打ち切り

や劇帖

第1話

(フィクション)




 私の名前は《や》。ソシャゲ『キラメキ★拾魂とおこんソルジャー』略してキラソルの同人愚痴垢。

 年々迷走を続けるキラソル公式と公式を無批判に持ち上げながら別ジャンルへの移動準備を進めるジャンル者への愚痴をツイッター(現エックス)で垂れ流していたら、ある日トラックに轢かれて公式の下っぱ開発者に転生しちゃった。

 これは公式の迷走を止めるチャンス。私は社長室へと向かった。

「何だ君は」

「うるせー!!」私は社長を殴った。

「キラソルというポテンシャルの高いコンテンツをまともに育てようとせずスタッフの私物化で立ち枯れさせる気か!」

「す、すみません!」

 社長は這いつくばって許しを乞い、私はキラソル監査官カンサカンの地位を得た。

 まずは制作会議を強襲する。

「オリキャラ!!」「はべらッ!!」コークスクリューパンチを食らった私物化ライターは螺旋を描きながら壁に衝突し壁尻となった。

 こいつはイベントで名無しモブ女を中堅人気の於弐安おにやすとカプらせてネームドキャラに昇格させ、キャラ設定を組み直すにあたって自分の趣味を詰め込み、その結果メインシナリオに矛盾が生じてしまったと雑誌インタビューで(笑)わらいつきでゲロって炎上した。更に別名義で該当カプの同人誌を出しツイで匂わせをしている。愚痴垢からの凸に対してあれは自分のアカウントではないと釈明していたが私は騙されない。ライターのアマチュア時代の夢小説サイトのカプ傾向とデフォルトネーム(夢子)も一致した。サイト特定の決め手は文体だ。文末「~た。」の後は必ず「~る。」と続く。完全に合致している。

 更にプロデューサーに掌底突しょうていつきを食らわす。「ゲームやれや!!」「あべば!!!!」エアププロデューサーは床にぶつかり大きく跳ねて天井にめり込んだ。

 こいつはゲームをやってない。客からの要望に対する的外れなインタビューからして間違いなくゲームに触っていない。にもかかわらず思いつきでゲーム内容にいっちょかみしてくる。これもインタビューで確認済だ。ちょっとプレイしていれば馬鹿でも分かる悪手をエアプがフィーリングでねじ込んでいるのだ。そのせいでゲームバランスが贔屓キャラの参慈庵さんじあんを中心に歪みきっている(これもインタビューで確認済)。一番人気の肆楽しらくを参慈庵の踏み台にすることで人気を出そうとして大いに滑ったりもした。そういうのは同人でやるから公式は前に出てこないでほしい。

 そして打ち合わせに来ていた社内イラストレーターにアッパーカットを食らわす。「エロ媚びさせるな!!!」「おぶあーーー!!!」イラストレーターは天井にぶつかりそのまま地に倒れ伏した。

 こいつは受け人気の高い伍少将ごしょうしょうをやたらと露出させる。キャラ絵を担当している男性向けの別のソシャゲでも隙あらば乳尻太もも大乱舞の絵をSNSに投稿し男客からのいいねRT(現RP)を稼いでいるが同じノリをキラソルでもやれると思っているのだ。男の膝を出すとかとんでもない話だ。おまけに着物を肩脱ぎさせた。信じられない。男のエロスはチラリズムだというのに。

 私は残ったライターに詰め寄った。「お前がメインライターだ」

 ライターは一時間で初稿を上げた。私は駄目出しをした。

「顔カプに媚びるな!!」

 人気キャラの斬玖郎ざんくろう捌山寺はちやまでらは会話どころか同じ空気を吸ったことすらない世代違いのキャラだ。それなのにアニメオリジナル回の展開を誤読した大手が広めた二次解釈が波及しジャンルの一番手カプになっていた。繰り返すが公式設定では出会うことすらないはずなのだ。それなのにいかにもそれっぽい理屈をつけて設定をねじ曲げている。98(斬郎×はち山寺の略称だ)カプ者にこれ以上“やり方”を学習させるわけにはいかない。

 接点ありの自カプの絡みは通した。なぜなら接点ありだから。

 98の躍進を考えてもやはりゲーム外コンテンツは危険だ。私はアニメ制作会社に向かい、途中の道でトラックに轢かれはかなくなった。雪のちらつき始めた一月半ばの午後のことであった。




滅亡寸前の自ジャンル公式関係者に成り代わってしまった私がコンテンツ私物化する制作者を殲滅しました~絵師はエロ厨脚本カプ厨プロデューサーは糞エアプ~ 完

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