第12話
十四時十三分 ターミナル内
五十八番ドックから白銀色のアーマードバトルスーツ、クティーガルが太陽の光を受けて輝きながら登場した。
「な、なんだこれ。クティーガルがいるなんて聞いてないぞ」
ドドリアン部隊の一人が言った。
「何ビビってやがる。奴は一人だけだ。しかも武装していない丸腰じゃねえか」
金属と金属がぶつかり合う音が響いた後、ドドリアンの頭があっさり砕け散った。砕いたのはクティーガルの手刀である。
ドックからそれを見ていたステーブが無線機に飛びつき「ハチベイ様。このままでは、そのドドリアンが爆発します」と叫ぶ。
クティーガルは、ドドリアンの腕を掴みそのまま上空に投げ上げる。上空に投げ上げられたドドリアンは、大爆発した。
クティーガルの機動力、パワー、まさに桁違いの強さだ。
「バカモン。一対一でクティーガルに勝てるものか。五人であたれ」
「ハチベイ様、お気をつけください。ドドリアンは、燃費が悪いのでエネルギーを大量に積んでいます。爆発させたら宇宙港に大ダメージを与えます」
ステーブが言った。あたり一帯にいるアーマードバトルスーツに聞こえる無線のチャンネルで。
「バカ。これじゃあ、宇宙港に気を配って戦っているってバレちゃうじゃない」
オウグィンは無線のスイッチを切って言った。
「ありがとうよ。
向こうはこっちを爆発させないように関節を狙ってくるはずだ。抜かるなよ」
ドドリアン部隊の一人が言った。
これで俄然ドドリアン側が戦い易くなった。クティーガルはドドリアンの爆発し辛い細かい部位しか狙えない。ドドリアン側はそれを知っているので、その細かい部位だけを守れば良い。
クティーガルの本来の能力を使えれば、つまり武装解除されていなければ、ドドリアン十機を爆発させることなく倒せただろう、また逆に、ここが宇宙港でなく、ドドリアンをいくら爆発させても構わない状況なら、武装解除されていても全滅させるのは決して難しくないだろう。しかし、現実はこの難局を生み出し、ハチベイを苦しめた。
十四時十三分 三十一番ゲート付近
エムは三十一番ゲートを抜けると、ターミナルビル内の案内図を見つける。そして管制塔までの最短ルートを確認する。そして再び走り出す。
管制塔へ続く通路まで来ると、マッカル人が現れ機関銃を撃つ。
エムは地面を転がり物陰に隠れたが、隠れるまでに兆弾が脇腹に当たる。普通の地球人なら戦闘不能になるダメージを受けてしまう。エムは脇腹に手を当てて血を確かめ、一つ大きく深呼吸した。
マッカル人の銃撃が止まった隙に銃を構える。そしてマッカル人が銃弾を装填し、もう一度構えた時エムが撃つ。弾はマッカル人の額の中心を撃ち抜いた。
十四時十四分 管制室
『リーダー、バンスがやられた。敵は、まっすぐ管制室に向かっている』
警備室から管制室に連絡があった。
「さっきの人間、爆弾で死んでいなかったのか!」
『さっきのとは別人だ。手傷は負っているみたいだが、まだ凄い勢いで走っている』
「そこに近いメンバーは誰かいないか」
『管制室にいるメンバーが一番近い』
ロンは少し考え込む。そして管制室にいるメンバーの内二名を、迎え撃つ作戦を授けて向かわせる。
作戦とは、爆弾を仕掛けた通路に一人がおとりになり誘き寄せ、もう一人がタイミングを計り爆破させる事だった。
十四時十五分 管制室への通路
エムが走っていると、マッカル人が現れて、機関銃を乱射する。エムは慌てて物陰に隠れてやり過ごす。するとエムが反撃する前にマッカル人が逃げ出す。
エムは雑魚に関わっている暇はない。逃げる敵をわざわざ追いかける道理もない。しかしながら、エムが進むべき方向に敵は逃げて行ったのだ。好むと好まざるに関わらず追いかける形になった。
エムは脇腹に手を当てる。服は血が乾いていなかったが、傷口はもう塞がっており、痛みもなかった。回復力が強力なのもエルフの特徴である。その回復力の強いエルフの中においてもエムは強い部類に入る。
すでに完全に回復していた。
エムは、警戒しながらもマッカル人を追いかける。
一方、エムを待ち構えるもう一人のマッカル人は、通路に置かれている鉢植えに爆弾を仕掛け直し、その爆弾専用の起爆リモコンスイッチを持って待ち構える。
仲間のマッカル人が通り過ぎ、エムが通りかかった時に爆発させる手筈になっていた。
そうとは知らず、エムは管制室への通路、つまり罠が待ち受けている場所へと進む。
エムはすぐにおとり役のマッカル人を射程に捉えた。おとりのマッカル人が機関銃を撃って逃げようとした時、エムの銃がマッカル人の肩を撃ち抜いた。それでもマッカル人は逃げようとする。
「逃がすか!」
エムは続けて銃を撃つと、マッカル人の後頭部に命中する。
起爆リモコンスイッチ持つマッカル人は、物陰からおとり役の仲間が殺されたのを見て焦る。エムが爆弾を仕掛けた場所まで来ないかもしれないから。
しかし、エムは管制室への最短ルートを選んで進む。
マッカル人は息を飲み込み、エムが鉢植えに近付くのを待つ。
エムは鉢植えに爆弾が仕掛けられている事に気付かず、徐々に近づいていく。そして、エムは鉢植えのすぐ横を通り過ぎようとした瞬間、マッカル人は起爆リモコンスイッチを入れた。
爆炎はエムをまるまる飲み込んだ。爆発による裂傷、炎による火傷を負ってエムは倒れた。さすがのエルフでも、爆弾の直撃を喰らったのだ。ただじゃ済まない。
起爆スイッチを押したマッカル人は、ロンに電話を入れる。
「地球人を殺したぜ」
『死体を確認しろ』
「へーい」
そう言うと、マッカル人はエムの傍まで近づく。
「これで生きていたら化け物だぜ」
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