第89話 元転生冒険者クンと復活の呪文
「なあ、先生。どうしてこの世界には病気を治す魔法がないんだろうな?」
隠れ家的酒場『少年科学倶楽部』にて、執筆中だったボクに、『老師』を名乗る青年が聞いてきた。
ボクは元転生冒険者。
2度の異世界転生を経て、今はエロ小説家をやっている。
職業柄『先生』と呼ばれることもある。
どうして、こんなところで執筆活動をしているかとえば、自宅で執筆していると、訓練場の某受付嬢こと
そして、ボクを無理やり
おかげで最近、
「
『老師』が質問を続ける。
彼もまた別世界から来た転生者、本名はボクも知らない。
この世界にはない魔法を現代知識チートで新たに作り出そうとしている人間だ。
「単に研究されていないだけ、とか?」
「現在の死因の大半が病死なんだよ、研究に着手してないわけがない」
確かにそうかもしれない。
なにせ、死者を蘇生させる呪文があるのだ。
金銭に余裕さえあれば事故死などはなかったことにできる。
「それなら病死しても、
「病死した人間を
「それにね。
「え?」
初めて聞いた。
「本来、この世界での死者蘇生には
「そうなのか!?」
「おかしいと思わないかい? 呪文位階で言えば
生体の欠損すら修復できるのが
そう考えると、死体の損壊しか治せない
「じゃあ、どうして迷宮内の死者だけが
「さてね、それは自分にもわからない。アンクト寺院や迷宮都市を運営している王宮側が何か隠しているのかもね」
迷宮都市運営はアーガイン王宮が担っているというのが世間一般の常識だが、ボクは迷宮側……魔王ダーナ・ウェルも運営に絡んでいると考えている。
陰謀論みたいだが、最近ウワサになっている『裏ボス系男子』とやらも、一枚嚙んでいるかもしれない。
それならば、
魔王級の存在と、魔王すら陰で操る存在ならば、その程度、容易いはずだ。
一つ前の異世界で、邪神と呼ばれる存在と闘った経験がそう告げている。
なぜ迷宮内限定で、
◆◇◆◇
「ね~ね~スペクトくん」
「なんです、魔王様」
「なんで迷宮で死んだ人たちって
「あー、それですね。なぜできるかは、私を含め誰にもわからないんですよ」
「ほへ?」
「迷宮は、現存している
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