第29話 消えていくもの……
「おお。にいちゃん。わぁしらの女に。何しとんねん。いてこますぞぉ」
関西弁らしいが、巻き舌でよく分からない。
だが……
「付いてこいと言われたから付いてきたんですが。用事が無いようなら失礼します」
そう言って、くるりと向きを変える。
だが、ドアの前にも、怖そうな顔をしたお兄さんが立っている。
「おおっ。そうやなぁ。兄ちゃん学生やろぅ。一本でええわ。持ってないなら、親に電話せえや」
よく分からないから、浄化をしてみる。
だが、変化はないようだ。
どうも、指定されている方々の、末端のようだ。
よう知らんけど。
「一本て、指なくしたら困るんですが」
「誰がそんなもんいるか。ぼけえっ。金や」
「お金? なんで?」
きょとんと、かわいく首をひねる。
「何じゃわれ。なめとんか」
また怒っているようだ。
「すみません。もう少し、話が分かる方、いらっしゃいませんか?」
他意は無い。
話が通じないので、素直にお願いをした。
「なんやとぉ、こら」
さすが、すぐに手が出る。
だが、常時張っているシールドに阻まれ、拳からぐしゃっと音がする。
「うぎゃあぁ。こいつ、なにすんねん。拳がいてもうた」
「大丈夫ですか?」
普通に問いかけたが、彼らは、わさわさと出てくる。
奥にもまだ部屋があったんだ。
「拳がいてもうた」
「なんやと、兄ちゃん素人や言うても、ちょっとおいたがすぎたのう」
そう言って、両手が頭へ伸びてくる。
ふんふん。掴んで……
当然動かない。
頭だったら動いたかもしれないが、掴んでいるのはシールド。
「ぐっ。なんやこいつ」
いきなり腹へ向けて膝。
ごんっ。
「堅っ」
しばらく、好き勝手させてみる。
人が代わりつつ、二時間ほど。
皆さん、拳と膝が逝ってしまったようだ。
「すみません。ここって、何組とか在るんでしょうか?」
薔薇とか百合とか楽しそうだが。
「ああっ? ○○経済研究所じゃ。何が組じゃ」
「○○経済研究所だそうです」
「てめえ、何処に電話……」
そう言いかけた、その時。奥の部屋で電話が鳴る。
りーん。りーん。りーん。
「おう、なんじゃ……」
そう言って勢いよく出たが、奥にいた彼から、ひたすら謝る声が聞こえる。
こっち側の部屋にいる者達も、なんだか息をのむ。
少しして帰って来た彼は、顔が青かった。
「兄さん。すまねえ。これは、些少だが詫びだ」
そう言って、なんかの束が入った風呂敷が差し出される。
「いや、帰って良いならそれで結構」
そう言って断り、ドア向くとドアノブを回して引っ張る。
ドアを引くと壊れた。
電子錠で、四方からかんぬきが下りていたようだ。
「ああ、大丈夫です。お気を付けて」
そう言って見送られた。
その数日後。そこはもぬけの殻となっていた。
繁華街の一室だったのだが。
そしてまた、声がかからなくなる。
「あのとき、俺を引っ張っていった子達。無事だったんだな」
気にしていたが、何事もなかったようだ。
後日噂を聞くと、繁華街でいくつかの店が忽然と消えたらしい。
「物価が上がって、何処も厳しいんだなあ」
ぼそっとそう言うと、小雪が頷く。
「そうなんですよ。サンドイッチが高いから、自分で作ったんです。はい、あーん」
一口俺に食べさせ、残りを自分が食べる。
俺が食っているのが、四分の一?
みるみるうちに、サンドイッチの山が消えていく。
瑠璃がそれを、呆れた目で見ていた。
十六夜が居ないと思ったら、サンドイッチのお代わりを持って来た。
さっき小雪が言った、自分でと言うのは、自分たちでと言う事なのだろうか?
その頃。
「おら、早く乗れ」
「あにきぃ」
「悪いようなことにはならねえ。多分な」
彼らを乗せたボートは、暗闇へと消えていく。
その後、海外のやばいところで、聖水売りのオッサン達が急増する。
「飲んだか。じゃあ飯を食え」
一般にスラムというところ。
そこで暗躍し、聖水と飯を食わせる。
超能力を持った兵を得て、周囲を制圧。占拠していく。
こうして、行政が入っていけなかったところが、潰されていった。
「すげーなシールド。俺達が殴っても通じないわけだ」
「たりめえだ。銃弾が通らないんだからな」
若い男が、首をかしげる。
あの男は一体何者なんです。
「俺らの、上の方と繋がっているお人らしい。きっと、知らん方が良い」
「へい」
そんな事が、起こっていたようだ。
そうして、時は進み夏休みに入って行く。
ああ、試験は詰め込まれた。
先生が、三人に増えたし何とかなったよ。
それに、力により能力アップをしているようだ。
そしてこの時、遊びに行った瀬戸内海のリゾートを気に入ってしまった。
「無人島にコテージ。いいねえ。暑いけど」
「そうですね。日差しがきついです」
俺達が、クラゲを除けながら泳いでいた頃。
「ふっふっふ。滅びなさい」
すっかりノリノリで、図に乗っているペテロこと、モーリッツ=フォルトナー君。
教会の要職につき、ノリノリでスラムを潰していく。
そして教会の人たちも、熱い夏を過ごしていたようだ。
牛耳っていた悪い奴らは潰し、保護をしていた人たちには手を差し出す。
教育をして、手に職を付ける。
そうこの夏。世界中で、教会や使徒は頑張っていた。
「バーベキューも飽きたなあ。サザエ取っちゃ駄目?」
「聞いてきましょう……」
俺達以外は……
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