聖女は子がどこから出たのか気になっている




魔力の出し過ぎだろうか?私は少しの間気を失っていたようだ。


痛む頭を抱えながら私は周りを見渡す。


真っ暗だった先ほどとは違い、壁も天井も吹き飛んだおかげで日光が私を照らす。


ジメジメと石と土の匂いばかり嗅いでいた私は、新鮮な空気を肺いっぱいにと取り込む為大きく深呼吸をする。



この場所から移動しないと。



私をここへ閉じ込めた人が来るかもしれないと思った私は立ちあがろうとした。


ふらつく体を手を支えにして立とうと思った時、私のすぐそばに何かがある事に気が付いた。



それは手のひら程の小さなスライムに見えた。



私はその中に何かが見えた気がして、手に取って見てみる事にした。


すると、その中には小さな小さなが入っていて、すやすやと眠っている様だった。




「えええ?!もしかして私の子?!」




驚きすぎた私は勢いよく尻餅をつく。



確かにそろそろ出産だとリュカは言っていたが、私はこの赤ん坊をどこから出した?!


私はその子を落とさない様慎重に服で包んだ後、ちゃんと下着をつけてるか確認をした。



…ちゃんといつもの様に履いていた。



血がついている訳でも、穴がある訳でもなく、普通にいつもの様に履いていた。


私は動揺したが『異世界だもん、こんなこともあるよね』と無理矢理自分を納得させ、子を抱いて歩き出した。


ふらふらする体で私は腕の中に居る子を落とさない様、自分が転けない様に気をつけながら森の中を歩く。



どのぐらい歩いたのだろうか?



私はここまで来れば十分だろうと思い、大きな木の根元に腰を下ろした。


服に包んだ子を見てみるが、すやすやと気持ちよさそうに寝ている。


どちらの子だろうと思い眺めるが、まだよくわからない。



むしろ、私に似てるかすら今はまだわからない。



子が寝たまま小さな手を動かして顔を擦っているのを見て、久しぶりに笑顔になる事ができた。



私はこの子を守らないといけない。



それは当たり前のことだけど…改めて私は思ったのだった。



私が子を見つめていると、少し遠くで葉の擦れる様な音がした。


味方か敵か分からないので私は息を潜める。


体をできるだけ縮こませ、音を立てない様慎重に見る。




そこには人が7人いた。



皆が同じ大きめの外套を着てフードを被っているので、男か女かすらわからない。


私はその怪しい集団が味方だとは思えなかったので、そのまま息を潜めて観察をしていた。



その人達は何かを話し合っているようだったが、その声はよく聞こえない。


何度か会話をした後、一人を除き6人は散り散りに消えていった。


残った一人はそこに佇んでいて、どこかにいく様子はない。



この場所から移動しなきゃいけないと私は思い、ゆっくり立ちあがろうとした。



その時、フードの人が動き出した。


しかも、その人は明らかにまっすぐ私の方へと近づいて来る。



動揺した私は大きな木を背に、その人が通り過ぎるのを待とうとおもった。


その人が通り過ぎようとした時、私は座っていたのでフードの中の顔が見えてしまった。




「ひっ…」




その顔には眼球がなかった。



私はその顔に驚き、小さい声を出してしまった。


軽い気持ちで顔をのぞこうと思った数分前の自分を心の中で恨みつつ、相手に聞こえてない事を願うが…聞こえていた様だ。




「動かないほうが良い。無闇に歩き回れば捕まる。」




そう言ってそのまま歩いて何処かへと行くに私は…声をかけた。


なぜならその声には聞き覚えがあったからだ。




「セレナさん…なんですか?」




私に声をかけられると思っていなかったのか、その後ろ姿からも動揺が見てとれた。




「…。私の名を知ってるのか?あぁ、そうか。私も結局そうなのか」


「よく意味がわかりません。セレナさん、何で私を閉じ込めたんですか?わた…わたしは…」




セレナさんは問いかけてきたにも関わらず、すぐに自分で答えを見つけた様で返事とは言えない返事をしてきた。


私はそれを聞いて意味がわからなかったが、1番聞きたかった事を聞く事にした。


セレナさんは少しの間黙っていたが、私の問いには答えないままに話し始めた。




「あいつ、ヴェル…が、居る。」


「え?どこにですか?」


「ここには居ない。が、そばに居る。」


「ここに居ないのにそばに居る?」


「ヴェルを見つけないといけない、手遅れになる前に」


「それはどういう…」




セレナさんが私にそう言った瞬間、目の前にいたセレナさんが消えた。



瞬きする間の出来事だった。



急いで周囲を見渡すが、結局私はセレナさんを見つける事ができなかった。



呆然とする私を誰かの手が捕える。




「いやっ…!」


「ちょ、待ちなさいよ」



私はその手から逃れようと体を捻らせるが、その人の声を聞いた瞬間逃げるのをやめた。


そこには服や髪が乱れに乱れたリュカが息を切らして立っていた。


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