第6話二日目午後

 鹿島が艦隊司令部に交渉に再度向かう中、佐々木は鎮守府付属の数十棟の建物を確認した。

 数千人が活動できるように設計された建物群はどれも朽ちてどうにもならない状況だった。

 黒カビ、シロアリ、埃にゴミ、壁には穴が開き、屋根は雨漏りが発生し落ちているところもある。

 床もあちこちが抜け汚れている。

 ここを修繕するだけで数百億の予算が必要だと考えると頭が痛かった。

「ここは解体するしかないな。それに修繕は不可能だろう。建て替えは全部だと300億はかかるか。そんな予算どこから持ってくるか」

 帝国海軍は新型軽空母を建造するため予算をかき集めていた。

 予算は3000億が必要である。

 軍事費は優先して工面されるもののそれでも足りない状況だった。

 世界一の軍隊を目指し帝国陸軍と帝国海軍は軍事費獲得競争を相互に行っていた。

 およそ年30兆の軍事予算は国民の肩に重くのしかかり軍事整理論は常に存在している。

 ところで佐々木提督が今必要だと思っている予算はどのくらいかまとめるとおよそ160億ほどである。

 新司令部を一から設立する建設予算の半分以上である。

 これだけの予算を優秀とはいえ一人の大佐と一人の中尉にかけることは現実的ではない。

 正直言ってこの鎮守府は即刻ゴミを整理して建物を解体し更地にして売地にするべきだろう。

 比較的都市部に近いのでマンション用地ぐらいにはなるかもしれない。

 売値は200億ほどだろうか?

 正直、原状回復だけでそれだけ金が掛かっている段階でどうかと思うがほかに手段もない。

 それにしてもどうにも酷い環境であるかび臭い鎮守府施設を全て調べ終わると夕方になり鹿島が帰ってきた。

「提督さん、予算の方は確保できました」

「ああ、お帰り。今調べたがこの鎮守府はもう駄目だ。今すべての施設を回ってみたが大規模な補修なしにとても使用することはできない。ここはごみを片付けて更地にして売地にするべきだろう。悪いが明日も艦隊司令部に行ってそう報告してほしい。おそらく全部で160億ほど掛かるから売地の売値を200億ほどにしてそれを新型軽空母に充てるべきだろう。わが国には多数の司令部があるから便利ではあるが金が掛かりすぎるこの司令部は放棄するべきだろう。それを伝えてきてほしい」

「そうですか。わかりました。伝えておきます。それで提督さん、艦隊司令部から命令です。今日からこの鎮守府で寝泊まりするようにとのことです。ゴミ屋敷が終わったから可能だろうとのことです。どうしましょうか?」

 困惑している鹿島を見ながら佐々木は頭を抱えた。

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