第4話


内蔵くら御許おもとの侍らざれば、うえのたまはするに、よみける


しのふ草 枕宿らし いつしかと 下萌ゆ今日より いつかに摘まめ


 ◇


「ねーねー、内蔵の御許、知らない?」

「あ……ええと、先程は、すぐ先のお庭にいらっしゃ……った、のかもしれません」

「そ、そうです、前栽のあたりに」

「ええ、日当たりもよろしいですしね。寝っ転がって日向ぼっこなさっている……のかもしれません」

「ええ、ええ。この間など、土を掘ったり草を引っかいたりで、お庭が楽しげでいらっしゃいましたものね」


「それなら朕もしたいなぁ。探してこようかなぁ」


「ああぁ! いえ、それはなりませぬ!」

「はい! 我らが……ええと」


「――上、文章博士もんじょうはかせが参られました。お勉強の時間にござります」

「むー、わかったよー」


(……よ、よかった。ね、どこ行った?)

(とりあえず、ここには置いとけないから、ちょっと、聞こえない遠くの方に)

(……そっか)


(((――お猫様(内蔵の御許)、サカリ付きすぎて落ち着かないんだよなぁ……)))


 ◇


――――

しのふ草:家の軒などに生えるシダ、秋の季語、「忍ぶ(隠れる)」と「偲ぶ(思い慕う)」をかける、また「偲ぶ種(くさ)」をかける

いつしかと:いつのまにか、いつのことか

下萌ゆ:雪や土の下から草の芽が生える、「草」の縁語

摘む:「草」の縁語

●表意→こっそり野宿してたのが、いつのまにか芽吹きの時期になったので、また草を摘みにいくだろう

●裏意→?? 種→萌ゆ→摘むの構造



✽猫派ですか? 犬派ですか?

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