確実に奴は天才だと思う。
水鳴諒
【SIDE:A①】好きな作者さんがいる。
ある小説投稿サイトで、何を書いてもランキングに入る投稿者さんがいる。
その作者の名前は、
これがまだ、『なんてつまらないんだろう、面白くない』という作品ならば、名前は記憶にすら残らなかっただろう。きっとファンがついているから、アクセス数も多く、それだけ評価もつきやすいのだろうといった、漠然とした感想を抱いて終わったと思う。
だが、いざ読んでみると、彼の作品……これがとても『面白い』。面白すぎて、読みふけって、充実した読書体験を過ごし、読み終えた時には、満足感でいっぱいになった。常に今の俺は、『次回作はまだかな?』と、毎日彼の投稿を待っている。自分でも書いて投稿するのだが、今となってはそのためというよりも、作者ページをお気に入り登録している彼の新作が表示されないだろうかと、そのために小説原稿サイトにログインして、新着情報を待っている。
元々楪さんの名前を知ったのは、ランキングを見た時だ。
俺の作品はあんまりランキングに入らないのだが、たまたまその作品を投稿した時は、ランキングに入った。そのサイトでは、上位の五作品までは目立つ位置に表示されるのだが、俺は五番目に奇跡的に入った。一番上に、楪さんの名前があった。俺はその次のランキング更新でランキング順位は下がったが、楪さんは三日ぐらい一位だったと思う。
そこから楪さんの作者ページをお気に入りし、全作品を読んだ。全部面白かった。
俺は今年で投稿サイトに投稿を始めて四年になる。来年で五年だ。
SNSも同じ頃から創作アカウントを運用している。
歴は別に短くはない。
だから新しい書き手さんも辞めていく書き手さんもそれなりに出会った。
楪さんの一番古い作品を探したら、半年前だった。めったにランキングを俺は見ないから知らなかったが、活動を記すブログ機能の記事を読んでみたら、全ての作品が一位だったと知った。納得だ。俺ももっと読みたいから、早く投稿して欲しい。
「はぁ……いいなぁ……」
今日も読み返して、俺はニコニコしていた。
楪さんを知って、今日で一ヵ月目くらいだ。
なお俺は、猫と二人暮らしをしていて、天涯孤独の二十八歳。
家族を事故で失い、その遺産で生活している。毎日やることはない。小説を書くのが楽しいので、書いているが、小説を書くこと意外にできる事は何もない。生活能力もほぼないので、ハウスキーパーさんを雇っている。
そんな俺の数少ない交友関係は、それこそSNSだ。SNS廃人である。
書いた報告と読了ツイートをする毎日だ。
すると、通知がきていた。なんだろうかと見てみたら、『楪』という名前の人からフォローされていた。
「……?」
まさかと思って、ホームを見に行ったら、作者ページへのURLがリンクされていて、俺が先程まで読んでいた楪さんご本人だと判明してしまった。
……。
推しに認知されてしまったのだろうか?
SNSやってたのか……!?
等。
色々考え、俺は恐る恐るフォローを返した。
「まぁ……あれだな。SNSは色々な人がやっているし、神とうっかり繋がっちゃう事もあるよな」
ぽつりと呟いてから、俺はその日は眠ることとした。
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