第31話 世界は勝手に浄化され、偉業がわが手に

 遊び倒している間に、勝手に感謝と立場が降ってくる。


「聖水の販売とその効果により、犯罪の温床であった、スラムなどの浄化がなせたと感謝状が来ております」

 そう言って教えてくれるのは良いが、表情が芳しくない。


「神崎さんどうしたの?」

「これを」

 差し出される書状。

 ラテン語なのか、イタリア語なのかよく分からない。


 スマホを取り出して、カメラで読ませる。

「あー。役職を与えるから、聖水の製法を教えてくれか……」

「その様ですね」

 神崎さんが困っているのだが…… その時、悪い事を考える。


「教えてやるか」

「えっ」

「神殿を造り、それに向かって祈れ。それで良いだろう。教会はそれが出来るかな?」

「危険じゃありませんか?」

「こちらは、使徒なんだ。それに、あの聖水を知ってしまうと、後戻りは出来ないさ」

 そうして、素直に連絡が行ったようだが……


「祭壇を拝めと?」

「その形が、まるでギリシアの神殿のようで……」

「そうか。彼らは使徒。神に直接……」

 そう、彼らは基本、神の使いにお願いをしている。強引に神格として扱うこともある様だが、創造神はヤハウェ。

 ヤハウェは、モーセに啓示された神の名だそうである。


「そうこれは、使徒様からの啓示。決して偶像ではない」

 などと言いながら拝み倒したようだが、緻密な配置とバランスは直樹の絵では読み取れない。

 似たような形の何か。


 だが、彼らは勝手に解釈をする。

「人間では、駄目なようだ」

「そうだな。やはり彼らは特別のようだ」

 などと言って、自身らを納得させる。


 だがそれは、自分たちが特別ではなく、普通の人であることを理解することでもある。


 彼らは表面上おとなしくなった。

 だがその中にも、跳ねっ返りがいる。

「なにが、使徒だ。やっておしまい」

「はっ」


 そうして、教会の一部から仕事人がやって来る。

 裏で、色々なことをする暗部。


 だがこの世界、すっかり変わってしまった。

 彼らの暗器では、誰も殺せない。


 体術も武器も、シールドで保護される人たちには通じない。


 あっさりと捕まえ、芋蔓式に幾人かの教会関係者が、闇の中で消えていくことになった。

「お待ちなさい。私は何も……」

「そうです。ご命令を受け実行いたしました」

 側近だった男は、そこにはもう居なかった。指をさし命令したのはコイツだと断言をする。

 浄化され、従順な教会の僕へと変化をしていた。


「どうなった?」

「なんだか色々あったみたいでして、教会の中での役職から、別団体的な枠になった様ですよ」

「別団体?」

「ええ。教会からはみ出た。扱いは上位団体になるのかなぁ。その認定は教会から発信されたようです」


 そうして気が付けば、偉い宗教団体のトップに俺の名前が書かれていた。


「何で?」

「偉いからでしょう」

 あっけらかんと、告げられた。


 そして大学を卒業する頃には、なぜか教会を建てるという話がやって来る。

 何処へ? まずそれが問題となる。


 日本の山には、所狭しと太陽電池のパネルが貼り付けられている。


「安全なところ。そして住みやすくて良いところは……」

「いつも行っているリゾートは?」

「ああ、海か良いなあ」


そんな事を言っていると、カトリック以外からも、聖水を求める声が上がってきたようだ。


「別団体的の枠になったからかぁ」

「そうですね。それと共に、団体名を決めろと要望が来ているようです。どうあっても、書類からカトリックの名前を消したいようですね」

「そうなのか?」

「ええ、大昔から色々とあったんです」


 そう言えば、十字軍とかあったなあ。


「と、言う事で名前を決めよう」

 自分で調べたが、救うとか世界とか光とかまあ団体が存在する。


「ええっ」

 十六夜と瑠璃が、スマホの画面を見ながら嫌そうな声を上げる。


 多分同じことを考え、検索をしたんだろう。

 小雪は季節限定のおはぎを持っている。春に食べればぼた餅だ。


「面倒だから、そうね。導きは必要でしょ」

「私たちもそうだけど、救済」

「後はたまに光るから、聖光会」

「たまに光る?」

 俺が聞くと、三人共が頷く。

 重要なふれあいの最中、俺は知らなかったが、いきなり光り始めて、何か温かいものが流れ込んでくるらしい。


「それは、最後のあれじゃなく?」

「三分とか五分とか、出続けるなら、そうかもしれない」

 真顔で、瑠璃に言われる。


「流石に、それだと死んでしまう」

 そう言っていると、小雪がまとめてしまう。

「じゃあまあ、導きと救済の聖光会で良いんじゃ無い?」


 とまあ、あっさりと団体名が決まり発信される。

 すると、各団体から認めるという書状と、聖水を売ってくれの嘆願がくる。


 そう、宗教的垣根で、行き届いていなかった所に行き渡る。

 当然、物が足りず、聖水掛け流しプールが使えなくなった。


「ミリリットルを、グラムに変えるか?」

「ヨーグルトじゃないんですから、量は変わりません」

 そう言えば、水の比重は一だったな。


「早急に、泉付きの本殿を造りましょう」

「そうだな、創ろうか」

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