第4話

 放課後。

 私としろちゃんは教室にいた。

 みんなは帰ったり、部活があったりで教室にはほとんど人が居ない。帰宅部である私達もいつもは帰っている時間だ。

 教室に残っていたのには理由があった。

 私はしろちゃんを眺める。

 彼女は手紙を読んでいた。ついさっき隣のクラスの男の子にラブレターをもらったらしい。

 ――しろちゃんはモテる。

 それは前から知っていた。だからラブレターを貰うことはしょっちゅうあったし、前までは『モテて凄いなぁ……さすがしろちゃん!』くらいにしか思ってなかった。

 でも今はしろちゃんが誰かに好意を向けられるとモヤモヤとする。"誰か"にしろちゃんを取られてしまうんじゃないか……そんなことを考えては不安になってしまう。

「しろ……」

 その不安を消したくて声をかけようとするが、真剣にラブレターを読んでいるしろちゃんの姿を見て言葉は消えていく。

 彼女は難しい顔をして悩んでるようだった。その姿を見てチクリと胸が痛む。

「しろちゃん、その人と付き合うか悩んでるの?」

 聞きたくない……でも聞きたい。そんな矛盾。そして私は結局聞いてしまった。

「いいえ、誰とも付き合う気はないわ」

 その言葉を聞いてホッとする。そっか……付き合う気ないんだ。

 だけど胸の痛みが無くなることはなかった。しろちゃんは『誰とも』と言った。つまりそれは、もし私が告白しても同じ答えが返ってくるということだ。

 この恋は叶わない。そう、気づいてしまった。

「気持ちは嬉しい。でも私はその気持ちに答えられないから。どうしても相手を傷つけてしまう……だからいつもどう断ろうか悩んでしまうの」

 しろちゃんは一見、冷たい印象を受けるから誤解をされやすい。でも本当はきちんと人の事を考えてるし、実際に話してみると冷たい人間じゃないことはよく分かる。

 私はしろちゃんが優しいことを知ってる。だから私が想いを伝えてしまったら、困らせてしまうだろう。

「しろちゃんは恋人作る気はないの?」

 彼女は私から視線を外して照れくさそうに答えた。

「……ええ、恋人はいらない。私はあなたと――柚音といる方が楽しいの」

 そう言われ、嬉しい感情とモヤモヤとした感情がごちゃ混ぜになる。

 モヤモヤした感情の方は見なかったことにした。

 そうじゃないと、きっと私は彼女の傍にいられなくなってしまうから。








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