第51話 名を残す
「パールのこともこれで大丈夫」
「あ、ありがとうございます。ご主人様!」
「ケントでいい」
「はい!ケント様」
と抱きついてくるパール。
そして引っ剥がされる。
「もう!パールに優し過ぎですよ!」
(そうかな?普通に接してるだけだと思うけどな)
「ケント様!聖教国の教皇の使いと言う人が来ております!」
「…通してくれ」
「はい!」
(昨日大司教に会いに行くと話したのにその上の教皇か)
「失礼する、汝がランクS冒険者のケントか?」
「そうだが」
「それではいまから教皇の間に来てもらう」
「大司教と会う約束があるのだが?」
「大司教様もお待ちになっておられる」
「…わかった」
「なお、同行者は1人のみだ」
「…リシェル、頼めるか?」
「はい!」
と言うことで馬車に乗って教皇の待つ城へと入って行く。
「武器は預からせてもらう」
「…」
(まぁ、収納に入ってるしな)
素直に渡して教皇の間に入るとリシェルと同じように頭を下げる。
「楽にして結構、其方がケントか」
「…はい」
「して、大司教に連絡を取ったようだが何用か?」
「はい、私と同じ国から来たものがこちらの牢屋に入っていると聞きまして、会わせてもらえないかと」
「…多分あやつのことか、会ってもいいが牢からは出せぬぞ」
「はい、して何をして捕まったのですか?」
「乱暴を働いた罪じゃ。本来なら奴隷となるはずじゃが奴隷紋がつかなくてな」
「分かりました、会わせていただきたいです」
「よかろう」
兵士に連れられて来たのは牢屋が並んでいるところでその一角に男が項垂れていた。
「おい!お前に面会だ」
「…あ?誰だ?」
「ふぅ、お前もあの事件の被害者か?それとも加害者か?」
「は?なんのことだ?」
「日本でのことだ」
「か、帰れるのか?」
「お前はどう思う?」
「…と言うことは帰れないのか」
「そうだ。で?何故そんなことをした?」
「最初は都合のいい夢だと思った、俺が授かったのは魔法だ。それさえあればこの世界でも生きていけると思ったからな」
あぐらをかいてこちらへ向かうと、
「これから俺はどうなる?」
「…さあな、暴行を働いたのだろう?」
「お、俺は撃たれた被害者だ!夢だと思って好き勝手やってしまったが、反省している!」
「夢ねぇ…」
「う、疑うのかよ!?」
「俺は鑑定が使えるが?」
「な、なら最初から!」
「あぁ、おまえが犯人だろ」
かまかけてみたが当たりかよ。
「くそっ!」
「なんだってあんなことをしたんだ?」
「あ?名前が残ればそれでよかったんだよ!別に後悔はしてない」
「…お前のせいで5人が死んだんだぞ?」
「たった5人?」
「たった?」
「やっぱ手作りじゃダメだったか…もっと」
「…おい」
「あ、なんだよ!お前も死んだんだな?あははは、悪かったな!」
(こいつは人として許せないな)
「教皇様にもう一度会いたいのだが」
「はい、こちらです」
「決闘をしたいと?」
「はい!殺しはしませんので」
「何故だ?」
俺は説明をした。あいつがどうやってここに来たかと、俺がどうやってここに来たかを。
「…よかろう。訓練場を使うといい」
「ありがとうございます」
「我らも見せてもらうぞ?」
「見ても楽しくないですよ?」
「あやつを逃さぬために兵を動かさなければいけないからな」
「申し訳ありません」
「いやいい」
そうして訓練場で相対する。
「ひひっ!いいのかお前?俺なんかとこうしていて?」
「…お前は許さない!死ぬほどの痛みを与えてやる」
「は?!お前がだろ?ファイアーボール!!」
「ファイアーボール」
相手の魔法を相殺してやる。
「く、ウインドカッター」
「ウインドカッター」
相殺するとアクセルを使い近くにより、足を切り裂く。
「うぐぁ!こ、このやろうグッ!」
「少しも反省しないのは死んだ俺らからすると、本当にムカつく」
両腕を刺す。
「グァァアァア」
「これで、おまえは両腕も両足も使えないな」
「こ、殺せよ!」
「嫌だね」
「な!こ、このままなんて」
「這いつくばって生きるんだな」
「ふ、ふざけんな!殺せよ!」
「…嫌だね」
応急処置をされて牢屋へ連れて行かれた。
教皇様にお礼を言い、頭を下げる。
「よい、あれは何かしたのか?」
「俺は別の世界から来た、その時あいつは人を殺しまくっていた」
「そ、そうか、別の世界か」
「そうだ、何かしらないか?」
「すまんな、こちらの世界のことも全て把握してるわけではないのでな」
「そうだよな、感謝する」
「いや、まだこちらにいるのだろう?」
「そこまではいないと思う」
「そうか、旅人であったな」
「…はい」
「良き旅を」
「ありがとう」
城を後にして宿屋に帰る。
セイランに報告すると、
「はぁ、それでいいです」
「…そうか」
「名を残したでしょうが違うやり方があったでしょうに!」
「そうだな」
「まぁ、いまさらですね」
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