武本家

@etsuya1973

 朝七時に居間に降りていくと、そこには出勤前の義母が、ソファーに座って、優雅に僕を待っていた。

「創太くん、ごはん食べる?」

 ダイニングテーブルには、ホテルの朝食のような、豪勢な朝食が並んでいた。室内は清潔に保たれ、朝の気持ちのよい光が、燦々と室内を照らしていた。

 その中に僕のような汚らわしい人間が現れたことが、大変申し訳なく思う。

「ありがとうございます。あとで食べます」

 僕は卑屈に笑い、そう答えた。

 食欲――。僕は欲望のありったけを、義母の前では隠していた。本当はひどく腹が減っていたのだが、飯を貪る姿を、義母には見せたくなかった。

 そのくせコソコソと、義母のセクシーな肉体を視姦する。

 まったく我ながら、生きているのが申し訳ないような、どうしようもないクズである。

「そう。わかった……。ねえ、少し、お話ししない?」

 ソファーに座った義母は、ニコニコ顔で、自分の隣を、ぱんぱんと叩く。

 隣に座れという手ぶりだが、とんでもない。色っぽい義母の隣に座るなんて、そんなの、刺激が強すぎる。

 僕は義母の隣には座らず、その向かいのソファーに、腰をおろした。

 義母は嬉しそうな、満面の笑みを浮かべている。

「何か飲む?」

「じゃあ、コーヒーください」

「わかった」

 義母が立ち上がるとき、ブルンッとそのバストが揺れた。そしてあやうく、パンティが見えそうになる。

 いやむしろ、僕はそれを見ようとしていた。僕の股間は、すでに硬くなっていた。

 義母は重いバストとヒップの持ち主だが、フットワークは軽い。小鳥のように飛びまわり、美味しいコーヒーを、僕の前に運んでくれた。

 義母が再び座るタイミングでも、僕はパンチラを見ようとした。しかし、見えそうで見えないギリギリのところで、それは隠されていた。


 四十一歳の義母――武本玲奈は、類い稀なる美貌と色気の持ち主だ。信じられないくらいに若々しくて、まだ三十歳くらいにも見えるくらいだ。

 僕との歳の差は、二十二歳。本当の親子と同じくらいに、歳が離れている。

 そして義母は全力で、僕の〝本当の母親〟になろうとしていた。

 しかし僕の敬語は、なかなか抜けない。義母も他人行儀に、いつまでも僕を、〝君づけ〟で呼んでいる。

 僕は義母を、〝玲奈さん〟と呼んでいる。

 しかし義母は〝玲奈さん〟ではなく、〝おかあさん〟と呼ばれたがっている。しかし、申し訳ないけれど、そうは呼んであげられない。

 義母は本当は、僕にタメ口で喋って欲しいと思っているに違いないのに、それにも応じてあげられない。

 申し訳ない話である。「ごめんなさい」としか言えない。

「どう、小説は、はかどってる?」

 義母は、そう尋ねる。

「ええ、まあ、ぼちぼちですね」

 僕は、そう答える。

 なにが〝ぼちぼち〟だ。今までずっと、エロ動画を観てたくせに。一行も書かず、一行も読まなかったくせに。それも熟女もの、近親相姦もののAVばかりを、ずっと観てたくせに。

 まったく、ポンコツすぎる自分が哀しい。

「でもなんとか二十歳になるまでに、作品を一本、仕上げたいと思ってます」

 つい僕は、格好いいことを言ってしまう。

「そう、それは楽しみだわ。ねえ、作品ができたら、絶対に見せてね…………わたしに」

 本当は〝わたしに〟ではなく、〝おかあさんに〟と、言いたいのだろう。しかし僕に気を使って、そうは言わない。


 僕が義母のことを、〝おかあさん〟と呼んであげられないのには、理由がある。僕は、実の母のことが、いつまでも忘れられずにいるのだ。

 僕が小学五年生のときに、ほかに男を作って、父と離婚することになった母。その母が、僕にとっての、唯一の母である。

 離婚に関しては、仕事ばかりして、母に構ってやれなかった、父のほうが悪い。母は何も悪くない。僕は、自分が母から捨てられたとも、まったく思っていない。

 今でも母は、僕の中の、神聖な場所にいる。その場所には、誰も入ってきてほしくない。義母がいくら僕に親切にしてくれても、彼女が僕の〝母〟になることは、絶対にない。

 そして今もまた、僕の世話を義母に任せっきりにして、呑気に大阪に、長期出張に行っている父が憎い。父は、家には、月に一度くらいしか帰ってこない。

 父はどれだけ仕事が好きなのだろうかと、呆れてしまう。父は浮気をするようなタイプの男ではないが、いつも仕事ばかりである。昔から面倒な子育てや家事は、全部母に任せきりだった。父はそれについては、何も協力しなかった。

 父はそんな人間だったので、母が他の男に走るのも、当然だ。母は全然、悪くない。

 母も本当は、僕を引き取って、僕と一緒に暮らしたかったのだろう。自分の腹を痛めて産んだ、本当の息子である。そう思うのは、当然だ。

 しかし短大を出て、すぐに結婚して、ずっと専業主婦だった母には、経済力がない。そして母の新しい恋人も、あまり金持ちではないのだろう。

 だから泣く泣く、僕を手離した。まったく、可哀想な母である。

 本来は息子の僕が、もっと母を支えてあげるべきだった。しかし僕は中学で虐められて、不登校になってしまい、高校にも進めなかった。なんとか校長のお情けで、中学は卒業扱いにしてもらえたが、結局、中卒の十九歳である。

 つまり僕は、弱くて駄目な人間だということだ。だから母を守ってはあげられなかった。

 僕はあまりにも、ポンコツすぎるのである。


「ほんと、楽しみだわ。ねえ、どういったものを書いてるの?」

 義母は、そう訊ねる。

「どんなのって……そうですね、SFとかファンタジーとかですかね……」

「へえ、面白そう。ねえ、ドラゴンとか出てくるの? わたし、ユニコーンとかドラゴンとか、けっこう好きだな」

 タイトミニの義母が、楽しそうに言う。

 彼女のコミュニケーション能力には、いつも感心してしまう。さすが、優秀な生保レディである。

 義母は本当は、ファンタジーになんて、ひとかけらも興味がないに違いない。なのに、ドラゴンとかユニコーンとか言って、僕と話を合わせてくる。迫真の演技で、ファンタジー好きを、演じている。

 義母は、すごく優秀な人である。母とは大違いで、仕事で高収入を得て、父にはまったく依存していない。彼女は自立した、逞しい女である。

 しかしそれが、鼻につく。この女もまた、仕事人間なのだ。新しい息子との付き合いも、きっと、仕事感覚なのだろう。

 そして僕は、易々と、義母に陥落されてしまっている。いつの間にか、この女と、すっかり仲良くなっている。

 義母との同居が始まり、僕が義母に、冷たい態度で接していたのは、呆れるくらいに、短期間だけであった。僕はすぐに、義母の色仕掛けに魅了され、どうしようもなく、義母との会話を楽しんでしまう。僕はまるで、キャバクラの客のようである。

 あらためて、義母を見る。

 タイトミニ、ノースリーブニット、色っぽい太腿、どでかいバスト、黒のロングヘアー、すらりとした上品な鼻すじ……。女優やグラビアアイドルでも通用しそうな、すごい美人である。

 こういう女に色っぽく迫られて、冷たくあしらえる男はいない。

 きっとそんな調子で、保険の契約も獲得しているのだろう。男の助平心につけこんで、男を手玉に取っているのだろう。


 しかし本当の母親なら、息子に、〝オンナ〟を感じさせたりはしない。息子の股間を、膨らませたりもしない。

 本人は、無自覚なのだろうとは思う。一緒に暮らしていると、義母は、とても真面目な女だということが、よくわかる。

 話を聞くと、高校を卒業してからは、ずっと生保レディ一本で、転職は、一度もしていないらしい。そして、物心ついたときから両親がいなくて、ずっと孤児院で暮らしていたという。

 そんな不幸な環境の中、色気と愛嬌を武器にして、今まで逞しく、生き抜いてきたのだろう。

 美人のわりには、あまり恋愛もしていないようだ。

 若いころからガムシャラに、仕事に励んできたらしい。中学生の時は新聞配達、高校生の時はファミレスで、働いていたらしい。

「私、勤労少女だったのよ」

 義母は以前、そう言っていた。

 まったく、ご立派。たいしたものである。

 それだけの仕事人間なら、さぞかし、あの父と、性格が合うことだろう。

(へっ、ユニコーンとペガサスの違いもわからないくせに……)

 ニコニコ顔の義母を眺めながら、意地悪く、僕はそう思う。

 僕は本当は、SFもファンタジーも、書いていない。僕が書いているのは、エロ小説である。

 しかしそれを、義母に知られるのは恥ずかしい。だからそれを隠す。

 どうやら僕は、二重人格者らしい。生きていることが申し訳なく思っている気弱な自分と、世界中の人間すべてを憎んでいる毒々しい自分がいる。善意の自分と、悪意の自分。

 悪意の自分は、ひどいものである。父や義母を憎み、実母さえも憎んでいる。

 僕はそんな悪意の自分が、大嫌いである。だからなんとか、そんな自分を抹殺したい。しかしどうしても、それはうまくいかない。

 特に、義母を見るたびに、悪意の自分が、膨れあがっていく。

 それは、性欲である。この女を、なんとかしてやりたいと、思ってしまう。そしてギンギンに、ペニスが勃起する。


 この、仕事感覚で、聖なる母の領域に土足で入ってこようとしている、図々しい女に、思い知らせてやりたい。お前なんかが、僕の〝母〟になることは、絶対に無理だと。

 それを思い知らせるために、僕はこの女を、ことさらオンナとして、見ようとしている。それは聖なる母の領域を守りたい僕の、防衛行動なのかもしれない。

 最近は、義母をオカズに、オナニーばかりをしている。だから義母を見るたび、その声を聞くたび、僕の股間は勃起する。

 義母のパンティの匂いも、毎日嗅いでいる。そうしながら、オナニーをしている。

 そのように想像の中で徹底的に義母を汚すことで、絶対に、義母を〝母〟の領域には、入らせまいとしている。

 いい加減、早くそれに気づけといいたい。そして僕の母親になろうという、無駄な努力を、早くやめろといいたい。

 もう僕は、十九歳なのである。今さら新しい母など、受け入れられるわけがない。

 形だけの――戸籍だけの母親で、良いではないか。なぜ、〝心〟まで求めるのか?

 義母は、本物の母親と同じレベルの、〝本当の母親〟になりたいようだが、常識的に考えて、そんなの、絶対に無理である。

 僕がまだ五歳や六歳くらいなら、義理の母親を、本当の母親だと思えるかもしれない。しかし僕は、すでに十九歳なのである。今からアカの他人を、〝本当の母親〟だと思うことなんて、流石に、誰が考えても、絶対に無理である。

 そしてそれを、申し訳なく思っている、善意の僕もいる。その僕は、なんとか義母を、〝本当の母親〟として、受け入れてあげたいと思っている。少なくとも、〝おかあさん〟と呼ぶくらいのことは、してあげたいと思っている。

 義母をオカズにしてオナニーをしていることも、善意の自分は、大変申し訳なく思っている。義母は真面目で、上品な女性なのである。そんな風に、妄想で汚してよい女性ではない。

 でもどうしようもなく、汚してしまうのだ。そしてそんな自分が、嫌になる。嫌で嫌でたまらなくなって、哀しくなる。

 哀しすぎて、生きているのが、申し訳なくなる。こんな、誰の役にも立たないような人間が、のうのうと生きているのが、申し訳なくなる。


 自分に比べ、義母のほうが、何倍、立派な人間だろうか。

 父だって、なんだかんだいって、僕をずっと養ってくれている。僕にお金の不自由はさせず、立派な家にも住まわせてもらえている。

 それだけでも、父も、立派な人間ではないか。

 確かに仕事人間すぎるが、でもそれが、そんなに罪なのか?

 別に、浮気ひとつしているわけでもない。あの父もまた、極めて真面目な人間である。

 そりゃあ、多少見栄っ張りだったり、ちょっと威張っていたりはするが、そのくらいが、はたして罪なのか? あの父を、はたして僕みたいな虫けらが、非難する資格があるのか?

 だったらまず、一人暮らしをすればいい。親離れをすればいい。自分の力で金を稼いで、自立して生きればいい。

 親に文句を言うのは、その後である。

 それがわからないほど、僕は子供ではない。

 要するに、全部僕が悪いのだ。すべて、僕が悪い。僕のような人間が、生まれてきたのがいけないのだ。

 とはいっても、生まれてきてしまったのだから、なんとかして、生き続けなければいけない。誰にも迷惑をかけないことが望ましいが、今は金銭面などで、父や義母に、大変迷惑をかけている。

 本当は、いますぐに家を出たほうがいい。そして土方でもなんでもして、なんでもいいから、働くことだ。

 話はそれからだ。考えるのはそれからだ。

 でも、とはいうものの、僕は、人間が怖いのである。働くということも、怖くてたまらない。

 僕はまだ、中学生の頃に虐められたトラウマから、回復できないでいる。社会に出ると、また虐められるのではないかと思って、怖くてたまらない。

 いったい僕は、どうすればいいのだろう?

 今は身のほど知らずにも、小説家を目指している。そんなの、なれっこないのに、少しでも安心したくて、少しでも仕事をしているフリがしたくて、それで形だけ、小説家を目指している。


 でも、何も書けそうな気がしない。

 唯一書けそうなのは、エロである。だからエロ小説を、少しだけ書いてはいる。しかしいつも途中で挫折してしまい、完成作は、一作も書けていない。基本的には書くよりも、人のエロ小説を読むことのほうが多い。エロ動画も、よく観ている。

 そして、オナニーばかりをしている。

 まさに猿。もはやそれは、人間の生活だとは、到底言えない。

 そんなことを思いながらも、義母に対する、僕の視姦は止まらない。僕の背は、ソファーの背もたれから、ずるずると下がっていく。そしてじっと、義母のその、タイトスカートの中身を、覗こうとしている。

 ハッと我に返り、慌てて義母の表情を伺うと、そこには好意の笑顔しかない。僕の助平心に気づいていながら、すべて受け入れている、女神のような包容力。優しい笑顔が、いつも僕を見ている。

 そしてそれが、僕を恥じいらせる。僕の劣等感を、ますます強める。そしてますます、自分が嫌になる。

「エロとか……」

 僕はぼそりと、白状する。

「ん?」

「いえ、あの……、SFとファンタジーと、あと少しだけ、エロいやつとか……」

「書いてるの?」

「はい、少しだけですけど、たまに……」

「そう……」

「エロ書くとか、軽蔑しますか?」

「軽蔑なんかしないわよ、バカね。男の子なんだから、そういうことに興味を持つのは、普通だと思うわ」

 僕の思い切った告白にも、義母はまったく動じない。

 僕の中で、急に良心がもたげてきて、義母に嘘をつくのが申し訳なくなって、それで正直に白状したのである。

 でも流石に、義母でオナニーしてるとか、陰でこそこそ、義母の下着に悪戯してるとか、さすがに、そこまでは言えない。

 そこまで言うと、もはや善意とは言えない。そんなことまで白状されると、義母もきっと、困るだろう。

 でもエロ小説を書いていることくらいなら、別に白状しても、構わないのではないか? 僕はふいに、そう思ったのだ。

 それは、義母という人間が、あまりにも正直な人なので、あまりにも僕を真っ直ぐに見る女性なので、だから、だからこそ、僕の小さな嘘が、目立って仕方がない。だからどうしても、僕のほうも、なるべく正直にならざるを得ない。


「エロ小説でも、僕が書いたものを、読みたいですか?」

 やれやれ、いつまでこの話を続けるつもりだ? 僕は、義母の困った顔を見たいと思って、そんなことを尋ねている。

「もちろんよ。ぜひ読ませてほしいわ」

 義母はさらりと、そう言ってのける。

 僕のペニスが、痛いくらいに、そそり立っている。もしかして僕は、義母に猥談をしかけて、興奮しようとしてる?

 時刻は朝の七時半に、なろうとしていた。

 義母と僕は、明らかに違う。

 義母にとっては、これから一日がスタートする。そして夜型人間の僕にとっては、これからが、寝る時間だ。

 僕は今までずっと、エロ動画を観続けて、ドロドロの精神状態になっている。かたや義母は起床したばかりで、これから会社にいくという、フレッシュな状態だ。

 その両者の精神状態は、まったく異なっている。

 僕はそれに気づく。

「ごめんなさい、なんか、変なことばかり言っちゃって。真面目な小説も、書こうとはしてるんです。純文学とか、真面目なエンタメ作品とか。でもなかなか書けなくて……。だからついつい、エロに走ってしまうんです。痴漢とか、レイプとか、そんな感じのやつ」

「そう……」

 ああ、余計なこと言った。

〝痴漢とか、レイプとか〟

 とか、言わないほうがよかった。

「まあ、表現は自由だから……」

 義母はさすがに少し、苦笑いを浮かべている。

「近親相姦とか……そんなのとか……」

 ああ、もうやめろ! 僕はもう、自分の口を塞ぎたい。

 義母は、困ったような顔をしている。

「頭おかしいです、ごめんなさい……」

 僕は、だんだん哀しくなってしまい、だんだんと俯いてしまう。

 もう義母の顔を、見てはいられない。僕はすっかり、うなだれてしまう。

 そんな僕の肩を、ポンポンと、義母は叩く。

「さて、じゃあ……、そろそろ会社に行くわね」

 再び、ぽんぽんと、肩を叩かれる。

 そして義母は出かけた。


 僕はずっと、うつむき続けている。

 だんだんと、ムカムカしてくる。

(なんだよ、全部お見通しみたいな顔しやがって……)

 悪意の自分が、顔をもたげる。

(てめえは処女じゃねえくせに……。こちとら、童貞なんでい!)

 へんな逆ギレをする。

 いろいろと白状してしまった自分に、腹が立つ。なんとなく、義母に白状させられてしまったような気にもなる。

(しつこく聞いてくるから、こういうことになるんだよ。こんなの、誰も幸せじゃないっ!)

 あー、やべやべ。

 どんどん気持ちが落ちていく。

 気持ちを切り替えよう。

 こんな時は、一本抜くに限る。

 風呂場の前にいく。そして、義母の、脱ぎたてパンティを探す。

 しかしこの時間帯だと、あるわけがない。すべて洗濯済みである。

 義母は毎朝五時に起きて、衣類などの、洗濯と乾燥を済ませて、全部畳んで、タンスにしまう。部屋中ざっと掃除して、朝ごはんを作る。

 義母はいつも勤勉で、凄いと思う。怠惰な僕とは、大違いだ。

 生命保険会社で、フルタイムの正社員として働いて、夜中に家に帰ってくることも多い。しかし、毎朝ぴったり五時に起き、家事を全部こなしてから、また会社に行くのである。

 すさまじく勤勉な女である。平均睡眠時間は、五時間以下だろう。

 土日祝日も、客とゴルフなどをしている。接待で、ベロンベロンに、酔っ払って帰ってくることも多い。

 まさに仕事人間である。二十四時間三百六十五日、ずっと働いているように見える。


「しょうがねえなあ、ったく」

 脱ぎたてがないなら、洗濯済みのパンティを使わせてもらうしかない。

 タンスの中から一枚失敬して、そのクロッチ部分を嗅ぎながら、一本抜く。

「あー、くそ。やっぱ脱ぎたておパンティのほうがいいなあ」

 ムラムラしてしまう。こんなに四六時中ムラムラしてると、体に悪いのではないかと思う。

 しかし玲奈め、エロい女だ。

「あの女、レイプしても怒らねえんじゃねえかな、へへへ」

 悪い自分が出てしまう。

 僕は、気持ちの浮き沈みが激しく、善と悪の二つの人格が、コロコロと入れ替わる。

 僕は、頭がおかしい――キチガイなのかもしれない。

 でも基本的には、僕は、気の小さい男である。義母をレイプするなんて、そんな大それたことはできない。

 悪戯したパンティも、一センチの狂いもなく、タンスの中の、もとの場所に戻す。

 いつも僕は、完全犯罪だ。絶対にバレないように、悪事を働く。

 僕の生活能力はゼロなので、バレると家を追い出されてしまうような、大きな悪事は働けない。

 やりすぎて、義母が、家から逃げ出してしまうのも困る。

 しかし、歯止めの効かない、ヤバい自分もいる。僕は、性欲が旺盛すぎるのである。

 この凶悪な性欲から義母を守るため、とにかくたくさん、自慰をするしかない。

 それでなんとか、義母を守る。

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