第9話 美的センスはロックです
チカアの森につき、今度は護衛と共に崖上に行く。
ざっと鉱山を紹介した後に後は黙って帰るだけの予定だ。
一緒に来た護衛などは、相変わらず凄いですね。と点数稼ぎをしてくる。
別にここで俺を持ち上げても鉱山の一つでも貰おうと思っているのか? そうであれば無駄な事だ。
さて俺としては馬車の中で景色を眺めているエリカがセーブクリスタルの事を知っているかの確認だけだ。確認が終わった後は今日の予定はない。
ちらっとエリカを見ると穴の開いたカバンを肩からかけている。
…………町によるか、御者もしているキーファに町によれ。と命令して馬車に揺られる。
町の入り口で止めると、マーケティが走ってくる。せわしない奴だ。
「オージィ伯爵様。何か必要な物があれば買っておきますが」
「…………いづれは裏切る奴が何を」
「!? オージィ様!?」
「……いや、その可能性もあるかもな。と思っただけだ。子供ではあるまい買い物ぐらいはできる。といっても先に帰られても困るな適当に時間をつぶせ」
「はぁ……いえ! ついていきます。メリファもそうだよな」
「はい!」
小面倒な奴だ。
まぁいい、これぐらいの反対意見ならかわいいものか。
「すきにしろ。キーファ達は適当に過ごせ」
俺は馬車から降りるとエリカを呼びつける。
慌てて近くにくるエリカを上から見ると少しおびえた顔になっていく。
「ついてこい」
「は……はいっ」
俺が歩くと、周りの住民が遠巻きに見始める。だれもが領主様だ。や魔物のような心の奴だ。など良い意見もあれば悪い意見もある。
まだそこまでは嫌われてはいないのか。
隣の女はだれだ? 誰だ? と誰がが言えば、娘らしいぞ。という事までずいぶんと噂話が好きな領民だ。
近くの雑貨屋に入ると、中にいた領民が一斉に飛び出す。
流石にこの辺は小さい町だ、王都であれば俺の正体なぞ誰も知らなく自由に街を動けるんだけどな。
「…………店主。邪魔をするぞ」
「オージィ様! こ、こんな小さい店に。な、何かお気にさわるような事を。妻はまだ若く今は妊娠中でして!」
「………………お前の妻はこの時は50を過ぎていたはずだが?」
嘘をつくならもっとましな嘘をついて欲しいものだ。呆れてとがめる気にもならん。年下の俺に這いつくばる姿勢は俺よりも俺の権力が怖いからだろう。
「そ、それはその前妻で」
店主の後ろにある住居のほうから何か大きな音が聞こえた。その音で店主はビクっとなり小さくハハハと笑いだす。
「もっとましな嘘をつけ。制裁はない」
「そ、そうであれば。何でございましょう、色々取り扱っております」
「では。魔力を閉じ込める箱を……いや布を一つ」
俺が欲しい物を注文すると、店主の目がぱちくりする。
「魔力……ですか? 王都にいかないと、このような鉱山地区にそのような……」
「ちっ」
まだ普及する前か。
魔石発掘が盛んになると、魔石を包む特殊な布があったはずだ。仕組みは詳しくないがこの町にも入ってきていた。
「では。この娘にあうカバンを一つ」
「「「「え!」」」」
俺以外の全員が驚いた声を出す。
「何か問題があるのか? いつまでも穴の開いたカバンを使われていては伯爵の地位も軽くみられるからな」
「そ、そうですか。わかりました。いえ、お、お嬢様! こちらへ精一杯良い品を」
「マーケティ、メイファ。ここは任せた。金ならある、伯爵の娘に相応しい物を俺は先に馬車に戻る」
3人を残してさっさと店を出る。
誰も寄って来ない広々とした道を馬車まで歩くと、途中で一人の男が前に割り込んできた。
ちっ! 思わず腰に手をやるも俺は丸腰だ。
もっとも剣なんて何十年もふっていない。ここは落ち着いた声で話しかけるべきだろう。
前回の事もある剣を…………いや剣は二度と……どうするべきか。
その前にだ。
「要件を言え」
「はっ! オージィ伯爵様とお見受けします!」
俺と似た者でもいるのか? いないだろ? だから用件を言え。
「何用だ」
「おれの名はコール。鉱山夫であり、今回の作戦の一人です!」
何の話だ? 作戦?
「いいから用件をだな」
「オージィ伯爵様のおかけで妹達の薬を買う事が――」
「だから何の用事だ!!」
「す、すみません! 魔物。魔物が増え鉱山夫だけでは対処が出来ません!」
「先にそう伝えろ」
少し考える。
確か、鉱山に魔物が出た。それは覚えている、なんせ最近3回も同じような命令を下したからだ。
13年前の時は、魔物と鉱山夫をまとめて爆破したな。その報告を聞いた
確か5年ぐらい前にも……いや数年先にも同じ事が起きて同じように犯罪歴のある奴らを一緒に埋めた。
あの時は領地はく奪まで迫って来たな、いっその事俺から取り上げてしまえばいい者を。
だから、今回は金を渡して討伐意欲を上げたが……要は金のつり上げか。やはり埋めたほうが早かったか。
「金が足りないのか?」
「っ!? ち、違います! 戦力です!! 知恵を、オージィ伯爵様に解決の知恵を」
ふむ。
騒ぎを聞きつけた俺の護衛達が走ってくる。若者は直ぐに無理やり立ち上がらせ少し遠くに運ばれた。
その代表であるキーファが俺に小さく耳打ちする。
「オージィ伯爵様。どうがあの若い男を消すような事は……」
「俺を何だと思っている」
年輩の冒険者は何も言わなかったが、背後にいた別の護衛が口をパクパクと3回ほど開く。
ふ、悪魔か…………殺すか? いや、それぐらいで殺す事もないか。
「キーファ。鉱山区の魔物の状況は知っているのか?」
「はい。一応は……」
「倒せ」
短く命令すると、頷きも否定もしない。
「…………無理なのか?」
「へえ。こちらの戦力を考えましても、昨夜命令を受け爆薬を使い地下に一度フタをしましたが。もって20日ほどでしょう、その間の鉱山の発掘はストップしますし、近々相談の案を出そうかと」
やはり無能達と一緒に埋めて……いやまて。
「爆薬?」
「へえ。爆薬でも何でも使っていい。と、命令を受けたので」
俺がそんな事言ったか? …………言ったな。
「再びフタをするには火薬は」
「へえ。見事に足りません」
「ちっ! …………少し時間を貰う安心しろ、これで終わるような俺ではない」
馬車まで戻り一人考える。
爆薬はもうない、魔物の1つや2つ斬り倒せばいい。と考えるか無理だな。
「ただいま戻りましたっ!」
考えがまとまる前にエリカが返ってきた。肩からは鉱山夫が使う大きなカバンを背負っている。そこまではまだいい……ひどく貧乏に見えるが本人がそれでいい。と言うのを俺は横から口には出さない。だが……。
「…………メリファ!」
「は、はい!」
「あのモヨウはなんだ?」
エリカが肩から下げているカバンにはドクロのマークがあるのだ。
「で、ですよね。その毒薬を運ぶカバンでして。エリカお嬢様が大変お気に召しまして……」
「オージィお義父様! この見事に刺しゅうされたドクロかっこいいですよね! 目の部部分は自分の好きなのを刺しゅうできオリジナルティーを作れるんですよ!」
すごくうれしそうだな。
メイファが小さい声で「今からでも取り換えてきましょうか?」と聞いてくる。
「…………いやいい。キーファとマーケティに屋敷に帰る。と連絡しておけ」
一気に疲れたきがする。
屋敷まで俺は一休みする事にした。
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