとお伺いしておりましたが。全く社交の場に姿を現さないので、心配しておりましたの」
「クザイ様の話では、グレイソン様は両親を亡くしたショックで、ほとんど屋敷から出ないと聞いておりましたが」
ああ、それは真っ赤な嘘よ。グレイソン様、ガブディオン侯爵家で酷い扱いを受けていたの。そう言いたいが、言える訳がない。おっといけない、急に令嬢たちに囲まれて固まっているグレイソン様のフォローをしないと。
「グレイソン様、彼女たちは私の幼い頃からの親友ですわ。右から公爵令嬢のセレーナ、同じく公爵令嬢のメアリー、そして侯爵令嬢のミシェル、最後が主催者でもあるマリーヌですわ」
グレイソン様に彼女たちを紹介した。
「あの…僕はグレイソン・ヴァレスティナです。どうぞよろしくお願いします」
がちがちに固まっていたが、何とか挨拶をするグレイソン様。そんな彼を、私の友人たちが温かいまなざしを送っている。
「グレイソン様、ルージュ、お節介を焼いていない?この子、すぐにお節介を焼くのよ」
「そうそう、私もルージュのお陰で、アルフレッド様と仲良くなれたの」
「私も悩んでいる時、ルージュに背中を押してもらったのよ。私達はいつもルージュのお節介に助けられているの」
「本当にルージュは、人の世話を焼くのが好きだものね。でも、私はそんなルージュが大好きよ」
「私もよ」
「もちろん私もよ。ルージュは私達の大切な親友だもの」
「もう、皆。やめてよ。でも、とても嬉しいわ。私もあなた達が大好きよ。ずっとずっと一緒にいたい」
やっぱり彼女たちといると、心が落ち着く。クリストファー様があの女にうつつを抜かして悲しんでいた時、私を支えてくれたのも彼女たちだった。クリストファー様の従姉弟でもあるセレーナに至っては、クリストファー様に抗議してくれたのよね。
本当に有難かった。でもそのせいで、彼女たちまで酷い目に合っていたら…そう考えると、心配でたまらなくなるのだ。
「あの…ルージュは本当にお友達に恵まれているのだね。僕がこんな事を言うのは変かもしれないが、どうかこれからもルージュと仲良くしてあげて欲しい」
よろしくお願いします!と言わんばかりに、グレイソン様が頭を下げたのだ。
「もちろんですわ。ルージュとはずっとずっとお友達です。あの、グレイソン様もルージュの事が…いいえ、何でもありませんわ」
オホホホホと言わんばかりに、セレーナが扇子で口元を隠している。
その時だった。
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