第18話

「圓、無事でいて。」


紋が祈るように呟いた。

麗は紋を慰める。


「サワを恨むやつなんか五万といるからなぁ。無事でいれたら奇跡かも。」


巳月は窓の外を見ながら言う。

そうだな。

俺もそう思うよ。


「不吉な事を言わないでくれ巳月君。だがマンションに監禁されてるというのは心配だなぁ。」

「店長!車、もっと急いで!」

「わかった!」


車を1時間程走らせてマンションに到着したが、オートロックで中に入る事ができない。


「どうしたらいいんだ・・・紋ちゃん、サワ君に部屋番号を聞く事はできるかな。」

「わかった。聞いてみます。」


紋はサワにラインをしてみるが、なかなか返事が来ない。

俺らは社内でひたすらサワからの返事を待った。


「来ないな。ラインできない状態なのかな。」

ラインできない状態って、どんな状態よ!」


紋はイライラして巳月にくってかかる。


「落ち着きなよ紋。どうしよう・・・もう少し待つか、違う方法を考えるか・・・」


麗は紋をなだめる。

俺も、どうしたらいいか考えた。

サワがどこの部屋にいるのかわからないと助けようが無い。


そこに、紋のスマホが鳴った。

サワからだった。


「智ってヤツと俺を人違いしてる。

侑里がナントカって訳わかんねえ事言ってる。コイツらなんだ?どういう事?」

「智って・・・藍沢智じゃない?この間コンビニに来てたアイドルの!」


麗が思いついた。


「じゃあ、犯人は藍沢智と関係あるやつで、サワは人違いで誘拐されたって事か。」


巳月が納得した幹事だ。


となると・・・侑里って・・・


「ねえ、侑里って誰だよ。」


紋が言う。


「ねえ、えみかさんの友達じゃないの?コンビニで話してたよね!」


麗は俺を見る。

そうだ。同じ練習生の侑里は、藍沢智と付き合ってる。

そうだ!

智がストーカーにあってると言ってた!


「そうだ!智はストーカーにあってると侑里が言ってた!じゃあ、犯人は智のストーカーか!」


俺は声を上げた。

どうしたらいいんだ。


「えみかさん、その侑里さんか智さんに連絡取れない?」

「わかった。連絡してみる。」


俺は侑里にラインした。

しばらくして侑里から返事がきた。

侑里はかなり驚いた感じだが、とりあえず

智と現場まで来てくれる事になった。


「これで犯人と藍沢智が話し合ってサワ君を解放してくれるといいんだが。」


店長は言う。


「だけど相手はストーカーだぜ。簡単に解決するかな。」


巳月の言葉で全員が黙る。


「とにかくさ、侑里さんと藍沢智が来るのを待とう。」


麗が空気を和らげた。


◇◇◇◇◇


俺とずっと一緒に暮らすって、コイツ正気か?

目の前の美女は、部屋の中でスマホをいじっている。

コイツはきっと、智ってヤツと俺を人違いしている。

ここで、俺は智じゃないと言いたいが、なんせ簡単に人を拉致れるヤツだ。何をしでかすか、わからない。

少し様子を見た方がいいかもしれん。

だが、コイツと智の関係がわからんと、どういう会話をしていいのかも、わからない。

こまったな。


「さっきいた二人は誰だよ。」


女に問いかけてみる。


「あたしのママと、おじさん。」


ママと、おじさん?


「ママは、あたしの味方だから、あなたの浮気を許さない。おじさんも同じよ。おじさんはママの言う事に絶対だから。

でも、浮気じゃないのよね?智。」


女は俺の目の前に座り、じっと俺を見つめる。

可愛いけど、正直怖い。


「浮気なんかしないって。決まってるじゃないか。」


適当に合わせてみる。


「ふふっ」


女は笑みを浮かべると窓を開け、ベランダに出た。

ちくしょう。この女と智はどういう関係なんだ。


俺のスマホのマナーモードが鳴った。


紋からだ。

智はアイドルの藍沢智。侑里というのは、その恋人の練習生か。

じゃあ、もしかしたら、この美女もアイドル練習生か?

俺はベランダで涼んでいる美女をコッソリ写真を撮って紋にラインで送った。

俺はしばらく紋からの返事を待った。


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