幸せの形は一つではない

藤澤勇樹

第1話 偶然の出会い

小さな町のカフェ「ハッピーデイズ」に4人の男女が偶然、集まっていた。


1人目は、直樹といい30歳の小説家。

長身で、黒縁メガネをかけ、物思いに耽っているようだった。


2人目は、美穂といい28歳の会社員。

小柄で可愛らしい容姿だが、その表情は現実的で冷静だ。


3人目は、健太といい35歳の旅行作家。

日に焼けた肌と無骨な風貌が冒険家らしさを物語っている。


4人目は、絵里子といい27歳の心理カウンセラー。

穏やかな佇まいからは内省的な性格が伺える。


偶然が重なって、同じ時間にカフェを訪れた4人だったが、何気ない会話から「幸せとは何か」という哲学的な議論が始まった。


「幸せの定義なんて、人それぞれだと思うんだ」と小説家の直樹が口を開く。


「でも、結局のところ物質的な豊かさが幸せの基準になるんじゃないかな」と、美穂は、会社員らしく現実的な意見を述べた。


健太は冒険家らしく、「幸せは自分で見つけるものだ。新しい経験や挑戦の中にこそ、幸せがあるんだ」と主張する。


心理カウンセラーの絵里子は、「幸せは内面から湧き上がるものだと思います。自分自身を理解し、受け入れること。それが大切なんです」と、静かに微笑みながら語った。


4人の見解は異なっており、共通の「幸せの定義」など無いということを認識した。


◇◇◇


議論が深まる中、自分の人生で直面している問題を、それぞれが打ち明け始めた。


直樹は、作家としての成功を追い求めるあまり、私生活が疎かになっていることを告白した。


「小説を書くことに夢中で、自分の幸せを見失っているのかもしれない」と、彼は眉を顰めた。


美穂は、安定した職場で働いているものの、毎日の生活に充実感を感じられずにいることを打ち明けた。


「これが本当の幸せなのかしら...」と、彼女はつぶやいた。


健太は、旅を続ける中で、心の拠り所を失っていることを吐露した。


「新しい場所や経験を求め続けているけど、心の満足感はどこにも見つからない」と彼は苦笑した。


絵里子は、他人の幸せを支援する一方で、自分自身の幸せを見出せずにいることを認めた。


「人の心の問題に向き合う毎日で、自分の心に目を向ける余裕がないの」と彼女は静かに語った。


◇◇◇


その後、4人は、それぞれの問題を抱えながら、幸せを求める旅に出ることを決意した。


直樹は、小説家としての活動を一時休止し、自分自身と向き合う時間を作ることにした。


「幸せを書くためには、まず自分が幸せを感じられないとね」と彼は微笑んだ。


美穂は、仕事一辺倒の生活から脱却し、新しい趣味や活動に挑戦してみようと決めた。


「自分の可能性を信じて、新しいことにチャレンジしてみようかな」と彼女は希望に満ちた表情を見せた。


健太は、心の拠り所を見つけるために、旅を続けながらも、ボランティア活動に参加することにした。


「人の役に立つことで、自分の存在意義を見出せるかもしれない」と彼は力強く語った。


絵里子は、心理カウンセラーの仕事を続けながら、自分自身の内面と向き合う時間を大切にすることを誓った。


「自分の心に正直に生きることが、本当の幸せへの第一歩だわ」と彼女は穏やかに微笑んだ。


こうして、4人はそれぞれの幸せを見つけるために旅立った。そんな彼らの背中を、暖かな光が優しく照らしていた。


(続く)

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