離叛
第13話 脱走者
「ヒカル、ちょっと」
「ボビー?」
機械の館は、こないだの事でかなりピリピリしてる。何せ、作業人夫の中に敵対行為をしたと言われても仕方のないギンブル家のスパイがいた訳だし。
僕達
ボビーもわかってるんだろう。
敢えて僕を整備工員が多いトコで呼んだのだから。
「先日の件だよ」
「あの笑い話?」
如月春香に会った事、聞かされた事を、ボビーには話してる。バーンに聞かれると面倒な事になりそうだし、その意味ではエリックさんにも話し辛いんだけど。
「笑え過ぎるからさ。エリックやヤン、ハインツにも教えとこうと思って」
「そうかなぁ」
「絶対さ。まぁ、コイツは
「ならアランさんと、出来ればジミーさんにも教えたいけど」
笑いながら、僕達2人は
メモ書きがある。
「今夜半、情報共有」
英語筆記体の殴り書きに近い。多分アメリカ人でも判読厳しそうな癖字だよ、コレ。
この世界の者じゃ、読めるヤツいないよね。
「こんな落書き置いとくの、誰だよ」
ボビーは手に取ると、細かくビリビリと破り捨てた。
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「そうか。じゃ春香は向こうでやれてる訳だ」
「ジミーさんの紹介だったんですか」
「いや、リザお嬢様だ。元々お嬢様とギンブル家の次男坊が同い年で仲良いんだよ」
「ジミー、ギンブル家にどれだけ技術を流してる?」
「何も。向こうは公表された技術しか知らない筈」
「アラン、それが本当ならば向こうにはまだ、
「持てるも何も、機械の館すらない筈だ。
エリックさん、アラン技師両名の名で
騎士団長バーンは勿論、グランゼル男爵の認可も得てるから、僕達は堂々と機械の館に集まっている。
「だからでしょ?必死にコッチの引き抜きを図ってる訳だよね」
「ドライゼ=グランゼルの野望ねぇ」
魔獣や蛮族の討伐。
今の軍事力保持で、やっと熟せたのは周知の事実。この事を以て「謀叛の意有り」と訴えられてもねぇ。
「この中で、1番男爵に会ってるのはエリックさんだと思うけど。どうなの?そんな野望、持ってる人なの?」
「それを俺に悟られる様じゃ大した領主じゃないなぁ」
僕達にとって「又聞きの風聞」その域を出ない。
「野心はあるだろう。でなきゃ領主なんぞやってられんだろ」
流石に、それを悪と断じる事は馬鹿らしいと思うよ、僕等みたいなガキだって。
「やってもいない事を可能性だけで非難されてもね。もう屁理屈かこじつけとしか思えないけど」
世界征服を企む悪の大魔王とか?
それ、全国統一を図る戦国大名と何が違う?
暴論極論と言われれば、確かにそうだけど。
「まぁ、相手にしない事だな」
エリックさんが軽く言って、それが結論みたいになって。
考え込む人もいたけど、殆ど同じ結論に達してたと、この時は思っていたんだ。
でも…。
後日。
また魔獣討伐に駆り出された
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