第5話 領主との邂逅

 異世界ヴィルセニア。


 その中の大国、大陸のほぼ中央にあるイストリア王国。

 その辺境と言える、リノギス王国との国境附近。ヒカル達を召喚したグランゼル男爵領がある。


 今、僕達は、その領主たるドライゼ=グランゼル男爵と初顔合わせしていた。


「先ずは、此方の都合で召喚してしまった非礼を詫びよう。更に、此方の一方的な要望で騎士にしてしまった事についてもな」


 やや厳つい風貌。

 そこまで歳いってるとは思えないけど、キレイに禿げ上がった頭部のせいで、結構老けて見える。


 確かに全てが一方的。

 とは言え、元々選択肢なんか無い状況。


 ならば、少しでもいい待遇を求めるしかない訳で。

 その意味では、今の境遇はかなりマシだと思う。


「そう言って貰えると、此方も気が楽になる」


 上司としては、かなり良い方なんだろうなぁ。


 顔合わせの後、今度は騎士団とも、って形になるんだけど、異世界人エトランゼだからって、いきなり僕達みたいな軟弱な若者を受け入れてくれるのか、多少心配なトコもあって。


 それに…。

 辺境の男爵にしては、軍備に力を入れ過ぎな気もするんだよなぁ。


 騎団との顔合わせの前の空いた時間。

 僕は、副団長エリックさんに尋ねてみた。


「何せ辺境だからなぁ。出て来る大型魔獣も多いし、国境でのイザコザもあってね。男爵領にしては軍備が充実してるのは、その意味では納得出来る話だと思うよ」


 アラン技師曰く。

「私は研究開発出来ればね。必要とされてる訳だし。実際成果として、国境警備や魔獣討伐に役立ってるのだから。君の不安は、政治的なものかな。そうか、君は日本人だったね。憲法で不戦を唱える程だ。君の目には魔導機マナギレムはキナ臭い軍備シロモノに見える訳だ」


 そこまで、ハッキリとした嫌悪感は無いんだけどね。


 でも、同様の懸念?それを中央って言うか、国王近辺は考えていないんだろうか?


「ここだけの話、あの王じゃなぁ」

 エリックさんは1度会った事があるらしい。

 取って代わりたい、誰しもが思う程の愚王なんだって。


 イストリア王家は、その血統に胡座をかいているだけの存在モノが多く、この3代は愚王が続いてるんだとか。その中でも現国王ブラスト=イストリア6世は古今東西最悪と呼べる愚王らしい。おべっかや追唱で、自分が敬われてると確信してやまない脳天気な王なんだと。


「それじゃ、下剋上は有りえると?」

「その方が、この国はマシになると思うぞ。ここだけの話」


 よっぽどなんだろうなぁ。


 そこから、急展開!

 何でも、国境附近の街に巨大魔獣が近付いてるって警備詰所に連絡があって、僕達が急遽派遣される事になってしまった。


 大型のトラックみたいなヤツに2機ずつ載せて。それが2台分、つまりは4機。


「これは?」

魔導機マナギレム移動用の機動車だ。何せ魔導機マナギレム自身は最大時速15kでしか走れないし、そんな高稼働は30分も持たないからな」


 エリックさんが、僕等に分かりやすい様地球の単位で説明してくれた。

 コッチヴィルセニアではkケットmメット、1時間トルク30分半トルクと言うらしい。


 単位の言い方が違うだけで、実感的には同じなんだとか。何か微妙な異世界だなぁ。

 1日は24時間トルクだし、1週間は7日だし。

 でも、こんな世界のアニメもゲームも知らないし、やった事ないし。

 そこそこオタクの僕が知らないのだから、多分そういう異世界って訳じゃ無いと思う。

 でも、現実問題として、今僕達はココにいる。


「ヤンは、此処に残って。留守番と言うか、拠点警護をお願いしたい。今後とも全機出撃はないからな。お館、機械の館を攻められる訳にはいかないから。まぁ、一応団長バーン殿の『戦士フェーダ』も有る訳なんだが」


 いざ、出撃!

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