第70話 クイーンとソルジャー
「里長、道は我々が開きます! あなたは先へッ!!!」
賢者の内の4人が大波のようにして襲い掛かるスカルスプリングの壁へと突撃していき、すき間を作った。
「カイ、お前はどうするっ?」
走り出しながらリンデンが聞いてくる。
「もはや当初の作戦は機能していないも同然。ここでスカルスプリングの大群たちを足止めするか、この先で玉砕を覚悟してスカルスプリングの精鋭たちを相手するか……ふたつにひとつだ」
「何をいまさら! 精鋭たちを相手しに行くに決まってんだろ!」
迷いはしない。
どう考えても人数不利である以上、長期戦は不可能。
であれば短期決戦にする必要がある。
そう考えた時、スカルスプリングの大群を足止めすることにほとんど意味はないからだ。
……にしても。
こんな土壇場でもイベント分岐が現れるとは。
もしかしてこのイベント、かなり作り込まれてる重要なヤツだったりするのか?
大群の足止めを選んでいた場合はどうなっていたんだろうか。
気にはなるが、今は考えるべき場合じゃないな。
道を切り開いてくれた賢者たちを置いて、俺たちは駆ける。
レベル40以上の精鋭の賢者たちがさらにカレーバフを使っているのだ。
そう簡単にやられたりはしないハズ。
無事に撤退できることを祈ろう。
大群の壁を抜けた先でもスカルスプリングたちは何体も居て、俺たちはそれらを払いのけつつ先を急ぐ。
その先に洞窟はあった。
幅20メートル、高さは30メートルになるほどの大きさだ。
それがポッカリと暗い口を開けて俺たちに向いている。
「……行くぞッ!」
洞窟内へと入っていく。
中は緩やかな上り坂になっていた。
そして奥へと進むたび、不思議なことに明るさが増していく。
その理由は水晶。
洞窟内に高くそびえ立つ水晶の柱が、洞窟内の天井のどこからか差し込む太陽光を乱反射させているようだった。
「……居やがったな、女王」
先頭を駆けていた里長が足を止める。
俺たちが辿り着いた場所、そこは恐らくはこの洞窟の最奥。
水晶の柱が木々のように立ち並ぶその広大な空間の中央に、体長およそ10メートルになる赤いスカルスプリングが鎮座していた。
そのモンスターNPC名は"スカルスプリング・クイーン Lv90"。
「アレが女王……!」
「気をつけろよカイ、ヤツの周囲を見ろ」
リンデンに言われて目を配ると、女王の側の水晶の柱に青く大きなスカルスプリングが貼り付いてこちらにドクロの目を向けている。
3体だ。
"スカルスプリング・ソルジャー Lv65"。
つまり女王護衛のための精鋭スカルスプリングなのだろう。
「ウッホ……じゃあさっそくヤっちまうか。行くぞオメェら!」
里長が大きく胸を張ってドラミングするやいなや、その体がたちまち膨らんでいく。
「サア、俺の"バルクアップ・ドラミング・ブースト"に揺るぎ、震え、戦慄しろッ! 女王、コレが貴様の耳にする最期のビートだぜッ!」
里長の体はおよそ全長5メートルに達した。
その巨体を駆り、里長は女王目掛けて突進していく。
正面へと"スカルスプリング・ソルジャー"が立ちはだかるが、しかし。
その邪魔は俺たちがさせない。
「リンデンッ!」
「"アレ"だなッ? 任せろッ!」
俺は短剣を正面に構え、リンデンの太い腕に乗る。
そして、
「ウッホゥッ!!!」
ブオン。
衝撃波を生み出す速度で俺はリンデンにブン投げられた。
そして一直線にソルジャーへと向かう。
「喰らえよ、これが
命名は適当。
むしろいま俺が付けた。
でもせっかくなら技名をつけたいじゃんっ!?
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