深く、深く、散り散りになる

サクイチ

プロローグ

 私は中学二年の夏から人生に絶望していて、それは大学を卒業して社会人になった今でも変わりないのだけれど、なのに自殺を選ばないのは、まだ世界に対して借りがあるからだった。


 色彩を欠いた精神科の待合室で、気の触れた歯のないおじさんに絡まれているときも、べつに何かが変わる予感はしていなかった。しかし私はおじさんに叫ばれ、そして疾風のように彼が現れ、私は突如として機会を得た。世界に恩を返す機会だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る