現役主人公の物語Re
加藤大生
チュートリアル
第1話 主人公へ・・・
あなたは、自分が初めて感じた『欲』を覚えていますか?
あいつの物が欲しい?承認欲求が満たされない?・・・いやいや、生まれて最初に感じるのは生理的欲求でしょう、って?
ん〜....そしたら、言葉を変えてみようか。
あなたは、人生で初めての『渇望』を覚えていますか?
あなたが生まれて初めて、欲しくて欲しくてどうしよもなかった欲の種類。
頭で考えるよりも、身体が動くよりも、その更に先に願ったありのままの欲望を。
もし、覚えていたのだとしたら君は『こちら側』かもね?
じゃあ次回もよろしくね〜!
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「もう、お終いにしよう」
男が、震えた声でそう呟く。
その震えは痛みからか、苦しみからか、はたまた別の感情からか。
ーー何を?何を終わらせるんだ?そもそもあんたは誰なんだ?ーー
そうは思っても、言葉にはならなかった。
疑問だらけのこの状況にただ戸惑うだけしかできない。ボロボロになった体で一歩一歩、その男に近づく。今はそれしかできない。
「辛い思いをさせたな、許してくれなんて言わない。お前に...こんな運命背負わせて」
ーー何言ってんだ?・・・運命?何の事だよーー
積み上がる疑問が、足を前へ踏み出す力になっていく。
拙い足取りではあるが、着実に謎の男との距離を縮める。
「ああ....ごめんな」
男が、嗚咽を混じらせてそう言う。
その嗚咽は悲しみからか、苦しみからか、はたまた別の感情からか。
ーー何で泣く?何があったんだ?お前は一体何なんだーー
少し間が開く。
だがすぐに、小さく息を吸い・・・
「・・・さあ、そろそろ時間らしい。こんな姿、見せるつもりはなかったんだけどさ。いけないなぁ、まったく」
涙を拭い明るい声で呟く。視界がぼやけて男の顔はしっかりと認識できないが笑っていることだけは分かる。
「泣きっ面でさよならなんて嫌だからさ。・・・・頑張れよ、俺が認めたんだ。お前ならきっと、いや、絶対できる。・・・じゃあな、俺の相棒!」
ーーは?どう言うことだよ?・・・相棒だって?俺が?何なんだよ⁉︎おいッ!ーー
視界がさらにぼやけていく。五感がほぼ機能していない。何もかもがわからない。が、この空間にいられるのはあと数秒だということは感覚でわかる。
ーーまた何もわからないまま終わってしまう。そんなの嫌だ。同じことを繰り返すのか?俺は⁉︎・・・ダメだ、待ってくれ!ーー
全てが引っかかる。
この男は俺にとって重要な人物であることは確実だ。そして男の言動の一つ一つも、俺の記憶の中で何か紐解けそうな手がかりを纏っている。
ところが無念にも、声は出ない。男の元へ間に合う気もしない。無力を痛感する。
「あ、最後に一言だけ」
聞こえる。
失われた視覚が聴覚を研ぎ澄ませる手助けをしてくれている。
ただただ、その言葉を聞きたくて・・
「ーーーーーーーーーーーーー、ーーーーーー」
確かに聞こえた、そいつの最後の言葉。しかし俺にはその言葉をすぐに理解することはできなかった。
溢れ出る涙。漏れる嗚咽。そして心を包む暖かい、なにか。
それらは後悔からか、絶望からか、はたまた別の感情からか。
ただ一つだけ、確かなことがある。
その言葉は俺に揺るぎない決意を刻ませたということ。それだけでいい。
これから始まる長く、辛く、苦しい戦い。誰かが死ぬ。俺の知らない人も、大切な人も。それがわかっていても避けられないこの戦いは酷く無情なものである。
これに勝てば、全て済む。平和になる。やるしかない。
場面は変わり、焦土の上。
目の前にはこの世のものとは思えないほど神聖で、醜い、異形な姿の怪物。
世界を終わらる、絶対の存在。仲間を皆殺す、憎悪の対象。
今からこの圧倒的邪悪に立ち向かわなければならない。
この世界に唯一生き残った、たった5人の人の手で。
俺は手を胸に当てる。先程起こった『奇跡』を思い出しながら、鼓舞する。
自分を、そして仲間を。
咆哮する。
奮い立つ心を、宝物の熱を糧に。
「いくぜお前らァ‼︎・・・俺たち5人が一緒なら、何にだって負ける気がしねェ‼︎」
「フンっ。そりゃそうよ」
「あったりめぇだぜ‼︎」
「・・・おおー」
「魅せてやろうぜッ!」
世界の命運を賭けた戦いが今、始まったのであった。
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