第96話 貴族


「ピッタリね!」

「あぁ、そうだな!ありがとう」

 久しぶりにスーツなんか着たな。

 もう二、三着欲しいな。

「とりあえず真っ白のスーツも作っておいたから、何かの時に着ればいいわ!」

「…白?」

「白亜の城だから、白がいいでしょ?」

「…分かった」

「あっ!そうだこれ見てよ!」

「ん?ミシンか?」

「そう!レアル達が作ってくれたの」

「良かったじゃないか!」

「えへへ」

 そうか、レアルやケイトはこう言うのも作れるんだな。

 

 それから王城に戻り、必要な人材をピックアップしていく、今はいいがそのうち必要になるだろう。

「コックがいるわね。あとは宰相は必ずいるわ」

「…そうだな。その辺の人材確保はノーマに頼むか」

「もうノーマは旅だったでしょ?エンとダラーも寒いのに行ったわね。まぁ、もう冬に入ってるからこれから春までは城から出れないわよ?」

「まぁ街くらいは見に行くよ」

「そうね、ガンツがどれだけ家を作るかで王城に住む人たちが変わるわね」

「子供達は?」

「教会を作ってあるみたいよ、ここは女神と奴隷の神が祀られているわ。そこに子供達と今の所トパーズとアンバー、それにメリッサも行ってるわね」

「そうか、もしきつい様なら王城で見てやってもいいが」

「そうもいかないわよ!あの子達には今から色々覚えてもらわないといけないんだから」

「…はい」

 と王城を歩きながらルビーと会話する。

 王城では奴隷の子達が働いている。

 まだ出来たばかりだからみんな手探りで掃除や洗濯など分担しているみたいだから執事やメイド長なんかもいないとな。

 

 まだ、足りないところだらけなセイクリッドではなんとか冬を越すところから始まりだ。


「いやぁ、寒い寒い!」

 とガヤガヤ入ってきたのはガンツ達。

「…どうだ?」

「ガハハ、流石に寒くなってきたので一時中止ですかね、ある程度は作ったんでみんなは満足してるかと」

「…そうか、ご苦労だったな」

「いえ!とんでもない!俺たちはやれる事ができて幸せですから!」

「…そうか、まぁ、食堂で酒でも飲めよ?」

「ヘイホー!分かりました!行くぞお前ら!」

「「「ヘイホー」」」

 

 それから一ヶ月ほどは寒さが厳しかったがようやく少しは日差しが柔らかくなってきた。

「お前らやるぞ!」

「「「ヘイホー」」」

 ガンツ達も再開し出す。

 すると遠くに金色の光が見える。

「…ハハッ多分キン爺だな」

 結構な団体で来ている。先頭はノーマの様だな。


「やあやあ我こそは!」

「…やぁ、キン爺!ようこそセイクリッドへ」

「ククッ!ワシを呼んでくれて嬉しいぞ!」

「…まだ何もないし色々教えてくれ」

「任せろ!我が来たからには百人力じゃ!」

「俺もいるぞ」

「アシュレイ!国は大丈夫だったか?」

「流石に辞める時にチクリと言われたがな」

「キン爺も言われたんじゃ?」

「ワシはもう歳じゃからの!大丈夫じゃ!」

「そうか、2人とも来てくれて嬉しいよ」

 と2人と握手する。


「人国の王からの手紙だ」

「そ、そうか」

 読んでみると敵対することはないと思うが気をつけろなどと書いてある。まぁ、攻め入ってくることはないだろうな。

「王よ」

「ノーマ、よくやってくれた」

「ありがたき幸せです。あとこの者達を連れて参りました。まずはコックのダイアン、メイド長をしていたスミス、執事をしていたメイスンです。3人とも欠損奴隷で」

「リジェネレーション」

「ウグッ」

「グアッアァァ」

 と苦しそうにしているが、

「う、腕がある!」

「足が動きます!」

 と喜んでいる。


「ノーマ、他にもいるんだろう?」

「はい!今回は欠損奴隷ばかりですが腕に自信のあるものばかりです!」

「分かった」

「な、なにを?」

「欠損奴隷だろ?俺が行く方が早い」

「は、はい!」

 酷い怪我をしているのが何人もいるな。

「リジェネレーション」

「ウグッぁあぁぁぁ!」

「頑張れよ!我慢だ」

「ゔぁぁぁぁぁあぁぁ」

 みんななんでこんなことになっているんだ?足を無くしたり、腕を潰されたりしている。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、」

「あ、ありがとうございます」

「…なぁ、みんなは何故そんな大怪我を負っているんだ?」

「わ、わたしは」

 後ろからコックが口を開く。

「いいよ、続けて」

「わたしは旦那様の嫌いなものを出した様で、急に呼び出され腕を切られて奴隷になりました」

「…た、たったそれだけで?」

「私なんか邪魔だと言われ足を切られて」

 メイド長は悔し涙を流している。

「私は冤罪をなすりつけられ」

 執事は諦めた様に言う。

「全て人国の貴族でございます」

「はぁ、貴族と言うのは必要なのか?」

「とおっしゃると?」

 不思議な顔をしているが日本では貴族なんていないからな。

「役職だけでいいだろ?別に貴族なんて身分は要らない」

「そ、それは」

「いるか?」

「要らないな」

 とアシュレイが言う。

「貴族なんて物は必要ない、俺はそう思う」

「良かった、俺は作る必要がないと思っていたからな」

「ワシらは貴族じゃったがなくても別にかまわんからのぅ」

 キン爺は髭をさすりながら言う。

「では貴族は廃止する!」

「は、はい!」

 

「で?アシュレイはキン爺だけ連れてくると思ったけど」

「こいつらも来たがってな!ほらお前が盗賊を倒して俺らを助けてくれた時の第三師団全員だ」

「やっぱり?見たことあると思ったよ」

「第二師団でも来たがってる奴はいたけどな」

「…ありがたいな」

「それだけ好かれてるんだ!自信を持て!」

「おう!」

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