花咲く季節の約束

第一章: 出会いの桜並木

桜の季節は、あっという間に訪れた。美咲が通う高校の近くにある桜並木は、見事に満開となり、多くの人々で賑わっていた。学校帰りに、美咲と亜紀はいつものようにその桜並木を歩いていた。

「今年の桜、本当に綺麗だね。」

美咲が感嘆の声を上げると、亜紀も同意する。

「うん、毎年見てるけど、やっぱり特別な気がする。」

二人は、桜の花びらが舞い落ちる中をゆっくりと歩いていた。そんな中、美咲の目に一人の少年が映った。彼は一人で桜を眺めているようだったが、その表情には何か寂しげなものがあった。

「あの子、なんだか寂しそうね。」

美咲がそう言うと、亜紀も少年の方を見た。

「うん、なんだか気になるね。」

二人は少し躊躇しながらも、少年の方へ近づいていった。

「こんにちは。一人で桜を見てるの？」

美咲が声をかけると、少年は少し驚いた表情で振り向いた。

「あ、はい。なんとなく、ひとりで見たくて。」

少年の名前は秀太という。彼は美咲たちと同じ高校に通う1年生だった。秀太は、桜が好きで、よく一人で見に来ると言った。

「桜、きれいだよね。」

美咲がそう言うと、秀太は少し笑顔を見せた。

「うん、なんか、ほっとするんだ。」

そんな風に話しているうちに、三人は自然と一緒に桜並木を歩くようになった。秀太は普段はあまり人と話すタイプではないようだったが、桜については熱心に語ってくれた。

「秀太くんは、どんなことが好きなの？」

美咲が尋ねると、秀太は少し考えてから答えた。

「うーん、本を読むことかな。あと、音楽を聴くのも好き。」

「へえ、いいね。私たちも色々なことに興味あるよ。」

亜紀が言うと、秀太は少し嬉しそうに笑った。そんなふうにして、美咲、亜紀、秀太の三人は、新しい友情を育み始めていた。

日が暮れてきた頃、美咲はふと思った。

（この出会いも、春の一つの贈り物なのかな。）

桜並木を歩きながら、美咲はそっと秀太と亜紀の顔を見た。二人とも、桜の美しさに見とれている。その姿に、美咲は温かな気持ちに包まれた。

（この瞬間を、ずっと忘れないよ。）

美咲は心の中でそう呟きながら、桜の花びらが舞い落ちる中を、新しい友達と共に歩いていった。