閑話休題 ある日のシャワー室にて
場所、研究棟の仮説シャワー室。解呪師チームの詰所の近く。
マルコが更衣室に入って着替えをしていると、シャワー室の奥から、腰にタオルを巻いたビョルンが現れた。
普段はいるはずのないその姿に、一瞬マルコの手が止まる。
マルコ「あれ?ビョルンさん?めずらしいっすねここに来るの」
ビョルン「マルコ君じゃん。ここで会うなんて奇遇だな」
マルコ「そうっすね。今日はどうしたんですか?」
ビョルン「いつもは来ないんだが、今日は鉄を削る作業があってさ。鉄粉が飛び散って髪についちゃったんだよ。それで来たんだ」
マルコ「なるほど。俺達解呪師チームは大体毎日ここのシャワー使ってるんで、違う人がいてちょとおどろきました」
ビョルン「え?! 毎日つかってんの!?」
マルコ「そうなんすよー。ほら、呪詛の現場って、血が飛び散ってたり、場所が廃墟とか、下水道とか普通にあるんで……匂いとかホコリとかついちゃうんですよね。汗もかくし」
ビョルン「うわー大変だな……いつもおつかれさま」
マルコ「仕事なんで。そういうわけで、毎日同じメンバーが使ってます」
ビョルン「ダミアンもつかってんの?」
マルコ「もちろん!でも俺達とは時間ずらして入ってますね」
ビョルン「ダミアンらしいな……」
マルコ「……っていうかビョルンさん、その体の傷すごいっすね……あ、すみません、嫌なら無視して下さい。無神経でした」
ビョルン「ああ、これ?いや、いいんだ。学生のときに実験でやらかしちまって、こうなったんだ。まあ、バカの勲章ってところだな。お陰で毎日思い出して事故をおこさないように気をつけてられるよ」
ビョルン「……マルコ君も、なんか、細かいキズ多いな」
マルコ「いやーこれぐらいなら解呪師なら普通ですよ。俺はまだ少ない方」
ビョルン「へーそうなんだな」
マルコ「前ちらっと見たんですけど、クレヴァンス主任とか俺よりでかい傷ありますよ。普段は隠してますけど」
ビョルン「マルコ君、体も動くから締まってんなー。うっすら腹筋割れてるじゃん。なんかスポーツしてんの?」
マルコ「そうっすね……筋トレは結構してますけど、仕事で必要なので」
マルコ「あとは現場かなー。あと、食べる暇が無いのもあるかも」
ビョルン「あんまり食べない人なのか?腹減らない?」
マルコ「うーん、なんか“今食べなくてもいいかな”って思っちゃうんすよね。光の精霊の加護で、あまり病気しないんで。……実際は、完全にはそうじゃないんすけどね。なので、真似はしない方がいいっすよ」
ビョルン「なるほどなー。最近おやつ食べちまうから、ちょっと参考にする」
マルコがほんの一瞬、口を開きかけて躊躇う。……いや、やっぱり言おう。
マルコ「ていうかビョルンさん、なんか……体毛、けっこう濃いですね。いや、変な意味じゃなくて。俺、何言ってんだ……」
マルコ「……すみません。なんか、筋トレの雑誌に出てくる人みたいで。すげえなって、つい思っちゃいました。」
ビョルン「まあ、体質だから。見た目は濃いな。あと、整えてるけど、正直面倒だよ。おすすめはしない。……マルコ君、薄いのか?」
マルコ「わかる。整えるの面倒っすよね……俺達は規則上、衛生面の関係で、体毛は全部剃るんすよ。治癒師とか病院もみんなそうですよー」
ビョルン「へー。医療関係者ってやっぱ大変なんだな。」
マルコ「……っていうか、たまに思うんすけど、……女性って、体毛濃い人とかどう思うんすかね? たまに気になって……。モテたいってわけじゃないけど」
ビョルン「どうかな。俺の経験上、完全に人によると思う」
マルコ「へぇ……じゃあ、もうちょい濃くなるよう精霊に祈っときますかね。……冗談ですけど」
マルコはタオルを肩にかけたまま、少し笑った。
「……では、ビョルンさん。また。」
シャワー室の扉が閉まる音が、乾いた床に静かに響いた。
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