第7話 私は何がしたいのでしょう…
「それではグレイソン様、どうか今日はゆっくり休んでください。おやすみなさい」
「ああ、おやすみ。その…ルージュ」
少し恥ずかしそうに私の名前を呼ぶグレイソン様。どうやら少し私に心を開いてくれた様だ…て、だから私は、彼と仲良くするつもり何てないのよ。この人と仲良くなって、万が一あの女に目を付けられたら…
ヴァイオレットのニヤリと笑った顔を思い出し、寒気がした。1度目の生で、あの女がかかわった人間には極力関わりたくない、それにやっぱり、私たちが殺された原因を作ったグレイソン様とは、どうしても距離を置きたいのだ。あの人の行いのせいで、お父様とお母様は!
思い出したら胸が苦しくなった。とにかく私は、グレイソン様には必要最低限の関わりにとどめておきたい。
そう思っているのに。
どうしてもお節介を焼いてしまうのだ。
部屋に戻ると、自分の行いを酷く反省する。あぁ、本当に私は、一体何がしたいのだろう…
「お嬢様、どうされたのですか?ベッドに倒れ込んで。お休みになられたいのでしたら、湯あみを済ませてしまいましょう」
「ええ…そうね。だらしない姿を見せてしまってごめんなさい」
私はこれでも公爵令嬢だ。いつどんな時も、凛としていないと!1度目の生の時も立派な王妃様になれる様に、いつも気を引き締めて生きてきた。
でも、それも結構窮屈だったのよね。あんなに必死に王妃教育を受けて来たのに、結局理不尽に殺されたし。2度目の生では、公爵令嬢の品格を保ちながらも、気を抜くところは抜いていこう。
どんなに気品あふれる令嬢と言われても、結局殺されたら意味がない。目立たたない様に、ひっそり生きよう。またあの女に目を付けられたら大変だものね。
明日からは、グレイソン様とは必要最低限の関わりに留めておこう。ただ、貴族学院に入学したら、一応彼を見張っておかないといけない。1度目の生の時みたいに、あの女に目を付けられたら大変だ。
急いで湯あみを済ませ、フカフカのベッドに入る。やっぱりベッドは最高だわ。もう二度と、あんな薄暗くて気持ちの悪い地下牢なんかに入れられたくはない。
そんな思いで、眠りについたのだった。
翌日、極力世話を焼かない様に朝食を頂いた。グレイソン様は随分と食事にも慣れてきた様で、1人で黙々と食事をしていた。最初からそうやって、1人で食べればいいのよ。
食後は天気もいいので、1人で中庭を散歩した。太陽の光が本当に気持ちいい。それになんてお花が奇麗なのかしら。あぁ、やっぱり我が家は最高ね。
昼食後は再び中庭に出て、読書をして過ごした。この何でもない日々が、私にとっては幸せでたまらないのだ。ずっとこの幸せが続けばいいのに…
そして翌日、今日も中庭で読書をしていると
「ルージュ、ここにいたのね。ねえ、ルージュ、グレイソン様なのだけれど、ずっと部屋に閉じこもっていて、食事の時くらいしか外に出てこないのよ」
お母様が急に話しかけてきたのだ。
「きっとお部屋が好きなのでしょう?そっとしておいてあげたらいかがですか?」
「それならいいのだけれど…どうやらグレイソン様、ずっと部屋から出るのを禁止されていたらしくて。万が一勝手に部屋から出たら、酷い暴力を受けていた様で…グレイソン様はまだ10歳なのよ。やっぱり外の空気を沢山吸って、元気に体を動かして欲しいと思っているのよ」
「そう思っていらっしゃるなら、お母様がグレイソン様を連れ出したらいかがですか?」
「それが、何度も誘っているのだけれど、私には遠慮している様で。ほら、ルージュはグレイソン様と仲良しでしょう?あなたから誘ってあげて欲しいの」
別に私たちは仲良しではない。それに私はもう、グレイソン様と仲良くしたくはないのだが…
「グレイソン様付きの使用人の話では、いつも悲しそうな顔で窓の外を眺めているそうよ。きっと外に出たいのよ。お可哀そうに…」
悲しそうな顔で外を?
その瞬間、絶望に満ちたグレイソン様の瞳が脳裏に浮かび、胸が一気に苦しくなった。もし本当に外に出たいのだとしたら…
「お願い、ルージュ」
「…分かりましたわ。一度誘ってみます」
「ありがとう、それじゃあ頼んだわよ」
笑顔のお母様に見送られ、グレイソン様の部屋へとやって来た。もう私は、必要以上にグレイソン様に関わらない様に決めていたのに。本当に私は何をしているのかしら?
そう思いながらも、ここまで来て引き返す訳にはいかない。意を決してノックをすると、恐る恐るグレイソン様が出て来た。
「グレイソン様、今日はお天気もいいのでお外に行きましょう」
「でも…勝手に部屋の外に出ると…その…」
どうやら部屋から出てはいけないと思っている様だ。
「ここはもう、あなたの家でもあるのです。大きな顔をして、好きな事をしたらいいのですわ。ほら、行きますわよ」
往生際の悪いグレイソン様の手を握ると、そのまま部屋から連れ出したのだった。
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