第35話 『参考人招致』とは一体何なのか?
「では、参考人。前へ」
議長から、指名されて従う。
だが、俺の後ろには各国の教会関係者が、宗派を問わず集まり。奇蹟の会合と言われている。
それに加えて、各国の大統領や随員。
合計をすると、国会議員より多く。合わせると千人近い。
むろん会場の警護などに、各国の軍が出張ってきたために、自衛隊まで出てきた。
そう、異変以降、モンスターが出るため銃器の携帯は必須。
携帯を否定して、何かがあれば賠償がどうこうではすまない。
一部の議員達は焦っていた。
そう、話題作りの為に声高に叫び、制止を振り切って島に近付き、事故を起こした。
だが予想に反して、ドンドン最悪へと進んでいく事態。
それでも、島の移譲について『参考人招致』は進んでいたため、今日の議会となったが、来たのは新興宗教の教祖だけではなく、世界中の宗教関係者大集合。
そして、彼の宗派について認めることを調印した者達。
そう。
知らなかった。それだけ。
―― だが、知らなかったで、許されないものもある。
今回の一件で、動いた金も一億円以上。そう経費は払わねばならない。だがあくまでも呼んだのは、山上直樹という男のみだったはず。
だが、危険があっては困ると、SPが付き、バチカンが絡み、公安が絡み。
話がどこかから漏れ、各国の大統領までやって来る始末。
しかも今、フランスあたりで異常事態についての、先進国会議が開催されていたはずだが、各国の大統領達がこちらの方を優先させた? おかしいだろう?
そう思ったら、今の世界安定に、彼が販売をしている水が必要だという。
それの確保について困り、バチカンから何とか外郭団体扱いではあるが、独立して貰ったのに、それを調印までした後に、横やりを入れるとは何事だ。
とまあ各国がお冠。
そんな事を言いだした奴は誰だということで、リストが回り、対象国への入国が停止されたようだ。
これが意外と大きく、マスコミ各社まで波及する。
強制的に、海外支社や特派員関係まで、いきなり国外退去通告がやって来たようだ。
「では、密室で行われた、島の譲渡についての証言をお願いします」
壇上に立つ。
「諸君。私は
指示通り、多少上から目線で宣言をする。この時には、聖水の沐浴をして、元気はつらつだった直樹は、力が有り余っていた。
言葉と感情の発露それと共に、聖なる波動が噴き出した。
それは光となり、世界中包む。
第一回目。中継を見ていた者達が、数千単位で光を浴びて気を失った。
ああ、聖水服用者は平気だったようだ。
第二回目。ニュースで取り上げられさらに数を増やす。
第三回目。動画サイトやSNSで公開され大騒ぎ。此処で数億人が倒れた。
そんな大騒ぎは当然注目をされ、世界中に知られることになる。
島の隆起に対する異常。そして、一週間で、緑あふれる地になった事。
島の境界を守るものの正体。
これだけ騒いで、議場にいたほとんどが気を失い、質疑に至らず閉会。
そして、聖水の拠点がそこだと知れ、魔の者達は攻撃を仕掛けてくるが、当然入れない。
文字通り聖域となっており、近付くだけで融合をしていた者達が正気に戻り、霊体になった魔のものが消滅をさせられる。
そして搬出される聖水にも、当然近寄ることが出来ない。
そして騒ぎの効果で、売り上げが爆増。
聖なる魔法使いが、地表にはびこってくる。
そうシールドを張られ、取り憑くことが出来ない。
「ええい」
などと苦悩を言っていると、空から雨のように聖水が降ってくる。
『初めの雨』をなぞらえた、浄化運動。
薄められた聖水が、スラムなどに振りまかれた。
それだけで、病気が治る。
そう奇蹟の大盤振る舞い。
むろん裏には、魔のものを駆逐する狙いがある。
そうして盛り上がる世界の片隅で、辞任合戦が始まっていた。
何処を取っても、責任を問われるとやばい。
そう感じた者達は逃げた。
そして不思議なことに、神ノ島の移譲について、どこからも苦情が出ない。
そう文句を言いたい連中は動画を見て浄化され、ついでに、神から私に対して賜った島という暗示を受ける。
ノリノリの精神波によって。
見たらもうだめだ。賛成する声しか出せない。
最強の指導者。彼を見たものは一瞬で洗脳される。
「あれから、何も行ってこないなぁ」
「認められたと言う事で、良いのじゃないでしょうか?」
「そうなのか? じゃあ、小雪からの注文で、イチゴのハウスと、マンゴーとモモだったか? 植えてくるよ」
山の一角を開き、自家農園を造る。
今は贅沢に、週末だけこっちを使う。
普段は大学もあるし、向こうの家。
そもそもこちらは、聖水のプラントという側面が強いしな。
たまに変な奴が湧いてくる。
「この聖水を作っているのはこちらかな?」
「そうですが、何か?」
うさんくさいオッサンが三人ほどやって来た。
「これを飲んで、病気が治ったとか、怪我が治ったという報告が来ている」
そう言って、聖水の瓶を見せてくる。
「で? 何でしょ」
「いや、医薬品として」
「謳っていません。厚労省も確認をしています。水です」
「えっ、厚労省が?」
「ええ。検査をしました。お墨付き。単なる水です」
「そんなものを、この値段で?」
「高いでしょ。要望により値上げしました」
十ミリリットル百円。
「厚労省が、値上げしろと。医薬品が売れなくなるそうで」
そう言うと、帰って行った。
「何だありゃ?」
「国民生活センターか役所ですかね」
「確かに登録も、聖水。内容、水としか書いていません」
「じゃあ捕まえるなら、治ったと感じる購入者のほうか?」
「そんな事、出来るわけがないじゃないですか」
「だよなあ…… 葛野課長も変なことに拘って」
「内緒だが、これの関わりで息子さんが捕まったらしいぞ」
「へぇー。だけど良い迷惑だ」
「だよな……」
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